相対湿度を測ってみた - K型熱電対とPICで作る乾湿球湿度計
熱電対はふつうの温度計と違って基本的には“温度差計”です。熱電対で温度を測ろうとするとここがいろいろとネックになったりするのですが、もし温度差を測るのが目的(重要)ならこんなに心強いものはありません。
温度差を測る典型的な応用として今回は乾湿計(乾湿球湿度計)をとりあげます。
乾湿計に使う温度計は不確かさがちいさいことももちろん必要ですが、同じ温度でぴったり同じ測定値になる温度計を二つ用意しなければなりません。これがなかなか難しいです。
今回は室温を正確に測れる温度計__これは(白金)測温抵抗体を使って作りました__と温度差を正確に測れる温度計__これは熱電対で実現できます__で同じ特性の温度計を2つ用意するという関門を乗り越えます。
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湿球を作ります。
2枚に分けたティッシュを短冊状に切って熱電対の熱接点に巻きつけます。
下の方、写真が途中で切れているように見えますが下には何もありません。
私の場合冷接点は作りなおしてコンパクトにしてあるのでそっちを湿球にした方がいいのですが、あんまり一般的ではないと思うのでふつうに熱接点の方を湿球にします。
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乾湿計で湿度を測るというと小学生の夏休みの宿題みたいですが、じつはけっこう精度が高いものだそうです。通風式乾湿計だと注意深く扱えば±1%くらいの精度があるのだそうです。
このことは「気象庁 - 気象観測の手引」に書いてありました。これから書くこともこれを参考にしています。
相対湿度を求めるためには乾球と湿球の温度と気圧が必要です。測ったときは気圧が必要なことに気づかず(というか、知らず)測っていません。
熱電対で乾湿球の温度差は測れるのですが乾球(あるいは湿球)の温度そのものは測れません。そこで別に測温抵抗体を使った温度計で室温を測っています。
手順はこうです。
まず室温(乾球の温度)と熱電対の起電力を求めます。
「熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換」にある式を微分して温度と温度係数の関係を求めます。
これに室温を代入して求めた温度係数で熱電対の出力電圧を割って乾湿球の温度差を求めます。
乾湿球の温度差は1℃とか2℃くらいのものだろうと思ってこうしたのですが、実際に測ったらもっとずっと大きかったです。ここのやり方はもう少し工夫した方がよさそうです。
乾球に乾湿球の温度差を足せば湿球の温度が求まります。
気圧は東京管区気象台のデータを使います。
「気象庁 - 気象観測の手引」にある表や計算式を使って相対湿度を求めます。
測定結果を見ながらの方がわかりやすいと思います。
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1. まず乾湿球の温度差がゼロになるのを待ちます。15分くらいかかっています。
2. 次に室温にならしておいた水をスポイト(実際はシリンジ)で熱接点のティッシュに含ませます。
はじめからティッシュに水を含ませてそのまま待ってもいいと思います。今回ははじめてなので順を追ってやっています。
3. 温度差が一定になるまで待ちます(開始後20分くらいのところ)
4. さらにうちわで扇ぎながら温度差が一定になるのを待ちます。このポイントで温度差を計算します。
3.と4.を繰り返します。乾湿球の温度差は9.0℃、9.1℃だったのでここでは9.0℃で以下の計算をします。またこのときの室温(=乾球温度)は25.4℃でした。
相対湿度 = 蒸気圧 / 飽和蒸気圧
ですのでまず25.4度の飽和蒸気圧を表から読み取ります。32.43hPaでした。
(実際に湿度計を作るときはここをどうするかが問題です)
次に測定時の蒸気圧なんですが「気象庁 - 気象観測の手引」にスプルングの式というのがあるのでこれを使います。
このとき乾湿球の温度差以外に気圧と(乾球温度ではなく)湿球温度の飽和蒸気圧が必要です。
乾湿球の温度差9.0℃、気圧1012hPa、湿球温度16.4℃の飽和蒸気圧18.64hPaから蒸気圧12.61hPaが求まります。
相対湿度
12.61 / 32.43 = 39%
が求まりました。
このころ東京管区気象台での相対湿度は40%台から30%台に下降していましたのでまあまあ妥当な値が求まったようです。
「湿度の計算方法 - K型熱電対とPICで作る乾湿球湿度計 」
「I2C温湿度センサーAM2321の湿度をPIC/熱電対乾湿球湿度計とくらべてみた」
へ続く
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「熱電対起電力を直接測定できる22bit(20.6bit)ADコンバータMCP3553」
「熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換」 (-20℃~120℃編)
じつはこの熱電対の測定値はちょっとあやしいです。
「熱電対の規準起電力はあてになるか?」
測定装置概要
「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)」
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