湿度の計算方法 - K型熱電対とPICで作る乾湿球湿度計
前記事で熱電対と(白金)測温抵抗体を使って湿度が測れそうな目処がついたわけですが、一点問題があります。
(相対)湿度を求めるためには乾球温度と湿球温度での飽和水蒸気圧が必要です。前記事では「気象庁 - 気象観測の手引」にある表から飽和水蒸気圧を求めたのですがPICで作ろうとすると表をプログラムの中に持つというのは手間ですしメモリももったいなくてやりたくありません。
計算式があればいいのに、と思ってググったら簡単に見つかりました。
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必要とする式は
「中川清隆@立正大学地球環境科学部環境システム学科 - 飽和水蒸気圧と水蒸気量の計算」
にありました。“Tetensの式”というものがあるそうです。説明書きを読むと高温での計算結果が実際と違ってくるようですが、そんなに高い温度の飽和水蒸気圧が必要があるわけではないので試しに計算して「気象庁 - 気象観測の手引」や理科年表の値と比較してみます。
温度/℃ | 計算値 /hPa |
「気象庁 - 気象観測の手引」 /hPa |
理科年表 /kPa |
差/hPa |
0.0 | 6.11 | 6.11 | 0.00 | |
4.85 | 8.63 | 0.8632 | 0.00 | |
10.0 | 12.28 | 12.27 | 0.01 | |
14.85 | 16.89 | 1.6886 | 0.00 | |
20.0 | 23.39 | 23.27 | 0.02 | |
24.85 | 31.40 | 3.1403 | 0.00 | |
30.0 | 42.44 | 42.43 | 0.01 | |
34.85 | 55.78 | 5.5800 | -0.02 | |
39.9 | 73.38 | 73.38 | 0.00 |
※ 理科年表の値は t68/Kに対するものと記されています。
25℃近辺で温度が0.1℃変化すると飽和蒸気圧は0.2hPaくらい変わります。それを考えるともう完全に一致していると受け取ってよさそうです。
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ここまでくると(相対)湿度の計算ができます。
まず室温T(=乾球温度、測温抵抗体で測定)と乾湿球温度差ΔT(熱電対で測定)と気圧P(室温程度であれば測定値が信頼できるI2C/SPI大気圧センサーLPS331APで測定)を測ります。
乾球温度から飽和蒸気圧を求めます。
E = 6.11*10^(7.5*T/(T+237.3)) Tetensの式(「飽和水蒸気圧と水蒸気量の計算」
より)
湿球温度から飽和蒸気圧を求めます。
E' = 6.11*10^(7.5*(T-ΔT)/((T-ΔT)+237.3)) Tetensの式(「飽和水蒸気圧と水蒸気量の計算」より)
蒸気圧を求めます
e=E' - A /755 * P * ( ΔT ) スプルングの式(「気象庁 - 気象観測の手引」より)
A=0.5 ( 湿球が氷結しない場合)
(相対)湿度を求めます。
Hr = e / E
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ついでに書いておくと絶対湿度は乾球温度と蒸気圧から求めることができ
Ha = 217*e/(T+273.15) (g m-3 ) (「飽和水蒸気圧と水蒸気量の計算」より
)
となります。
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