オペアンプのバイアス電流の測り方 - バイポーラLM324編
オペアンプを使うときはデータシートを見ながら目的によって使い分けます。入力抵抗/帰還抵抗が高くなるときはバイアス電流の大きさが気になります。
バイアス電流ももちろんデータシートに書いてあるわけですが、実際に測定してデータシートの値と比べてみました。
今回はバイポーラ編です。次はJFET編を予定しています。
さらにその次はCMOS編になるわけですがこれはまだ測定方法の目処がついていません。
==> 「CMOSオペアンプNJU7034Dのバイアス電流を測ってみた」
実験風景
電圧を測っているだけなんですが.... (^^;;
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測定方法はいたって簡単です。マイナス入力側のバイアス電流を測る例です。
バイアス電流にR1の抵抗値を掛けたもの(+オフセット電圧)が出力電圧になりますので出力電圧を測って(オフセット電圧を引き)それをR1の抵抗値で割ればバイアス電流が求まります。
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これだけだと簡単すぎて(?)おもしろくないので一工夫してみます。
(この場合ダイオードの極性に注意が必要です。バイアス電流の向きはオペアンプ内部の回路構成に依存します)
抵抗の代わりにダイオードを入れます。
なぜこうするかと言うとダイオードは順方向電圧の変化は(おおむね)電流の対数に比例します。つまり電流が1/10になったからと言って電圧も1/10になるわけではありません。例えば電流が1/2になったら電圧が30mV下がるというような変化の仕方をします。
とすれば微小電流を測りやすくなるのではないかという考えです。
そのためにはダイオードの特性(飽和電流と理想係数)を事前に調べておきます。そうすると
I = Io * ( exp(q*V/(n*k*T)) - 1 )
の式を使えば順方向電圧(上の回路だったらオペアンプの出力電圧)から電流(つまりバイアス電流)を求めることができます。
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さっそくやってみました。
AとBの部分はダイオードの特性を調べているところです。詳細は「pn接合順方向電圧(VBE)の理想係数や温度特性の測定装置」にあります。
途中にOというのがはさまっていますがこれはオフセット電圧を測っているところです。帰還抵抗(あるいはダイオード)をショートして出力電圧を測ります。
飽和電流 3.13nA
理想係数 1.87
が得られました。オフセット電圧は0.43mVでした。
ダイオードが入っているときの出力電圧は47.9mVです。上の式と飽和電流、理想係数から電流を求めると6.1nAとなりました。
データシートではオフセット電圧 2mV(Typ.)、バイアス電流45nAとなっていますから今回の測定対象はなかなか優秀です。
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とこで上の結果はどのくらい信用できるのかよくわかりません。試しにダイオードの代わりに2MΩ(実際は2.03MΩ)の抵抗を入れて出力電圧を測ってみたら12.7mVでした。これからバイアス電流を計算すると6.3nAでした。
どちらが正しい値(に近い)かというとたぶん抵抗の方でしょう。pn接合の順方向電圧は電流が多少変化してもそんなに変化しません。逆に順方向電圧のちょっとした違いは大きな電流の相違になりますから。
ちなみに6.3nAが正しいとし、このデータを追加して飽和電流と理想係数を求め直してみたところ
飽和電流 3.61nA
理想係数 1.89
でした。
次はさらに小さい電流(=JFET入力オペアンプのバイアス電流)の測定を行ってみたいと思います。今回より二桁以上小さい電流(数pA~数十pA)の測定になります。
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測定装置(?)の構成
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