ADコンバータと定電流源の内部抵抗 - サーミスタ温度計の精度・誤差
サーミスタで温度を測るときはサーミスタに電流を流して電圧降下を測ることになります。
電圧はADコンバータを使って測っているのでその内部抵抗が測定のときの誤差要因になります。
同様に定電流源を使うとするとその等価並列抵抗もまた誤差要因になります。
========
ADコンバータの場合の内部抵抗はMCP3425で(GAIN=1の場合)2.25MΩ、MCP3553で2.4MΩとあまり高くありません。サーミスタの抵抗値は25℃で10kΩですから0.5%くらいの誤差がでるはずです。
サーミスタの抵抗値は1℃で-4%くらい変化しますから25℃でも0.1℃強の誤差がでることになります。となると0℃あるいはそれ以下の測定では誤差がかなり大きくなりそうです。
これは定電流源の等価並列抵抗でもまったく同じです。定電流源の等価並列抵抗とADコンバータの内部抵抗は並列になっているので計算するときはまずこの二つの抵抗の並列抵抗Rを計算しておいてそれを使えばいいことになります。
R=2.25MΩ(MCP3425を使って定電流源の等価並列抵抗は無限大の場合)、R=1MΩ(定電流源の等価並列抵抗があまり大きくなくADコンバータとの並列抵抗が1MΩになったと仮定した場合)でどのくらいの誤差になるか計算してみました。
こうやって見ると校正なしで使う場合でも室温以下の温度ではADコンバータや定電流源の内部抵抗の影響を無視することはできなさそうです。
-------
私の場合定電流源としてバイラテラル回路を使っています。これは差動増幅器部分のバランスをきちんととると等価並列抵抗を高くすることができます(「定電流(バイラテラル)回路の内部抵抗を測ってみた」参照、定電流源の等価並列抵抗が負性抵抗であっても計算の仕方は同じです)
そこで抵抗値で選別した抵抗を使いできるだけ等価並列抵抗が高くなるようにしているのですが、そうすると差動増幅器用の抵抗の温度係数に不揃いがあると環境の温度によって等価並列抵抗が大きく変化するかもしれません。
ひょっとしたらサーミスタと並列に(温度係数の小さい)精密抵抗を入れ、その分補正して抵抗値を求めるというやり方にしたほうが安定した結果が得られるのではないかとちょっと気になってきました。
--------
関連
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
サーミスタについて
「サーミスタで温度を測る - 温度と抵抗値の相互変換 - B定数について」
「サーミスタによる温度測定の精度 - 2 - B定数の温度特性」
「サーミスタで正確な温度を求める方法 - 抵抗値-温度変換計算の精度と誤差」
「サーミスタ温度測定の精度と誤差 - 熱放散定数と自己加熱」
「サーミスタ温度測定の精度と誤差 - 製品のばらつきによる不確かさ」
「B定数の近似式の作り方 - サーミスタ抵抗値温度変換計算の精度・誤差」
「サーミスタの抵抗値とB定数を実測する(25℃編)」
「サーミスタの抵抗値とB定数の実測値(55℃編)」
「計測の腕が試される? サーミスタの抵抗とB定数の測定」
「PICで作るお手軽サーミスタ温度計 (2) - ソース付き」
「チップ(表面実装)サーミスタのハンダ付けのときの温度を測ってみた」
(白金)測温抵抗体について
「(白金)測温抵抗体(白金薄膜抵抗)の使い方 - 基礎編というか入門編というか....」
温度センサについて
「PICで作る温度計のセンサー比較(I2C/SPI温度センサ、サーミスタ、熱電対、白金測温抵抗体、pn接合など)」
「温度センサ(サーミスタ・熱電対・(白金)測温抵抗体)の誤差」
“温度”について
「正確な温度を求めて (1)」
« B定数の近似式の作り方 - サーミスタ抵抗値温度変換計算の精度・誤差 | トップページ | はんだの融点(共晶点)で熱電対を校正できるか? - 1 »
「趣味の実験」カテゴリの記事
- 100Ω抵抗器の端子間で発生した火花放電(沿面放電)(2018.07.18)
- Amazonで買った「400000V高電圧発生モジュール」の出力極性(2018.07.15)
- 高電圧モジュールの放電開始電圧 - 針状電極間の放電(2018.07.11)
- 高電圧モジュールの放電開始電圧 - 円筒電極と針状電極(2018.07.09)
- 放電開始電圧をパッシェンの法則から知る(2018.07.07)
この記事へのコメントは終了しました。
« B定数の近似式の作り方 - サーミスタ抵抗値温度変換計算の精度・誤差 | トップページ | はんだの融点(共晶点)で熱電対を校正できるか? - 1 »
コメント