K型熱電対 ステンレス管タイプ(秋月電子通商)による温度測定
K型熱電対と(白金)測温抵抗体で温度を測り比べてみました。測温抵抗体(Pt100)は手元にある温度センサーの中でもっとも確度の高い(不確かさの小さい)と思われる1/3 DINのタイプです。測温抵抗体を基準にK型熱電対の確度をチェックするという意味合いになります。
タイトルにわざわざ“K型熱電対 ステンレス管タイプ(秋月電子通商)”と書いているのは「“K型熱電対 ステンレス管タイプ”(秋月電子通商)に関するディベート」の続きだからです。
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実験方法は次のとおりです。
1. 氷点にある断熱容器(魔法瓶)に熱電対の冷接点を入れます。
2. お湯の入った(断熱していない)容器に熱電対の熱接点とPt100を入れます。
3. お湯が冷めたら、容器の水を氷水と入れ替えます。
補償接点があるとすれば(実際あるわけですが)室温の状態にあり冷接点と補償接点は常に25℃程度の温度差があることになります。
冷接点=氷点------補償接点=室温--------熱接点(3℃~40℃)
という関係になっています。
Pt100は抵抗を測り「(白金)測温抵抗体(白金薄膜抵抗)の使い方 - 基礎編というか入門編というか....」にある計算式で温度に変換します。氷点での校正を行っており今回測定した温度範囲では誤差は±0.1℃以下になっていると思います。
熱電対の方は規準起電力表にしたがって熱起電力を温度に変換します。具体的には「熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換」にある式を用います。
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時系列的な実験結果を示します。
この実験結果でいちばん不思議なのは実験したほとんど全温度範囲に渡って熱電対の方が常に1.5℃くらい低い温度を示していることです。
Pt100は0℃に近づくほど測定温度の誤差は小さくなります。熱電対は冷接点を氷点においていますのでこれもまた0℃に近づくほど誤差は小さくなるはずです。つまり0℃に近づけば近づくほど熱電対とPt100の測定値は同じになっていくはずですがそれがありません。
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Pt100に対する熱電対の温度のグラフも作ってみました。
近似式を見れば熱電対の方が平均的に1.3℃ほど低い温度を示していることがわかります。
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私の持っている熱電対の知識からするとこの現象を説明できる方法は(氷点が正しく実現できていないというのを除くと)一つしかありません。
補償導線が使われており、冷接点と補償接点に温度差があるから。
温度差での熱起電力の差が温度差となって現れている。
じつはこの解釈には私は否定的でした。だから4,5日前にやったこの実験をどう解釈すればいいかわからず今日まで放っていました。
この実験を行ったとき気温は25℃程度でした。理科年表でこの温度帯のクロメル・アルメルと銅・コンスタンタンの起電力を調べるとほとんど差がありません。温度に換算すると0.2℃~0.3℃でしょうか。
今日メーカーの資料を見ていたらもっと差があることがわかりました。クロメル・アルメルの補償導線に使われる銅コンスタンタンはVXタイプと言われるものです。
「株式会社福電 - 熱電対用補償導線説明資料」にVXタイプの補償導線を使ったときの補償接点温度に対する誤差のグラフがあります(図.K熱電対用補償導線誤差温度特性)
これによれば補償接点が25℃のときの補償導線を使ったときの誤差はだいたい1.5℃~2.5℃になることがわかります。つまり上の実験結果と一致します。
さんざんお騒がせしましたが以上のことから“秋月電子通商のK型熱電対ステンレス管タイプ”はVXタイプの補償導線を使ったK型熱電対”と判断して間違いなさそうです。
なお私が“主張”していたT型だとすると水温が0℃に近づけば近づくほど誤差が小さくなるはずで上の実験結果とは矛盾することになります。
また氷点が正しく作られていなかったということはないでしょう。上の実験結果を説明するためには氷水が1.5℃だったということになりこれはさすがありえないと思います。氷水は完全に平衡状態に達してから実験しておりこの実験をしているあいだ水温の変化は0.1℃もない状態でした。
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関連
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「PICで作る温度計のセンサー比較」
「正確な温度を求めて (1)」
「氷点 - 摂氏0度の作り方」
「じつはT型のような気がする秋月のK型熱電対」 <== 事実誤認記事
「熱電対素線(タイプK、クロメル=アルメル)をハンダ付けしてみた」 <== 事実誤認記事
「クロメルのハンダ付けはやっぱり難しそう 」
「“K型熱電対 ステンレス管タイプ”(秋月電子通商)に関するディベート」
「あんまり違いがないK型熱電対とT型熱電対の熱起電力」
「熱電対起電力を直接測定できる22bit(20.6bit)ADコンバータMCP3553」
「「PICとMCP3425で作るK熱電対温度計 - やっぱり計装アンプLT1167を使う」」
「PICとMCP3425で作るK熱電対温度計 - OPA277PAでプリアンプを作る」
「熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換 (250℃~1300℃編)」
「熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換」 (-20℃~120℃編)
参考
「学習院 - 仲山英之・石井菊次郎 - 2-1 温度測定」
「岩手大学農学部 岡田益己 - 温度の正しい測り方(3)熱電対の作り方・使い方」
「アナログ・デバイセズ - 熱電対温度計測に関する不明瞭な部分の理解」
「株式会社東京熱学 - 2-3 熱電対の許容差」
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コメント
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セッピーナさん、
補償導線と熱電対のつなぎ目が見当たらないのではなかったですか?
つなぎ目のところの温度を変えると、温度の読みが変わるはずだから、
つなぎ目がどこにあるか調べることができる??
投稿: kmnk | 2015年6月18日 (木) 23時34分
秋月のFAQの写真を見ていただくとわかるのですが補償接点はちょっと手を出せないところにあります。
この記事は補償接点の温度が冷接点と25℃違う状態での実験になっています。
補償接点と冷接点の温度差がなければとうぜんまとも(?)な結果が出ます。湿度のがそうです。
投稿: セッピーナ | 2015年6月19日 (金) 01時02分
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