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2015年6月 8日 (月)

pn接合(VBE)の理想係数と飽和電流の簡単な求め方

これまで理想係数を求めるのにExcelのソルバーを使ってやっていました。できるだけ正確に、という趣旨なんですが面倒なので簡単な求め方を書いておきます。

結論を先に書くと

まず電流 I1、I2でpn接合の順方向電圧を測ります。これを V1、V2とします。
そのときの気温をT(℃)とすると理想係数は次の式で求まります。

  理想係数 = 11600 / ( T + 273.15 ) * ( V2 - V1 ) /  ln(I2/I1)
  飽和電流 = I2 / exp ( V2 / 理想係数 *11600 / (T + 273.15 ) )

ここで理想係数の計算は電流は比だけが問題ですからAでもmAでもμAでもなんでもいいですがいうまでもなく I2 >> I1 の方がいいです。
飽和電流の方は計算に使ったI2と同じ単位になります。

計算例

  11600 / ( 30 + 273.15 ) * (0.6042 - 0.3431) / ln(0.90324/0.00452) = 1.9

この例は「pn接合順方向電圧(VBE)の理想係数や温度特性の測定装置」の実験結果によるものでExcelのソルバーで求めた値と同じ結果です。
ただしこの実験は実験条件や測定方法にあやしいところがあります。上の数値はあくまで計算のやり方を示すものであって、出てきた数値は1N4148の理想係数の実測結果、とは受け取らないでください。近いうち温度もコントロールした上でちゃんとした実験します。

------

気温25℃だったら

  理想係数 = 38.9 * ( V2 - V1 ) /  ln(I2/I1)
  飽和電流 = I2 / exp ( V2 / 理想係数 * 38.9 ) )

以下上の式の根拠(?)を書きます。

========

まず「pn接合の理想係数を測る」の

  I = Io * ( exp(q*V/(n*k*T)) - 1 )

から始めます。Io:飽和電流はとても小さい値(nAとかそれ以下)なので

   ( exp(q*V/(n*k*T)) - 1 )

はとても大きい値です。ですから“-1”はあってもなくても関係ないでしょう。

  I = Io * exp(q*V/(n*k*T))

対数をとります。

  ln(I) = ln(Io) + (q*V/(n*k*T))

これをln(I)で微分します。

  1 = q/(n*k*T) * dV/dln(I)

ここから

  n = q/(k*T) * dV/dln(I)
  n = q/(k*T) * dV/Δln(I)
  n = q/(k*T) * ΔV/(ln(I+ΔI)-ln(I))
  n = q/(k*T) * ΔV/(ln((I+ΔI)/I))

ということでq、kに具体的な数値を代入すると最初の式が得られます。

飽和電流は

  I = Io * exp(q*V/(n*k*T))

から

  Io = I / exp(q*V/(n*k*T))

となります。

計算例を示すと(Io = I / exp(V /n * (q/k) / T))  として)

  0.90324 / exp ( 0.6042 / 1.9 *11600 / (30 + 273.15 ) ) = 4.7(nA)

となりExcelのソルバーで求めた値とはちょっとだけ違います。
(ただこれが1S4148の飽和電流の実測結果というわけではないのは理想係数と同じです)
Test2


Excelでグラフを書いて“対数近似”で近似曲線を作り“グラフに数式を表示する”をチェックすると上のように表示されます。

y = 0.0491ln(x) + 0.9484 となっていますが、0.0491ln(x)ということは0.0491は dy/dln(x)です。ですから

    11600 / ( 30 + 273.15 ) * 0.0491 = 1.9

とすれば簡単ですし、測定ポイントが多い場合はより正確な(はずの)値が求まります。


--------

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