サーミスタ/測温抵抗体の自己発熱(熱放散係数)の測り方
サーミスタや白金薄膜抵抗の熱放散係数を測るときは電流を変化させて温度の変化を測るというのがふつう__というか定義__だと思いますが、計算がめんどうです。そこで考えたのが電流を流れ始めた瞬間の温度変化を見るという方法です。
過渡現象的な変化になりますので正確な値を求めることはなかなか難しいとは思いますが自己加熱の状況が目に見えるので説得力はあります。
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最初はこんな方法にしました。
電源が電圧源なら問題ないのですが使っているのが定電流源なので問題があります。電流源の出力をオープンにするのは電圧源の出力をショートするのと同じようなものですのであんまりやりたくありません。実際やってサーミスタの端子電圧を測ってみるとオペアンプが飽和状態から復帰するためかちょっとヘンな動きをします。
そこでこんな方法にしました。
これだったら常に電流が流れているので問題ないでしょう。今回の実験結果はこの回路を使っています。計算がちょっとめんどうになります。
でもよく考えたらこれでよかったです。
定電流回路は理屈はわかっていてもふだん使っていないのでときどきヘンな(ムダな?)ことをしてしまいます。
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「目で見るサーミスタの自己発熱 - 熱放散係数を求める」はちょっと結果がプアだったので今回は1秒間に約5回のインターバルで1分間ほど測っています。
まず電流を流した定常状態での測定を行いいったん電流を切って再度流したときの変化を見ます。
実験結果 その1
無風の空気中において測ったラジアルリード型のサーミスタです。
88μWの消費電力に対し0.05℃の上昇です。熱放散係数は1.8mW/Kとなります。
スペックは1.5mW/Kだったと思いますのでメーカーのテスト条件に近い条件になっていると思います。
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実験結果 その2
こちらはSMDのものを基板にハンダ付けした上で測定しています。
(「チップ(表面実装)サーミスタのハンダ付けのときの温度を測ってみた」にある写真の状態です)
こちらも88μWの加熱ですが温度上昇は0.015℃くらいしかありません。熱放散係数は約6mW/Kととても大きいです。小さいチップに適正量以上のハンダでハンダ付けしてしまいましたから熱放散係数が大きくなるのはわかるのですが、スペック上は1mW/Kです。こういうのはメーカーはどうやってテストしてるんでしょう?
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自己加熱は消費電力を100μW以下にしておけば実用上は気にならないというところでしょうか。実際はもっと熱拡散が大きい状態で使いますからそんなに気にすることはないでしょうが数百μWの消費電力になるとちょっとまずいことになりそうです。
定電流源を使う場合は抵抗値が大きくなる低い温度での測定に注意が必要です。
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