チップ(表面実装)サーミスタのハンダ付けのときの温度を測ってみた
サーミスタはラジアルリードのタイプでもけっこう小さなものがあるのになぜわざわざSMDのを使うかと言うと簡単に(そして安価に)入手できるもので温度に対する抵抗値(の典型値)がわかっているものがこれしか見当たらなかったからです。
赤と黒のリード線は外形が0.8mmの細いものですがそれとくらべても小さいです。
これは「サーミスタによる温度測定の精度 - 2 - B定数の温度特性」にあるNCP18XH103F03RBで20個200円で秋月に売っていました。1608サイズで老眼の身にはつらいものがあります。10kΩ@25℃(±1%)、B=3380K(25℃~55℃、±1%)のものです。抵抗と同じで“F”は±1%を意味するようです。
ハンダゴテ禁止のような気もしますがそれしかハンダ付けの手段がありません。せっかくだからハンダ付けするときサーミスタの抵抗値も測ってみました。
なお上の写真で両側にある“輪っか”は熱収縮性チューブを三層くらいにしたものです。アルミパイプに入れたとき電極がパイプと接触しないようにするためのスペーサです。
(酸化マグネシウムとか窒化アルミニウムがないので)シリコングリスを充填したアルミパイプに入れバスボンドQで防水処理して使います。
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じつはハンダ付けするときは“測定装置”がサーミスタの抵抗値を測る設定になっておらず、ハンダ付けした後しばらく経ってからハンダが溶けるまでハンダゴテを当てそのときの抵抗値変化を測っています。
二回(両側)やってみるつもりだったのですが片側は時間切れで最後までデータがとれませんでした。
青い線が抵抗値です。気温が26℃くらいだったらのハンダ付け前の抵抗値は10kΩをちょっと切るくらいですがハンダ付けしたら1kΩ以下まで下がりました。
ハンダゴテを当てていたのは1秒もないのですが抵抗値の下降は2秒くらい続いています。表面の熱が徐々に内部に伝わっていっているんでしょう。こういう場所によって温度がぜんぜん違う状態でサーミスタの抵抗値から温度を求めて意味があるのかよくわかりませんが求めてみました。
温度は「サーミスタによる温度測定の精度 - 2 - B定数の温度特性」にあるB定数の補正を行っています。B定数を温度の一次式で近似するのですが60℃以下ではなく60℃以上でよく一致するような係数を使っています。
具体的には
温度 = 1 / ( LN(抵抗値/基準抵抗値) / (温度*1.2825 + 3325.2) + 1/(25.00+273.15) ) - 273.15
というのを使っています。ここで問題になるのは温度を求める計算に温度が必要なことです。これはまず
温度 = 1 / ( LN(抵抗値/基準抵抗値) / 3380 + 1/(25.00+273.15) ) - 273.15
で温度を求めそれを上の式の右辺で使うという方法をとりました。要するに逐次近似です。これを二回繰り返しています。二回やっても100℃越えで0.1℃くらいの差にしかならなかったので実用的には一回で十分でしょう。
上のグラフにこうやって計算した温度を追加してみました。赤い線の方です。
これを見ると100℃を少し超えたくらいなのでたいしたことはないのですがハンダが溶けたわけですから局所的には200℃を超えているはずです。
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