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2015年7月 7日 (火)

氷点を電気的モデルで考えてみた - 摂氏0度の作り方と使い方

氷点のモデルを電気回路で作ってみました。温度=>電圧、熱抵抗=>電気抵抗、熱量=>電荷、熱容量=>静電容量、熱源=>定電流回路みたいに考えて行けばそこに成り立つ方程式は同じ形になるからです。

ただ魔法瓶の中はどう見ても分布定数回路なんですがそれはめんどうなのでラダー回路(?)で適当にごまかしてあります。

突っ込みどころはたくさんあるとは思いますが本質的なところはだいたい表せているのではないかと思います。
Model01
(R5を追加しました。配線の容器の外の部分の熱抵抗です)

V1は周囲の環境(室内)が一定の温度であることを示します。298.15Kつまり25℃のつもりです。

容器の中に入っているものはそれぞれの熱容量をもっていますのでコンデンサーと考えます。Water1、Water2、Water3は水でそれぞれ容器の表面に近いところから氷、センサーに近いところまでを表しています。センサーも同じに考え“Sensor”がそれです。

氷も同じなのですが、水との境界面は常に0℃になる、ということを表現する方法がよくわからなかったのでひとまず0℃=273.15Kの電圧源にしました(ツェナーとはちょっと違うようです)

IsとR2はセンサーがサーミスタや測温抵抗体(白金薄膜抵抗)の場合の自己加熱を示しています。

R3、R9、R10、R11はセンサーに至る配線で、R12、R13、R14はそれが水で冷やされていることを意味しています。

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R6は回りの環境と内部との熱抵抗ですが、魔法瓶など断熱性のいいものを使えばとても大きい値を示します。

R7、R8はどんな容器を使うかとか水の物性・状態(熱伝導、対流など)で決まってしまう値です。

R4はセンサーとその近傍の水Water3の熱抵抗ですがこれはほとんどセンサー自体とその格納容器(シースなど)の作り方で決まります。

R1は氷とセンサー表面までの熱抵抗でこれがもっとも重要です。これは電線の抵抗と同じで氷との距離が小さく、対向する面積が広いほど小さくなります。ただし氷とセンサーを接触させるのは反則です。0℃なのは氷ではなく氷と水の境界面だからです。

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こんなの考えて何の役に立つのかと思われそうですが、どこがネックか追求するとき頭を整理するのにはいいと思います。

定常状態の場合はコンデンサーはないものと思えばいいので温度の分布から熱抵抗は予想がつきます。また熱容量はある程度計算できるものですが、過渡的な現象を観察していても見当がつきます。

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例えばA点は魔法瓶の底と考えればいいと思います。ここの温度は0.2℃くらいでした。魔法瓶の容器としての熱抵抗は40℃/WくらいでしたのでR7+R8+R1は0.3℃/Wくらいだと考えればいいということでしょう(「氷点・摂氏0度の作り方と使い方 - センサーの位置と温度の関係」)

またセンサーの温度が上がってしまう要素として線材あるいはシースなどを通して流れる熱の影響があります。これはR3~R11で決まるわけですが、上の回路図からわかるようにR4の大小によって影響の大きさは変わります。もし線材をつまんで(=C点)センサーの温度が上がるようならR3~R11>>R4となっていないと考えた方がよさそうです。こういう場合線材をつままなくてもB点は外気の影響を受けているはずですからほんとうに氷点が実現できているか疑問、ということになります。

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  「氷点 - 摂氏0度の作り方
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