はんだの融点/共晶点での相転移と過冷却現象 - 熱電対温度計の校正に向けて
準備が整いましたのではんだの過冷却・相転移が起きていると思われる部分を詳しく見てみます。
15秒~30秒のところを拡大してみました。
実験全体のグラフや緑色の線の意味などについては前記事
「はんだの融点/共晶点と過冷却現象 - 熱電対温度計の校正に向けて」
にあります。
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温度がA点まで下がってくるところまでは“自然冷却”を仮定した温度曲線の上にぴったり一致しています。
つまりA点までは“何も起きていない”と思われます。次のB点になるとはっきり乖離しています。となるとA点とB点の間で、どちらかというとA点の近くで“何かが起きている”ことになります。
ここは過冷却の過程ですが、過冷却と言っても単純に液相のまま温度が下がっていくということではなさそうです。
1. 過冷却の過程では液相の物性に変化が生じる
2. 全体的に見れば過冷却でも一部では相転移が起こり始めている
のどちらかなんでしょう。専門家の書かれたものを探せばわかりそうですが、ここでは、何かが起きている=液相とは違う=190℃以下になったと思われる、ということがわかれば十分なので先に進みます。
一方Dでは自然冷却を仮定した温度曲線に一致していますから、ここではすでに固相に転移しているものと思われます。その一つ前のCではわずかに温度曲線とのずれが見られます。
C.とD.の間、どちらかというとC.点の近くで“何かが起きていた”ことになります。
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以上をまとめると
A.点あたりで相転移がはじまり、C点あたりで相転移が終わる
ことになります。A点での熱起電力7818μVとC.点での熱起電力7525μVの差293μVを現在わかっているこの熱電対の温度係数41.2μV/Kで割るとA.点とC.点には7.1℃の差があることになります。
相転移は190℃ではじまって183℃で終わりますから差は7℃です。ぴったり合っています \(^o^)/
いくぶん自分に都合がいいように解釈しているようにも思えますが、ひとまず7818μV=190℃、7525μV=183℃として、他の実験データ(大量にあります)と整合性があるか確認してみたいと思います。
この記事の起電力は冷接点=0℃に対するものに換算してあります。以前の記事では室温に対するものだったのですが、それだと比べるときたいへんなのでこうしました。
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参考
「学習院 - 仲山英之・石井菊次郎 - 2-1 温度測定」
「岩手大学農学部 岡田益己 - 温度の正しい測り方(3)熱電対の作り方・使い方」
「アナログ・デバイセズ - 熱電対温度計測に関する不明瞭な部分の理解」
「株式会社東京熱学 - 2-3 熱電対の許容差」
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