2分で終わる舌下温、30分はかかる腋窩温 - 体温を測るのにかかる時間
昨日の“実験”の結果は、口内の温度の方が脇の下より0.4℃高い、口内の温度の方が脇の下より早く安定する、ということでしたが、脇の下の方は実際は完全に温度が一定になるまで測定していませんでした。
そこでもう一度やってみました。
測定に要する時間については以下に記しますが、じつは腋窩温と舌下温はあんまり違わないという発見もありました。0.1℃程度の差しかないみたいです。
腋窩温と舌下温を同時に測定した結果があります。
「脇の下と口の中の体温をいっしょに測ってみた - 腋窩温と舌下温」
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今回も体温計(温度計)としては測温抵抗体(Pt100白金薄膜抵抗)を使っています。ただ昨日(「舌下温(口中温)と腋窩温(脇下温) - 測定方法による体温の違い」)とは別のものでこちらはより確度が高くこの温度帯での拡張不確かさ(k=2)は0.08℃と評価しているものです。
腋窩温については30分~40分くらい測るつもりで始めたのですが26分経ったところで温度計の位置が変わってしまうというミスがありました。それでけっきょく何分経ったら温度が一定になったとみなせるかは正確には言えないのですが、40分くらいのところは完全に安定しているように見え、それと前半部の温度の動きの形をくらべるとおそらく30分も経てばまあまあ一定になると考えてもよさそうです。
一方舌下温はすぐに一定とみなせる温度になります。2分くらいでしょうか。
ただし、これは小さなアルミパイプに収めた測温抵抗体で測っています。体温計でも2分でOKということにはならないと思います。
この測定時間の差について昨日は“口内には唾液があって熱抵抗が小さくなるから”と書いたのですが、グラフをよく見ると差が出る本質的な理由はそれではなさそうです。
これは推測ですが....
口内は体温を測る前からほぼ一定の温度になっているでしょうから、温度計の熱容量と熱抵抗で温度が一定(とみなされる状態)になるまでの時間が決まります。今回のように熱容量が小さく熱抵抗も小さくなるように作ってあるものだとすぐに定常状態になるはずです。
一方脇の下は体の表面ですから熱を放出しており温度は体内の温度にくらべるとずっと低いはずです。体温計を挟むことによって熱の放出がなくなりだんだん体内の温度に近づいていくはずです。つまり脇の下と温度計が平衡状態になっても脇の下と体内が平衡状態にならない限り定常状態にはならないことになりそうです。けっきょくどんなに熱容量・熱抵抗が小さい温度計を使っても脇の下で測る限り数十分がかかってしまうということではないでしょうか。
以上は温度の動きからも説明できそうです。
一定の温度の物体に温度計を入れたときの温度変化は(細かいことを言い出すといろいろありますが、だいたい)
(温度計の最初の温度 - 物体の温度 ) * exp( - k * 経過時間 ) + 物体の温度
で表されます。舌下温はこの式で示される温度変化のように見えますが、腋窩温の温度変化はこれとは異なっているようです。
これについてはシミュレーションの結果をもとにもっと具体的に書くつもりでいます。
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参考
「大学病院医療情報ネットワーク研究センター - 人体のしくみと働き 2015年度版 - 体温の調節」
「シチズン・システムズ - よくあるご質問(Q&A) - 電子体温計」
関連
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「なぜ左右の脇の下で測った体温(腋窩温)が違うのか - その理由を調べてみた」
「左脇の下の体温は右より0.3℃高かった - 腋窩温の測定」
「腋窩温(脇の下で測る体温)は左右で違うか?」
「脇の下と口の中の体温をいっしょに測ってみた - 腋窩温と舌下温」
「2分で終わる舌下温、30分はかかる腋窩温 - 体温を測るのにかかる時間」
「舌下温(口中温)と腋窩温(脇下温) - 測定方法による体温の違い」
「温度計のセンサー比較(温度センサ、サーミスタ、熱電対、白金測温抵抗体、pn接合など)」
「(白金)測温抵抗体(白金薄膜抵抗)の使い方 - 基礎編というか入門編というか....」
「脇の下恒温槽と体温計で白金抵抗温度計を校正してみた」
「体温計と魔法瓶で校正する白金測温抵抗体 - 36.5度編」
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