pn接合の飽和電流と理想係数の温度特性(を調べる準備)
トランジスタなんかのpn接合の順方向電圧は(電流に依存するのですが)だいたい-2mV/Kの温度係数を持ちます。以前この-2mV/Kが何を意味しているのか調べようと思ったことがあります。
順方向電流と電圧の関係はちゃんと式があります。
I = Io * ( exp(q*V/(n*k*T)) - 1 )
この式からdV/dTを求めればいいはずということで微分してみたら(そのときのノートがどこかに行ってしまってはっきりしないのですが)確か約2mV/Kという値が出てきました。これで一件落着ということになりかけたのですが、2mV/Kであって-2mV/Kではないわけですから明らかに間違っています。
上の式でq(電荷素量)とk(ボルツマン定数)は物理定数ですからIo(飽和電流)あるいはn(理想係数)が温度の関数になっているということみたいです(そうならそうとちゃんとその旨注釈を書くかIo(T)、n(T)みたいに書いてほしいと思うのですが....)
調べたら温度係数を理論的に説明したものが見つかったのですが、いろいろと仮定とか省略とかしてあってどこまで実際のトランジスタ・ダイオードと一致するのかよくわかりません。
そこで実際に温度係数を実測し理論式(理論をもとに作った近似式?)と比較してみることにしました。
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温度係数は電流を一定にして温度を変えながら順方向電圧を測ればいいのですが、飽和電流や理想係数が対象となると電流と温度を変えながら順方向電圧を測らなければなりません。
ひとまずデータはある程度集まりました。
約0℃~15℃のデータです。このあとも測定を続けており40℃か50℃くらいまではやってみようと思っています。
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上のグラフは生のデータから作ってありいろんな系統誤差がありそうです。
すぐに思いつくものだけでもこれだけあります。
・定電流源の等価並列抵抗
・ADコンバータのバイアス電流
・ADコンバータの入力抵抗
・pn接合の自己加熱
・温度計と測定対象の温度差
どれもけっこうやっかいです。例えば自己加熱は測温抵抗体(白金薄膜抵抗)やサーミスタで補正に使う手法が使えません。測温抵抗体のようにオームの法則が成り立たない(オーミックでない)からです。
一方有利な材料もあります。順方向電圧は電流に依存するわけですがほぼ電流の対数に比例するため感度係数は小さいです。例えばバイアス電流が原因で電流が違っていたとしても電圧に対する影響はあんまりないはずです。
どの要素がどの程度の影響があるか評価した上でまず実験データから温度係数を求めてみるつもりです。
(続く)
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温度、気圧をはじめいろんな物理量の測定方法について
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