温度特性測定の精度を上げる方法
金属皮膜抵抗の抵抗値、サーミスタや測温抵抗体(白金薄膜抵抗)の抵抗値、pn接合の順方向電圧、その他いろんなものの温度特性を調べるとき悩まされる問題があります。
これは断熱容器にヒータを入れ温度が上昇するときとヒータを切って温度が下降するときのpn接合の順方向電圧を測った例です。
特定の温度に対する順方向電圧を見ると温度が上昇するときと下降するときで違っています。
これは原因ははっきりしていて温度計と測定対象に温度差が生じておりその温度差が上昇時と下降時で逆転するためです。
これだと正確に測定できないため、例えば温度の上昇・下降の速度を小さくするというような対策をとるのですが、いつもそういうことができるわけでもありませんし、第一時間がかかってしまいます。
こういうときつい上昇時と下降時の平均をとってしまったりするのですが、それでは正しい測定値は得られません。温度計と測定対象の温度差は上昇時と下降時で同じとは限らないからです。
そこで「抵抗器温度係数の実験データからの算出の方法」の考察の結果をもとに上のデータを補正し正しいと思われる温度と順方向電圧の関係を求めてみました。
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「抵抗器温度係数の実験データからの算出の方法」の結論は温度計と測定対象物の温度差は
(R2/R4 - R1/R3)*Te - (C2*R2 - C1*R1)*v0
で表されるということでした。
ここでR2<<R4、R3<<R1であれば温度差は温度の変化速度v0に比例することになります。
一般的に比例定数 - (C2*R2 - C1*R1) を知ることは困難なのですが、温度の変化速度が違う測定を組み合わせればこの比例定数を実験的に求めることができます。
温度が上昇するときと下降するときのデータがあるわけですからこれが可能になるはずです。
そこでv0を次のようにして求めます。
( n秒前の温度 - n秒後の温度 ) / n / 2
これで毎秒何度温度が変化しているかわかるはずです。ここでnが大きいほうが正確に温度変化を知ることができるのですが、そうすると急激な温度変化に対応できなくなります。
試しに n=60 つまり1分前と1分後から温度の変化を算出することにしてみます。
あとは上の二つのグラフができるだけ同じになるような比例定数を求めます(最小二乗法を使うのですが実際にはExcelのソルバーを使っています)
こうやって求めた比例定数は
-0.088分
でした。つまり1分間に1℃温度が上昇しているとき測定対象は温度計より0.09℃低い温度に、一分間に2℃であれば0.17℃低くなっており下降しているときは測定対象の方が温度計より0.09℃あるいは0.17℃高くなっていることを意味しています。
以上の結果をもとに温度を補正して作成した温度と順方向電圧の関係のグラフはこうなりました。
特定の温度に対する順方向電圧は上昇時と下降時でほぼぴったり一致しています。
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この補正の方法が有効であることはわかったのですが、これは上に書いたようにR2<<R4、R3<<R1であることを前提にしています。これについては実際そうであるということを何か別の方法で示す必要があります。
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