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2015年7月19日 (日)

測温抵抗体(白金薄膜抵抗、Pt100)と高精度体温計の温度を比較してみた

測温抵抗体もいつの間にか三個たまったし氷点での校正も済んでいるのでふたたび体温計と“対決”してみました。

Pt100vs

==========

実験方法は単純で温水を魔法瓶に入れ、その中に体温計の先端と測温抵抗体3個を沈めそれぞれで温度を測定して比較します。

水温は下がって行くのにたいし体温計は最高温度計になっているので体温計での測定はスイッチを入れ数秒たって温度が安定したところを読み取ります。

上のグラフで不規則な温度の上下動がありますがこれが問題です。自然に水温が下がるとき温度を測っているからこうなるのではないかという気がしており、自然に温度が上がるとき測るべきではないかと思い始めています。理由はまだ仮説の段階なので検証できたら記事にしたいと思います。

比較したのは次のものです。

種別・型番 スペック 不確かさ要因 拡張不確かさ(k=2)
(36℃)
体温計
オムロンヘルスケア
MC-172L
±0.05℃
(35℃~38℃)
許容誤差 ±0.06℃
Pt100-No.1
測温抵抗体(白金薄膜抵抗)
R0K1.232.6W.B.008(101)
INNOVATIVE SENSOR TECHNOLOGY
(秋月電子通商)
Pt100 Class B
3850±12ppm/K
100.00±0.12Ω
氷点校正済み
温度係数許容誤差
氷点実現精度
(相対)抵抗値測定誤差
±0.22℃
Pt100-No.2
測温抵抗体(白金薄膜抵抗)
PTFA101B000(101)
岡崎製作所
(秋月電子通商)
   〃    〃    〃
Pt100-No.3
測温抵抗体(白金薄膜抵抗)
362-9856

(RSオンライン)
Pt100 1/3 DIN
3850±4ppm/K
100.00±0.04Ω
氷点校正済み
   〃 ±0.08℃

結果を見るとPt100-No.1を除く三つはだいたい同じ温度を示しています。
少なくとも0.1℃くらいまで測るのであればどれを使っても問題なさそうです。

Pt100-No.2はClass Bでスペック上は許容誤差±0.48℃(@36℃)ですから、あたりを引いたと言えそうです。ただ今回は氷点校正後の測定値で氷点校正をしないで使っていたらPt100-No.2も0.12℃ほどプラス側に誤差が出たはずです(Pt100-No.2の0℃での抵抗値は100.05Ωでした)

Pt100-No.1はグラフだけ見るとちょっと冴えない結果ですが、他の温度計・センサーと比較しても0.1℃も違わないわけでスベックを考えると喜んでいい結果です。
(前回も似た傾向が出ていました「体温計と魔法瓶で校正する白金測温抵抗体 - 36.5度編」、ただこれは測定方法が今回とはちょっと違います。今回は「サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源」にある定電流源を使って測定しているのですが、前回は「16bitADコンバータMCP3425とPICで作る白金抵抗温度計 - 1」に書いた方法を使っています。使っているADコンバータも前回MCP3425に対し今回はMCP3553です。抵抗値は基準となる抵抗との比しか計算に使わないのでADコンバータの確度はたいして問題にならないのですが、MCP3425が16bitに対しMCP3553は20.6bitあり分解能が高いです)

--------

たった三つでなんとも言えないのですが、白金薄膜抵抗は0℃の抵抗値にはちょっとばらつきがありますが、温度係数はPt100の標準3850ppm/Kをよく実現できているように思えます。0℃での抵抗値は機械加工の精度に依存するからあんまり精度が出せないのではと推測しているのですが、じっさいどうなのかはわかりません。

なお、この測定では水温が毎時0.6℃低下しています。これだと体温・センサーそれぞれの間に温度差が発生している可能性があって、上に書いたことは“ぬか喜び”かもしれません (^^;;

====> この“自然に下がる水温を測定する”という方法は問題もあります。
     「
(pn接合による)水温測定時の対流の影響?

こういうのは水温を上昇させてみればどのくらい温度差があるのかはっきりするのですが、まだ実験の準備ができていません。次に同じタイトルの記事を書くときはそのあたりをクリアできていればいいのですが....

センサー間に温度差が発生する問題とその解決法については

  「温度特性測定の精度を上げる方法

にあります。

ところでR0K1.232.6W.B.008(101)は@350._なのにPTFA101B000(101)は@650._です。スペックも見た目もたいして変わらないのになんで値段が違う、とぶつぶつ言っていたわけですが、今回の結果が一般的な傾向なら値段の差にも納得できます。この二つのうちどちらかをまた買うとすればたぶんPTFA101B000(101)を選ぶと思います。

ただ0℃での抵抗値はR0K1.232.6W.B.008(101)の方が100.03Ωと誤差が小さかったです。氷点での校正をしていないと室温あたりではR0K1.232.6W.B.008(101)の方が正確と思われます。

-------

参考

  「白金抵抗温度計の校正とその使い方 - JCSS:計量法認定
  「はじめての精密工学 - 白金抵抗温度計を用いた精密温度測定
  「JEMIC 計測サークルニュースVol.26, No.2 ~ 4 連載(1997) - 浜田登喜夫 - 白金抵抗温度計の校正とその使い方

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