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2015年8月14日 (金)

JESEA(地震科学探査機構)と「地震・噴火予知方法」の特許

ニュース記事をバラパラ見ていたら気になる記事がありました。

  「Yahoo!ニュース
     - NEWS ポストセブン
        -MEGA地震予測創設以来初 南関東警戒レベルを最大に引き上げ

記事は“JESEAの幹部から「週刊ポスト」編集部の担当者に連絡が入った”情報によるらしいです。このJESEAとは何なのかその情報はどこまで信頼できるのかググっていたらいろいろおもしろい(?)ものが見つかりました。

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この記事は軽い読み物です。JESEAとその地震予測については

  「横浜地球物理学研究所
   (地震予知研究の結果検証などを中心とした、地球物理学関連の話題。
    ※公的研究機関ではありません。 )

に徹底的な(批判的)検証があります。地震予知に興味のある方はそちらをご覧になった方がいいでしょう。

JESEAやその予測について書かれたものは他にもあるのですが、出典を明記した資料・データをもとに理詰めで結論を導く、という私の好きなスタイルだったのでこれにしました。
もちろん内容も私は十分に納得できるものでした。

  
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JESEAは地震科学探査機構のことで、いかにも独立行政法人っぽい名前ですが上の記事にも“民間会社”と書いてあるようにふつうの株式会社です。
この会社のサイトを見ると”JESEAの顧問である村井俊治と荒木春視の両氏はGNSSを用いた日本初の地震予測に関する特許発明の発明者”であって両氏の理論・アイデアを応用した地震予知を業務にしているらしいです。

この会社のサイトを見ると違和感を感じるところが二つあります。

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まず(ほんとに地震予知/予測がちゃんとできていればどうでもいいことですが)やたらと権威を振りかざしていることです。つまりよくあるあやしい会社にありがちな胡散臭さを感じてしまいます。

“どうやって予測する?”のページには村井俊治・東大名誉教授華々しい経歴が麗々しく書いてあります。
肝心の“どうやって予測する?”はプロフィールの上にある動画にあるようです。この動画のタイトルが笑えて

  “村井俊治 地震予測を語る”

ならわかるのですが

  “東大名誉教授 地震予測を語る”

になっています (^^;;

そもそも“地震科学探査機構”というJAXAやNICTを連想させる社名からしてどうしてもいかがわしさを感じてしまいます。

ちなみに公共広告機構は

実際は純粋な民間の団体であるにもかかわらず、37年という年月を経た今もなお、政府の機関のように思われているということです。その一因は「公共広告機構」という硬い、官庁の組織のひとつともとれるこの名称にありました。........

ということからACジャパンに名称を変更しています(「「公共広告機構は「ACジャパン」へ」)

“JESEAの地震予測について”というページもあるのですが、このページは地震予測の説明より前に保有している(あるいは出願中の)特許の紹介から始まっています。ここでも“特許庁公認の....”ということを強調したいのでしょうか。

“地震予知”で特許を取得できるものか疑問に思ったのですが(三回の拒絶はあったものの)ちゃんと“特許査定”されていました。件名は“地震・噴火予知方法”ですから“手法”が特許であって同業者が同じ手法で地震予知をするのを阻止するためでしょう。
(こういうのは「特許情報プラットフォーム」で件名で検索すると簡単に調べられます)

いくらなんでも特許庁がこの方法で地震予知ができると公認したわけではないでしょう。特許庁にそんな権限があるとは思えません。

横浜地球物理学研究所」で何ヶ月先の地震が予測できるかについてのJESEAの主張が変化していることを指摘し予測が当たらないから小細工しているというような意味のことを書かれていましたが、出願中の特許「衛星測位による地震予測方法」の出願書類を見ると

『100%の確率ではないにしても70%~80%の確率で中程度以上の地震であれば略1ヶ月後(場合によって3ヶ月後になる場合もありうる)に地震発生の可能性が高いと判断できる方法を開発した』

とあります。これを示せば言い逃れできないんじゃないでしょうか。


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要するにこの会社は権威好きらしいです。信用度を高めたいためでしょうし、それを周囲の権威好きが利用(?)している節もあります。

  「測量工学世界的権威・村井氏が警告「東北日本海側に大地震兆候」

でもこんなことをこれでもかこれでもかとやると怪しい感じ(=やってることに自信がないから虎の威を借りてる、と思いたくなる)になるだけだと私は思うのですが。

トープページにメディアでの紹介事例がありますが、これは権威を高めるという意味では完全に逆効果でしょう。紹介しているメディアの一覧をご覧になれば私が何を言いたいかすぐにわかっていただけると思います。

なお、予測を正確に行うために国土地理院の電子基準点で測定された位置データを使っていることがあちこちに記されています。以上のようなことからこれもまた権威付けみたいに思えてしまうのですが、当の国土地理院は(JESEAを名指しこそしていないものの)データを正しく扱っていないものがいると警告する告知をWeb上に出しています。

この事実は

  「横浜地球物理学研究所 - ネパール地震の前兆を捉えていたという村井俊治氏の主張は、デタラメです

で知りました。名指ししていないのにどうしてJESEAのことだとわかるのかというのもリンク先をご覧になれば納得できると思います。国土地理院が取扱に注意を要する事例として挙げているデータの日にちがJESEAがネパール地震の前兆を捉えたとする日にちと一致し、データを取り上げた測定地点も似通っているからです)

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次にサイトの各ページの記載内容が何かヘンです。

JESESの予測に対する詳細な検証は上にリンクした「横浜地球物理学研究所」にあるのでそれをご覧いただくとして、素人目にも不思議に感じるところを二つ書きます。

“地震予知”ということばを聞いてたいていの人は地震の要素つまり震央の位置、発生日時(マグニチュード)、震源の深さなどを予測することだと考えると思います。ところがJESEAのいう地震予測というのはそういうことではないようです。“もっと詳しく知りたい方へ”のページに

「本情報は、決して震源の位置およびマグニチュードを予測するものではないことをご理解ください。」

“本情報”と言うのが何を意味しているのかよくわからないのですが、文章の流れに沿って素直に受け取ると地殻変動のデータは提供するが、どこでいつ起きるかは自分で考えてください、ということのようにも思えるし、あるいは(例えば東京で)大きい地震がいつ頃起きるかは言えるがその地震の震源がどこだかは予測できない、と言っているようにも思えます。前者であれば予測はできないということだし、後者であればかなり不思議な主張です。

その後特許が出願されている「衛星測位による地震予測方法」の出願書類を見てみたら

『実用的には震源とマグニチュードを予測するより、実際に地震の揺れが起きる震度分布とその震度を予測する方が社会的に利用価値は大きい。』

『このような背景から震度分布を重要視した本発明では、ピンポイント的に震源を予測することはせずに、被害が出ると予測される広い地域を予測する視点で方法論を開発した。


とあるので、どうやら後者の「(例えば東京で)大きい地震がいつ頃起きるかは言えるがその地震の震源がどこだかは予測できない(しない?)」という解釈が正しいようです。

私は遠隔地で地震があったとき東京でも揺れを感じるのは地震波が震源から東京まで到達するからだ、と思っていたのですが、JESEAによるとそうじゃないようです。


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以下そんなに簡単に○.○cmというような精度(確度)で地殻の移動・上下動を検出できるわけがない、という方向で書いていますが、いちばん問題なのは○.○cmの地殻変動がどういうことを意味するかではないでしょうか。

日本水準原点の標高は大地震が起きると変化しますが「
国土地理院 - 測量に関するミニ知識 - 日本の高さの基準と高さの決定」によれば関東大震災で8.6cm、東北地方太平洋沖地震で2.4cmです。
もしほんとにこれくらいの地殻変動が起きていたら、それは地震の予兆ではなく地震(それも大地震)そのものだと思います。


「2013年発生した震度5弱以上の地震の捕捉検証」のページを見ると「電子基準点が○月○日に○.○cm移動した」というような記述がありますが、国土地理院の資料(例えば「木啓、宮原伐折羅(2012):アジア太平洋地域におけるGPS解析戦略の構築, 国土地理院時報、123、1-8. 」)を見ると特定の日の電子基準点の位置をこの精度で求めることができるとはとても思えません。上に書いた国土地理院が警告を発しているというのもこのことに関係しています。

この件についてはその後地球物理学者の指摘が掲載されている記事があったので紹介しておきます。
  「
当たって当たり前?「MEGA地震予測」を科学的にどう見るか

またこれにたいしてJESEAの反論があったそうです。私はメルマガを購読していないのでそのことについて書かれた記事も紹介しておきます。
  「
横浜地球物理学研究所 - 島村英紀氏の批判に対する、村井俊治氏らJESEAの反論について

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GPSというのは一言で言えば双曲線航法なので電波の到達時間から衛星までの距離を求めるというのが基本になります。もし1mmのオーダーまで距離を求めようとするとこれを光速度で割った3ps(つまり1兆分の3秒)の時刻精度が必要です(ここの表現が気になる方は“0.03radの位相差を検出することが必要”と読み替えてください)

これは現代の科学技術を持ってすれば実現可能でしょうが、問題は大気を通過してくることです。大気の厚さを1気圧10kmと仮定すればここを通過するのにだいたい0.33msを要します。大気中では光速度は1/(空気の屈折率)になるので大気を通過するとき0.1μs(1千万分の1秒)くらいの遅延が発生します。たいした遅延ではないのですが今は3psの違いを問題にしているわけですからそういう意味ではとんでもなく大きな遅延が発生していることになります(屈折率の異なる媒質の境界を斜めに通るときはとうぜん屈折が起き経路とその長さも変化します)

国土地理院の資料によれば標準大気みたいなのを仮定して大気の影響を補正するようですが、実際には気圧も温度も露点も変化しまた雲があったり雨が降ったりしているわけですし、さらに大気層の上にある電離層(これも日夜状態が変化しています)でも遅延が発生するはずです。

大気がどのような状態にあるかなんて正確に知ることは現実にはできないわけですから1mmの精度の測定に必要な正確な補正なんかできるわけはなく実際には最低でも数cmの誤差が存在することになるようです。

ここのところは「特定の日の電子基準点の位置を1mmの精度で得ることはできない」ことを大気の影響に重点をおいて書いていますが、もっと広範な見地からから書いたものが

  「
風の谷の生活村井氏の地震予知について 1

にありました(内容については確認しておきたいこともあるのですが、ひとまず紹介しておきます)


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業務紹介は会社の顔ですからその内容は実際に業務に携わっている人がきちんと校正・校閲しているはずです。それなのに素人目にも疑問を感じるような内容が書かれているとなるとこれでほんとに地震予知(予測)ができるんだろうかと心配になります。

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