海水の塩濃度(PSU、塩分)、水温と水深の関係
しんかい6500の受ける水圧(「海面下6500mの水圧は658気圧 - Excelで水深と水圧の関係を計算する 」)や水深から水圧を計算する方法(「水深から水圧を求める計算式(海水編) - ρghでは計算できない深海用」)についていくつか記事を書きました。海水が深海の水圧によって収縮し海水の密度が大きくなることを問題にしているのですが、水圧の影響を受けないときの海水の密度がわかっていないと計算はできません。
(圧力を受けていないときの)海水の密度はPSU(注)と水温で決まります。水深とPSU、水温(、密度)の関係はいろんな資料にグラフがあるのですが、数値データとして示したものが見つかりませんでした。理科年表には数値データがあるのですが、残念ながら水深1500mまでのデータしかありませんでした。
そこでこれまでは水温が0℃、PSUが35と仮定してやってきましたが、最近国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の「航海・潜航データ探索システム(DARWIN)」で実測データを入手することができることがわかりました。
今回はこのデータについて検討します。このデータを使って行った水圧の計算については改めて記事にする予定です。
注
PSUというのは塩分(塩濃度)を示す数値です。PSU自体は無次元数(つまり単位はない)のですが、例えばPSUが35というのは1kgの海水にだいたい35gの塩が含まれていると考えればいいと思います(PSUの正確な定義はもうちょっと複雑です)
(「三洋テクノマリン - 通信No.7 海の言葉⑦ Salinity」が参考になると思います)
-----------
謝辞
本記事では海洋研究開発機構の“かいよう”KY09-07航海において取得されたデータを利用させていただきました。
本記事ではJAMSTEC航海・潜航データ探索システムのデータを利用させていただきました。
Data used in this study was obtained during the KY09-07 cruise of Kaiyo, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology.
In this note author used the data from the JAMSTEC Data Research for Whole Cruise Information.
航海データ
「かいよう」 KY09-07 航海データ
使用したデータ
JKEO.dat CTD KY09-07 JKEO 20090828 0620 38-04.72N 146-27.11E 5352
======================
水深とPSU、水温の関係をグラフにしてみました。
点でプロットしているのですが、1m毎のデータがあるので線でプロットしているように見えます。
水温はとうぜんのことながら表層ではかなり高くなります。ただ水深400mではすでに5℃になっておりそこからゆるやかに降下し水深1000mでは3℃となり2000mでは2℃となってそれより深いところではあんまり変化しなくなります。水温の密度に対する影響はさほど大きくないことを考えると水温が2℃(あるいは0℃)で一定であると考えるのは間違った仮定ではないと思われます。
PSUは表層から深層に至るまで35弱の値になっています。これであればPSUを35として計算することも問題なさそうです。
ただこれはグラフにあるように“黒潮続流域”つまり日本の太平洋側遠海での実測結果です。理科年表を見ればわかるように対馬海流域、親潮域ではかなり違いがあります。季節によっても違います。
今はしんかい6500について考えているので黒潮続流域で問題ないと思いますが。
参考までに水深1,000mごとの具体的な数値を示しておきます。
the KY09-07 cruise of Kaiyo
JKEO.dat CTD KY09-07 JKEO 20090828 0620 38-04.72N 146-27.11E 5352
from the
JAMSTEC Data Research for Whole Cruise Information
水深/m | 水温/℃ | PSU |
2 | 25.2 | 34.1 |
1,000 | 3.3 | 34.4 |
2,000 | 1.9 | 34.6 |
3,000 | 1.6 | 34.7 |
4,000 | 1.5 | 34.7 |
5,000 | 1.5 | 34.7 |
--------------------
関連
「水深と水圧の関係 - 海面下6500mでの水圧は? (1)」
「海面下6500mの水圧は658気圧 - Excelで水深と水圧の関係を計算する 」
「水深6500mの深海の水圧は何気圧? - 専門家でも意見が違う?」
「しんかい6500の耐圧殻の真球度はどれくらい? - 水深6500mの水圧 (4)」
「水深と海水の密度・水圧の関係 - 海水の状態方程式」
「水深から水圧を求める計算式(海水編) - ρghでは計算できない深海用」
「水深と水圧の関係のグラフ(海面~水深12,000m)」
「しんかい6500の受ける(水深6500mの)水圧 - 文部科学省『どんな?文科!』編」
「続・しんかい6500の受ける(水深6500mの)水圧 - 文部科学省『どんな?文科!』編」
「海水の塩濃度(PSU、塩分)、水温と水深の関係」 (この記事)
「測定対象別記事一覧とリンク集」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
« ジオイド(重力の等ポテンシャル面)高とGRS80回転楕円体高と標高の関係 | トップページ | 太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2016年版 »
「趣味の実験」カテゴリの記事
- 100Ω抵抗器の端子間で発生した火花放電(沿面放電)(2018.07.18)
- Amazonで買った「400000V高電圧発生モジュール」の出力極性(2018.07.15)
- 高電圧モジュールの放電開始電圧 - 針状電極間の放電(2018.07.11)
- 高電圧モジュールの放電開始電圧 - 円筒電極と針状電極(2018.07.09)
- 放電開始電圧をパッシェンの法則から知る(2018.07.07)
この記事へのコメントは終了しました。
« ジオイド(重力の等ポテンシャル面)高とGRS80回転楕円体高と標高の関係 | トップページ | 太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2016年版 »
コメント