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2015年10月10日 (土)

じつは年周視差よりむずかしそうな年周光行差の観測

天動説が正しいことを示す証拠として年周視差があります。天文学者が必死になって年周視差を検出しようとしたがなかなか検出できず、1728年ジェームズ・ブラッドリーがそれらしい現象を見出したがそれは年周光行差だった、という話はあちこちに書いてあります。
年周光行差も天動説が正しいことを示しているのですが、年周視差はそれから100年以上だった1838年にフリードリッヒ・ヴィルヘルム・ベッセルによって検出されたそうです。
(以上主にWikipedia)

この話を聞くと年周光行差の検出より年周視差の検出の方がとんでもなくたいへんそうに思えます。実際上の話に出てくる年周光行差と年周視差とはオーダーが2桁違います。

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2014年の5月からサダルテミスさんが何年かかけて(何年かかってもいいから?)バーナード星の固有運動を可視化しようと写真を継続的に撮影されています。ところがたった80日でバーナード星の固有運動による動きを示すアニメーションGIFができました(「星空のおぼえ方-ソラのソムリエから自由をめざす - もう動いてた♪ バーナード星☆彡」)

このプロジェクト(?)が始まっていろいろ考えてみたのですが、“他の恒星との相対的な位置関係を基準にする”のならバーナード星だったら年周視差だって検出できるような気がしてきました。年周視差の振幅は固有運動の一か月分くらいあります。

バーナード星の年周視差と固有運動の観測・まとめ」より
Barnard01

年周視差が検出できるのであれば年周光行差なんて造作もないと思われそうですがそうでもありません。

年周視差の大きさは恒星によって違い大多数の恒星では非常に小さいです。だから突出して年周視差が大きいバーナード星のような恒星は周囲の恒星との位置関係の変化から年周視差が検出できます。

一方年周光行差の大きさやそれによる動き方は恒星の位置(黄径・黄緯あるいは赤経・赤緯)で決まります。つまり望遠鏡の視野に収まるような恒星はほとんど同じように動いているわけで年周視差のように相互の位置関係をいくら正確に調べてもわかるわけはありません。

けっきょく年周光行差を検出するためには恒星の絶対的な位置の変化を観測する必要があります。

たとえば子午線通過時刻(=南中時刻)を定期的に測るといったことが必要です。

どの程度の精度が必要かというと恒星の赤緯によって違うのですが赤道付近の恒星であれば年周光行差の振幅は40arcsec程度で時間緯直すと2秒強になります。掩蔽(星食)観測では動画+GPS/1PPSで±0.04秒の精度が実現できています。カメラを正確に真南に向けることができれば年周光行差の検出はできそうです。では“カメラを正確に真南に向ける”ことは可能なのなのでしょうか?

これは難しそうです。そもそも真南がどっちの方向なのかよくわかっていません (^^;;

ただ必ずしも真南である必要はありません。重要なのはレンズを常に一定の方向に向けることです。頑丈な建造物に望遠鏡を固定すればいいはずです。実際ブラッドリーはそのような方法を採ったようです。

正確に言うと真南に向けるのとそれ以外の方向に向けた場合は微妙な違いがあります。これについてはこれから書く記事で触れたいと思います。

建物に望遠鏡を固定するというのは素人には実現可能な話ではないので、それに代わる方法を考え、まず手始めに視恒星日の長さをどれほどの精度で測ることができるか調べてみることにしました。幸いなことにそのために必要な動画が手元にあったのです。

1平均恒星日の長さは23時間56分04.0905秒とされています(理科年表 2015年 丸善出版)

素人の観測でこの値にどれだけ迫れるかを試してみたいと思います。

(「年周光行差の観測方法を考えてみた」に続きます)

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  「固有運動・年周視差・歳差、その大きさの違い
  「固有運動や年周視差はアマチュアには無縁なものなのか?

  「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで

  「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)
  「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)

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