小惑星2015 TB145 - 撮影した位置とNASAの予測位置を比較してみた
NASAの予測位置というのは正しくは「(NASA JPL) Horizons Web Interface 」の推算位置のことを言います。
推算位置はじつは今日取得したものを使いました。小惑星が通り過ぎたあとのデータを使うのは反則のようですが、データを見ると推算が行われたのは一昨日のようですし、実際昨日小惑星が通過する前に取得した5分ごとのデータとは最後の桁まで一致しています。
だから比較に使ったのは小惑星最接近前の推算位置であることは間違いありません。
取得したデータのヘッダ
Rec #:744240 (+COV) Soln.date: 2015-Oct-30_10:09:44 # obs: 724 (20 days)
比較の対象とするのは「小惑星2015 TB145観測結果速報 - 撮影した写真の中からなんとか検出!」のアニメGIFを作った画像のうち1枚です。
NIKON F2.8 f=180mm + PENTAX Q7 ISO3200 01:31:51-01:31:53(2sec)
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2015 TB145の位置にクロスを入れてはありますが、拡大してもたいていの方は気づかないのではないかと思われるくらいに星像は淡いです。
2015 TB145のところだけ画像処理を加え星像をあぶりだしたものです。
まずこの画像から「「写真から星の座標を得る」アプリ」に書いた方法で星像の座標を求めます。そして「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (1)」に書いた手法で分析しこの画像を撮影したときの条件を求めます。
結果だけ書くと
ピクセル数に換算したレンズの焦点距離 fy[px] 97482
画像中心の赤経 yaw[deg.] 140.38236
画像中心の赤緯 pitch[deg.] 53.94241
等赤緯線に対する画像の傾き roll[deg.] 78.45
光軸中心に対する画像中心のオフセット 今回は(0,0)と仮定
歪曲収差 今回は“なし”と仮定
これらの値を使ってヒッパルコス星表と「(NASA JPL) Horizons Web Interface 」から
「(カテリナ彗星でも使える)小惑星2015 TB145の予測データから位置予測図を作成するExcelファイルに」
にあるExcelファイルを使ってこれまでと(同じように位置予測図を作ります。
写真の恒星像が予測図の青い星像に隠されているということは写真と予測図の位置関係がぴったり合っていることを意味します。
さて「(NASA JPL) Horizons Web Interface 」の位置予測と写真を比べると少なくとも経路に関する限りは非常によく一致しています。同じ位置を通る時刻については数秒違っているような気もするのですが、撮影時刻が1秒も違っていないかというとそこまで言い切る自信はないわけで結論としては
「(NASA JPL) Horizons Web Interface 」の位置推算は完璧だった
ということになります。最接近後の軌道予測は難しいんじゃないかと思っていたのですが、NASA JPLにとってはそういうのは朝飯前みたいです (^^)
ちゃんと撮影時刻=01時31分52秒の位置予測を調べてみました。
ぴったりあってました。
ちなみに30日を最後に今日(11月2日)まで位置予測は更新されていません。最接近の前に(当面使える)軌道要素が決定されていたということなのでしょう。
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まとめ
「小惑星2015 TB145の位置予測のまとめ」
他の(位置)予測記事
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「はやぶさ2のスイングバイを東京で見たら - 位置予測の試み」
「アルデバラン食出現時刻早見地図(全国版、2015年11月26日)」
「小惑星2015 TB145の位置予測のまとめ」 (2015年10月31日)
「ラブジョイ彗星の位置予測と見つけ方のまとめ - 2015年1月~2月」
関連
「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで」
「過去記事の一覧(天文計算、測定、電子工作)」
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コメント
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もう撮影位置の検証までされたのですか、相変わらず仕事が速いですね^^。
経路がぴったり推測できてるなら時間のほうも1秒以内くらいで合ってても良さそうですね。
私も今回撮影前にカメラの時刻をGPS時計で合わせて臨んでいますので、比較ができそうです。←いつまでかかるか不明ですが^^;
投稿: ほよほよ | 2015年11月 2日 (月) 01時00分
記事には完璧と書いたのですが、等倍で見るとほんの少しずれているようにも見えます。
不精せずにちゃんと1時31分52秒の推算位置と比較すべきでした。
でも、こういうのってあんまり一致していると面白味がないですよね (^^;;
私のカメラは歩度がちょっと大き目なようで時刻が今一つ信用できません。
投稿: セッピーナ | 2015年11月 2日 (月) 08時03分
あれ、更新されてますね。
しかも完璧なまでに推算位置がぴったり!
ISSに対してデブリ接近警告までだせるNASAなら当然なのかもですね。
天頂と北極のなす角は、恒星時を求めてZ軸回転、X軸(東西方向)を「90-緯度」分回転、の合成行列を使い、赤経・赤緯に適応して求めますが、(方位角、高度)ペアを入力とした関数は作っていませんでした;;
投稿: ほよほよ | 2015年11月 2日 (月) 19時06分
微妙に違うような気もするものですが、少なくとも時間でいうと1秒に相当するくらいの精度はありますね。
この1週間で推算の対象となった観測数が倍以上に増えているようなのでそれが反映したのでしょうか。
これだけ一致するとちょっとおもしろみがないです (^^;;
天頂と天の北極の件、ありがとうございます。
これから考えてみてわからないところがあったらまたご相談にうかがいますのでよろしくお願いします m(._.)m
投稿: セッピーナ | 2015年11月 2日 (月) 19時56分