Astrometry.netの数値データを取得する方法 - 検出された星像の位置について
これ、天文業界(?)の方ならどなたもご存じの話のようにも思うのですが、私みたいに天文計算が趣味と言いながら知らなかった人間もいるので書いておきます。
「Astrometry.net 」に画像をアップロードすると自動的(?)にどこを撮影したものか判断して天体名や星座絵を画像にオーバーレイしてくれるわけですが、私の場合ではそういうのはどうでもよくて何よりも星像の位置を数値データでほしいです。
==> 「バーナード星の固有運動と年周視差を測定するプロジェクト」
(「バーナード星の年周視差と固有運動の観測・まとめ」)
「Astrometry.net 」でキャリブレーションが終わって画像が表示されたとき画像の右側に方にある“Calibration”のところから数値データが取得できます。
ファイル名をクリックすればダウンロードできるのですが、拡張子が“fits”です。
これをどうしたらいいかというのがこの記事の目的の一つです。
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“fits”というのはWikipediaにもそういう項目があります。なるほど天文関係の人が使うファイル形式なんだ、ということに今さらながら気がつくわけですが、具体的にどう扱えばいいのかが今一つよくわかりません。
このことについては福岡教育大のサイトにあった次の資料を参考にしました。
「FITSの手引き 第5.3版 - 天文情報処理研究会監修 」
ちょっとやってみたのですが ESA/ESO/NASA という超豪華メンバーの名前を冠した The ESA/ESO/NASA FITS Liberator 3 では画像しか扱えないようです(あんまり使い込んだわけでもないので....)
画像だけだったらGIMPでも読み込めるので次を探します。上のFITSの手引きにあるリストの中でたいていのことはできそうな「Fv: The Interactive FITS File Editor」を選びました。
これはアップロードされた画像から検出された星像位置のデータ
Stars detected in your images (x,y table): axy.fits
を無事読み込むことができ、さらにそれをテキストファイルとして保存することができました。
FVの具体的な使い方は
「Astrometry.netの数値データを取得する方法 - FVの使い方」
にあります。
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私は画像からの星像位置の読み取りには「写真から星の座標を得る」アプリ」で紹介したほよほよさんのアプリを使っています。やはりいちばん気になるのは星像位置の読み取り結果にどの程度の差異があるかということでしょうか。
前記事「Astrometry.netでオリオン座を遊ぶ」ある小三ツ星あたりの画像
で読み取り結果を比較してみました。
なお、読み取り位置はほよほよさんのアプリでは左上のピクセルの中心が原点となっています。一方「Astrometry.net 」ではここの座標が(1,1)になっているようです。そこで比較する前に「Astrometry.net 」の座標データはx,yとも1.0引き算してあります。
ほよほよさんのアプリは確実に星像と思われるものをとらえるのに対し「Astrometry.net 」は星像の可能性があるものはすべてとらえるという方針みたいで抽出された星像の数がかなり違います。
そこでほよほよさんのアプリの結果にあるものに対応する「Astrometry.net 」の星像位置を探すという方法をとりました。ぜんぶやるのは面倒なのでx座標順のソートしたときの最初の方だけです。
左側がほよほよさんのアプリ、右側が「Astrometry.net 」です。
下で“左右の星像位置の間の距離”というのも“ほよほよさんのアプリと「Astrometry.net 」とで得られた星像位置間の距離”という意味です。
こうやって見ると一致しているものは0.1ピクセルしか離れていません。全体的に差は小さいので決して偶然の一致ではないと思います。(条件が良ければ)画像上の星像の位置というのは0.1ピクセルまで読み取れるのかもしれません。1ピクセル以下の差も問題になるようなバーナード星の年周視差の検出ではこれは心強い材料です。
さて上の結果のどちらが正しいかというか適切なのかというのが気になりますが、これは実際に画像と比較する必要があります。これについては別に記事にしたいと思います。上の結果を見る限り正しい、正しくないというより、星像の形をどう解釈するかの違いのようにも思えますが....
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「Astrometry.netでオリオン座を遊ぶ」
「Astrometry.netの数値データを取得する方法 - 検出された星像の位置について」
「Astrometry.netの数値データを取得する方法 - FVの使い方」
「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで」
「過去記事の一覧(天文計算、測定、電子工作)」
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コメント
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0.1ピクセルまで読み取れるってのは凄いですねぇ(@@
ほよほよさんも流石だわ^^
長焦点距離の画像だと大気の揺らぎで位置がずれるので、そういう場合は動画で撮って平均化しないと無理かしら?
あたしも何処を撮ったか分からない昔の写真がいっぱい^^;
調べるソフトがあると便利ですねぇ♪
あたしにも使えるかが問題だわorz
投稿: クリちゃん | 2015年11月15日 (日) 11時51分
これ、画像をアップロードして数分間待つだけです。他に何もやることはありません (^^)
今のところ失敗(?)したものはありません。たいした枚数やったわけでもありませんが、地平線近くの高度による大気差の影響の違いが目に見えて大きいものとか、デジカメの収差補正をオフにして撮った歪曲収差がひどいものとか、そんなのでもヘーキでどこを写したが見つけてくれましたよ。
ふつうは短くても数秒露出なのでシンチレーションの影響は平均化されてしまうようです。
画像の位置から天体の座標を正確に読み取ろうとするいちばん頭が痛いのは収差の影響(反射鏡は手ごわいです)ですね。
投稿: セッピーナ | 2015年11月15日 (日) 16時30分