GPS受信モジュールGE-612TとPLLで作る高精度発振器 - CD4046Bの使い方
緑の線の左側がPFD、右側がVCOになるようなピン配列になっています。
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PFDは入力として基準になる信号(Signal In 14ピン)とそれにロックさせたい信号(Comp In 3ピン)の二つの入力と位相を比較した結果(Phase Comp. Out)の出力があります。
出力には
Phase Comparator I Out (2ピン)
Phase Comparator II Out (13ピン)
の二つがあるのですが、ここでは Phase Comparator II Out を使っています。この二つはそれぞれの特性がありますので目的・用途によって選ぶようですが、後者は基準周波数の高調波にロックしない、基準周波数入力とVCO出力との位相差がない、と書いてあったからです(データシート読み間違ってたらすみません)
VCOは制御するための入力(VCO In 9ピン)と入力に応じた周波数の信号の出力(VCO Out 4ピン)があります。VCOの周波数範囲を決めるためC1、R1、R2があります。
PFDの出力をVCOの入力とするためローパスフィルター(ループフィルター)が必要でこれはC2、R3、R4からなります。
ふつうVCOの出力を分周してPFDの入力とするわけですが、今回は(練習なので)そのまま入力としています。基準周波数と同じ周波数の信号がVCOから出力されればOKということになります。
電源はVDD(1)とVSS(2)です(5は“Inhibit”なのでローに落としておきます。“Inhibit”をハイにすると動作は停止し消費電流はほとんどゼロ(25μA)になります)
回路定数を決めなければならないのですが、これがけっこう手間です。
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資料(CD4046B Phase-Locked Loop: A Versatile Building Block for Micropower Digital and Analog Applications )にしたがって決めていきます。
確実に動くようにと思い基準周波数1kHz、VCOの最低周波数fmin=500Hz、最高周波数fmax=2kHzとします。
まず
次にfmax/fminを求めます。4となりますのでこれと
今度は図9cを見てfmax/fmin=4に対する
VCOの回路定数が決まったので、ローパスフィルターの定数を決めようと思うのですが、
G.S. Moschytz, Miniaturized RC Filters Using PLL, BSTJ, May 1965.
を見ろ、みたいなふざけたことが書いてあります。
もっともWikipediaを見るとループフィルターだけについた本とか出てるみたいですから、それなりに難しいのでしょう。より高精度(安定度)を求める場合このあたりがポイントになりそうです。
サンプルの4.2 Frequency Synthesizer が1kHzの基準周波数に対し、3kHzから999kHzまで1kHzステップで出力できるような回路の例になっており今回と条件(基準周波数=1kHz)が同じなのでこの回路図の定数を使うことにします。
C2=0.068μF、R3=100kΩ、R4=5kΩ
基準周波数が1kHzじゃないときどうしたらいいかよくわからないのですが、今回は基準周波数としてGPS受信モジュール GE-612T の1kHz出力を使う予定なので、何も考えないことにしました。
手元にある部品と見比べ作るときは次の定数することにします。
C1=0.022μF、
C2=0.1μF、R3=100kΩ、R4=5.1kΩ
C2はちょっとまずいような気もしますが、ひとまずこれで作ってみることにします。
(0.068であれば0.1を三個使えば作れるわけですが)
Phase Comparator II Out をVCOの入力とするやり方の場合、基準周波数が入力されないときのVCOの出力はfminになります。実際に使った回路ではfminは736Hzになっていましたので500Hz~2kHzであればC1は0.033μFにすればよかったようです。
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で、作ってみたのですが結果だけ書くとVCOの出力は無事基準周波数にロックされました。
写真とか動作した証拠とか必要なんですが、それは次の記事にしたいと思います。
==> 「PLL(CD4046BE)とGPS受信モジュール(GE-612T)で作る高精度発振器 - PLLのテスト」
「PLLとGPS受信モジュールで作る高精度発振器 - PLLのテスト(2)」
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