ミリバル(交流電圧計)の周波数特性はゲルマニウムダイオードで改善する?
これまでオペアンプを利用したミリバルをいくつか作ってきたのですが、それなりのオペアンプを使っているにもかかわらず思いのほか周波数特性が伸びないということがありました。
いろいろ考えたのですが、整流(検波)用のダイオードが原因ではないかと思うようになりました。ふつうは全波整流にするのですが面倒なので半波整流で考えます。
ダイオードは電圧・電流の関係が線形ではないのでオペアンプを使って直線性を確保します。入力に電圧をかけるとそれに比例した電流が左側の10kΩに流れます。電圧がマイナスの場合この電流はそのまま上側の10kΩ、右側のダイオードを通ります。ダイオードの端子電圧と入力電圧の関係は線形でなくても10kΩの端子電圧つまり出力電圧は入力電圧に比例することになります。
ごくわずかにでも電流が流れ始めたときダイオードの両端の電圧は一挙に高くなります。つまりオペアンプの出力もそれに伴って大きく変化する必要があります。
これはオペアンプに大きなスルーレートが要求されることを意味します。つまり入力信号が10kHzだとしてもオペアンプに要求されるスルーレートは10kHzの正弦波などと比べるとはるかに大きな値のはずです。
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とすれば流れる電流が小さいときでも端子電圧があんまり高くならないようなダイオードを選べばミリバルの周波数特性は向上するはずです。
これについてはとても参考になる記事があります。
「探検 ゲルマラジオ - 検波用ダイオードを測定してみた 」
残念なのはこれはと思うものがどうやって手に入れたらいいかわからないことです。ただちょっとよさそうな1N60は手元にありました。そこで次のような組み合わせで実験してみました。
オペアンプ
周波数特性のいい2068DDとそうでもない072D
ダイオード
電圧・電流特性がおだやかな1N60と急峻な1N4148
1. 2068DD+1N4148
2. 2068DD+1N60
3. 072D+1N4148
4. 072D+1N60
結果はこうなりました。
グラフはすべて10kHzのときの電圧で正規化してあります。なぜ正規化する必要があるのか?、というのは次のテーマになります (^^;;
ダイオードが同じであればオペアンプが高速な方が周波数特性はよくなります。そしてオペアンプが同じであれば1N60を使った方が周波数特性がよくなっています(なお1. 2068DD+1N4148と4. 072D+1N60がほとんど同じ結果になっていますが、これは偶然でしょう)
どうやらダイオードの電圧電流特性が穏やかなダイオードを使った方が周波数特性がよくなるはずという推理はあっていたようです。
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関連
「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」
「一歩進んだ交流電圧計(ミリバル)の製作 - 1」
「交流電圧計(ミリバル+高周波電圧計+ベクトル電圧計)の周波数特性」
測定に使用したもの
「PIC16F1705のDAコンバータを使った正弦波発振器(発生器) - 改良版」
「PIC16F1705のオペアンプの周波数特性」
「22ビット(21.9bit)ADコンバータMCP3551の使い方 - MCP3553との分解能の比較」
その他
「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)」
参考
「ちょっと凝った交流電圧計(ミリバル)の作り方 - 1」
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「記事一覧(測定): セッピーナの趣味の天文計算」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算): セッピーナの趣味の天文計算」
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