続・ミリバル(交流電圧計)の周波数特性はゲルマニウムダイオードで改善する?
前記事では
ダイオードの非直線性が実質的なスルーレートを大きくしてしまいミリバルの周波数特性を悪化させる
との主張(?)を書いたのですが、もしこれが正しければ入力電圧(反転増幅回路の入力電流)が小さくなるともっと周波数特性が悪くなる可能性があると思います。
入力が小さくなればスルーレートもその分小さくなるので周波数特性はかえってよくなりそうですが、ダイオードの非直線性が原因のスルーレートの増加分は少しぐらい小さくなってもオペアンプのスルーレート限界をオーバーすると思うからです。
ダイオードの非直線性(によるスルーレートの増大)が問題なるのは電流が小さいときですから、数Vのレンジであれば影響を受ける部分はわずかですが、小信号になると信号全体が影響を受けます。
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今回使うのは前記事の回路の入力抵抗を100kΩにしたものです。
これで反転増幅回路の入力電流は1/10になります。
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10kHzのときの測定値で正規化してあるのは今回も同様です。入力抵抗が10kΩのときの測定値も小さいマークで入れてあります。
シリコンダイオード(1N4148)を使った場合は恐れていた通り周波数特性が悪化しています。一方ゲルマニウムダイオード(1N60)はかえってよくなっています。
おそらくゲルマニウムダイオードは非直線性がシリコンダイオードほどには強くないため、入力電流が1/10になることによるスルーレート低下の効果が出ているのではないかと思います。
つまり周波数特性はますますゲルマニウムダイオードの方がよくなっています。
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これだけだったら、ゲルマニウムダイオードを使えばいい、で終わりなのですが、ゲルマニウムダイオードには別の問題があります。
これまで電圧を正規化してプロットしていたのはシリコンとゲルマニウムで測定値が違うからです。
入力抵抗10kΩのとき
ご覧のとおりシリコンの方が0.02V(2%)くらい高く出ています。
入力抵抗100kΩのとき
こちらは0.01V(10%以上)違います。
どちらがもっともらしいかというとシリコンの方でしょう。10kHzあたりで見ると電圧がちょうど1/10になっているからという薄弱な理由ですが。
まだあんまりまじめに考えていないのですが、ゲルマニウムダイオードの場合逆方向電流が影響しているような気がします。
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関連
「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」
「一歩進んだ交流電圧計(ミリバル)の製作 - 1」
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測定に使用したもの
「PIC16F1705のDAコンバータを使った正弦波発振器(発生器) - 改良版」
「PIC16F1705のオペアンプの周波数特性」
「22ビット(21.9bit)ADコンバータMCP3551の使い方 - MCP3553との分解能の比較」
その他
「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)」
参考
「ちょっと凝った交流電圧計(ミリバル)の作り方 - 1」
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「記事一覧(測定): セッピーナの趣味の天文計算」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算): セッピーナの趣味の天文計算」
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