JJY秒信号のシンクロダイン検波による取得の試み
最初の構想としては以下のような構成を考えていました。
でも考えてみるとBPF(実際はクリスタルフィルターとコンパレータ)のところで“正確な”40kHzができあがっているわけですからアナログ乗算器によるプロダクト検波(シンクロダイン検波)の入力としてはこれが使えるはずです。
なお上の図で“分解能 数μs”と書いてあるのは誤解に基づくものです。実際はぎりぎりがんばっても数百μ秒がいいところでしょう。
「JJYの秒信号の送出方法についてNICTに聞いてみた」
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実際にやってみたらこんな波形が得られました。
ボイスレコーダーによる記録なので直流分はカットされてしまいます。GPSの1PPS出力のパルスは図の下のように記録されます。
図の上の方のシンクロダイン検波出力を見ると直流分が乗っているのがなんとなくわかりますので、(GoldWaveの)Spectrum Filterで40Hz以上をカットしてみました。
シンクロダイン検波出力に秒信号があることがわかります。
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そこでこんどはシンクロダイン検波出力をCRで作った簡単なLPFを通してコンパレーターに入力してみました(アナログ乗算器の出力には80kHzが(さらにオフセットなどが原因で40kHzも)含まれているのでこれらをカットするLPFは必須です)
本来JJYの出力もGPSの1PPSと同じように記録されるはずですが、ノイズがひどいためかそうなっていません。LOWに落ちるところでは散発的にHIGHになっており、HIGHになるべきところはバースト的な出力があります。
HIGHになるところタイミングをGPSと比較してみました。
JJYの秒針号はGPSの1PPS出力にわずかに遅れてHIGHになっているようです。上の図では1.5m秒くらいですが、何箇所か調べたところではだいたい1m秒から2m秒の間にありました。
おおたかどや山送信所から160kmほど離れているので0.53m秒程度の遅延があることを考えるとGPSの1PPS出力との差は1m秒前後ということでしょうか。
GPSが1m秒進んでいるのか、取得した秒信号が1m秒遅れているのかこれからはわかりませんが、おそらくLPFで遅延(波形のくずれ)が発生しているかコンパレーターの閾値に問題があるのではないかと思います。
もっとも現状のようにノイズが多い状態だとコンパレータの閾値を最大振幅の55%に設定するなんてできそうにありませんが....
ただ注意深く作って行けば±1m秒程度の不確かさで時刻を知るというのはできないことではなさそうです。
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時刻
「時刻標準について」
JJY
「JJYの報時信号の送出方法」
「JJYの受信法」
「JJYを受信したい(要旨)」
参考 「NICT 情報通信研究機構 - 電磁波計測研究所 - 時空標準研究室
- 日本標準時グループ 」
PLL
「高精度発振器をGPS受信モジュールとPLLで作る - はじめに」
アナログ乗算器
「四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 1」
アンテナ
「JJY受信機を作る - バーアンテナとその特性」
参考 「RFワールド - ラジオで学ぶ電子回路
- 第1部 ラジオのための基礎 第1章 ラジオの電波 」
クリスタルフィルタ
参考 「JA9CDE自作を楽しむホームページ - クリスタルフィルタ設計製作1 」
状態変数型フィルタ
「JJY受信機を作る - 状態変数型フィルタの周波数特性」
参考 「群馬大学 KobaLab@JP - 発振を利用したアナログフィルタの テスト・調整 」
JJY受信機
参考 「JR7CWK - 長波JJY受信機の制作」
補足
電波時計モジュール
「JJYを受信する(訂正あり)」
「電波時計モジュールを使ってみた(1)」
「電波時計モジュールを使ってみた(2)」
「電波時計モジュールが「使えない」理由」
「GPS受信モジュールあれこれ」
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