JJYの電界強度と受信機/電波時計の必要利得(増幅率)
これから私みたいにJJY受信機を自分で作ろうという方が参考にしていただくために書きました。ここに書かれている内容が正しいかどうかリンクしてある参考資料などをご覧になって確かめていただいた方が安全です。
電界強度
これについてはNICT 情報通信研究機構 からいろいろな資料が公開されています。電界強度は受信地はもちろん時間や季節によって変化するので
「情報通信研究機構 - 日本標準時グループ - 長波標準電波の電界強度予測値」
を利用するのがいいと思います。ちなみに2015年12月の午後9時の東京での おおたかどや山標準電波送信所の40kHz波 の電界強度は 6.063mv/m と予測されています。
「総務省告示 - 基幹放送局の開設の根本的基準第二条第十五号(1)の規定に基づく中波放送を行う基幹放送局の地上波電界強度 」
によれば東京都二十三区(練馬区を除く。) での電界強度を10mV/m以上 と定めています。それと比べるとそんなに弱い電波じゃないように思えるかもしれませんがじつはそうでもありません。
どうでもいいことなんですがどうして練馬区は三鷹市、武蔵野市と同じ扱いなんでしょう (@@)
それからできるだけ簡単にJJYを聞いて(?)みたい方向けにはこんなのがありました。ある意味すごいです。
「高エネルギー加速器研究機構 - 「ラジオを作ってみよう」係 」
「40kHzの世界 - 1.40kHzってなんだろう? 」
「40kHzの世界 - どうしたら聞けるの? 」
「資料 - 5.手軽に40KHzを聴こう 」
------
受信機の必要利得
これについては
「RFワールド - ラジオで学ぶ電子回路
- 第1部 ラジオのための基礎 第1章 ラジオの電波 」
を参考にさせていただきました。
例えば今回私が作ったようなバーアンテナを使った同調回路にオペアンプの反転増幅回路を接続するようなケース(=入力回路のインピーダンスが高い場合)ではオペアンプの入力電圧は次の式で表されるようです。
電圧 = 電界強度 * アンテナ実効長 * 同調回路のQ
電界強度は上の資料をもとに(控えめに)5mV/mと考えます。同調回路のQは80くらいでした。問題はアンテナ実効長ですが、上の資料によれば例としてあげてあるバーアンテナの1MHzでの実効長は0.0025mとなっています。そしてアンテナ実効長は波長に反比例するものらしいです。となると0.0001mということになります。これらを上の式に当てはめると
5mV/m * 0.0001m * 80 = 40μV
ということになります。これを例えば1Vまで増幅したいとすると
1 / 40e-6 = 25,000 ≒ 88dB
が必要な利得ということになります。
ところで私の場合は94dBで1Vが得られました。上の計算結果から電界強度は2.5mV/mであったことになります(1Vはノイズを含んだ値ですし、バーアンテナの形状を見ると私のものは実効長がもう少しありそうなので電界強度はもう少し弱いと思われます)
「情報通信研究機構 - 日本標準時グループ - 標準時・周波数標準のQ&A 」の中に
.....一般的に言って鉄筋の建物内では電波が大きく減衰されてしまうため、電波時計の受信は難しくなるケースが多くなります。電波時計の設置場所を工夫されることによって、受信が可能となると思われます(送信所の方向を向いた窓際に置くなど).....
という記述があります。私がアンテナを置いているのは“送信所の方向と反対を向いた窓際”(の外)なのを考えるとまあまあの電界強度なのではないかと自分を慰めています (^^)
なお上のQ&Aを見ると沖縄でも市販の電波時計でおおたかどや山標準電波送信所の40kHz波 を受信できることがあるようです(沖縄になると季節変動、時間変動がすごいことになるのでいつでも受信できるということはないと思います)
市販の電波時計のパンフレットにある受信範囲とNICTの電界強度資料を見比べると電波時計というのは0.5mV/m~1.0mV/mくらいであれば受信できるもののようです。
--------
前の記事 「JJY受信機を作る - 続・アンテナとプリアンプ」
次の記事 「JJY受信機を作る - すでに40kHzのキャリア(連続波)を検出できてるっぽい」
最初の記事 「JJY受信機で作る高精度発振器と時刻標準 - はじめに」
--------
関連
「JJY受信機/電波時計の製作記事を集めてみた」
(ググッて集めたJJY受信機電波時計の製作記事集)
「JJY受信機で作る高精度発振器と時刻標準 - はじめに」
時刻
「時刻標準について」
「GPS受信モジュールあれこれ」
標準電波JJYの仕様
「JJYの報時信号の送出方法」
「JJYの秒信号の送出方法についてNICTに聞いてみた」
「標準電波JJY - 変調波振幅の「最大100%、最小10%」の意味」
旧記事
「JJYの受信法」
「JJYを受信したい(要旨)」
参考
「NICT 情報通信研究機構 - 電磁波計測研究所 - 時空標準研究室
- 日本標準時グループ 」
JJYの運用
「標準電波・長波JJYが停波するとき」
参考
「NICT 情報通信研究機構 - 日本標準時グループ 標準電波運用状況」
長波JJYの性質(電界強度等)
「JJYの電界強度と受信機の必要利得(増幅率)」
「難航するJJY電界強度時間変化の測定」
「JJYの電界強度の時間変化に見る電離層の秘密」
「標準電波JJYの電界強度の時間変化を測ってみた(1)」
「標準電波JJYの電界強度の時間変化 - 電波時計をいつ合わせたらいいか」
「JJY搬送波の周波数をGPS/1PPSで測ってみた」
「JJYの40kHzの電波をボイスレコーダーに録音してみた」
「JJY受信機を作る - すでに40kHzのキャリア(連続波)を検出できてるっぽい」
「JJY受信機を作る - JJYの電波がつかめた!」
参考
「NICT 情報通信研究機構 - 日本標準時グループ - 標準電波に関するQ&A」
「NICT - 日本標準時グループ - 長波標準電波の電界強度予測値」
「NICT - 日本標準時グループ - 長波標準周波数(JJY)小金井本部 受信データ 」
「NICT - 日本標準時グループ - ライブラリー他 - Field Strength Pro Ver1.0」
アンテナ・プリアンプ
「JJY受信機を作る - バーアンテナとその特性」
「JJY受信機を作る - アンテナとプリアンプ」
参考
「RFワールド - ラジオで学ぶ電子回路
- 第1部 ラジオのための基礎 第1章 ラジオの電波 」
クリスタルフィルター
「クリスタルフィルターの効果を目と耳で確かめる - JJY受信機を作る」
「JJY受信用40kHzクリスタルフィルタのその後」
「JJY受信機を作る - 40kHz/60kHzクリスタルフィルターの功罪」
「JJY受信機/電波時計用クリスタルフィルターの設計」
参考
「JA9CDE自作を楽しむホームページ - クリスタルフィルタ設計製作1 」
状態変数型フィルタ
「JJY受信機を作る - 状態変数型フィルタの周波数特性」
参考
「群馬大学 KobaLab@JP - 発振を利用したアナログフィルタの テスト・調整 」
PLL・周波数標準
「高精度発振器をGPS受信モジュールとPLLで作る - はじめに」
「標準電波にVCTCXO・VM39S5GをPLLで同期してみた - 長波JJY受信機の製作」
「高精度発振器の作成に向けて - VCTCXO・VM39S5GをPLLでJJYにロックする」
「JJYに同期した高精度発振器用PLLの過渡特性」
プロダクト検波・シンクロダイン検波
「シンクロダイン検波によるJJY秒信号の取得 - GPSとの比較」
「JJY秒信号のシンクロダイン検波による取得の試み」
「平衡変調器で直流をボイスレコーダーに記録する - JJY・GPSの秒信号」
「JJY受信機(シンクロダイン検波)とGPSとの比較のその後と平衡変調器の作成」
「音で聴くJJY - プロダクト検波による復調」
「四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 1」
参考
「JR7CWK - 長波JJY受信機の制作」
電波時計モジュール
「JJYを受信する(訂正あり)」
「電波時計モジュールを使ってみた(1)」
「電波時計モジュールを使ってみた(2)」
「電波時計モジュールが「使えない」理由」
« JJY受信機を作る - 続・アンテナとプリアンプ | トップページ | オペアンプを使った整流回路(ミリバル・交流電圧計)の周波数特性が悪いことの理論的根拠(のはず) »
「時刻と時間」カテゴリの記事
- 星食観測ハンドブック2016とaitendoのGPS受信モジュールNEO6M-ANT-4P(2016.03.15)
- 毎日送信してほしいJJY(標準電波/電波時計)の試験電波(2016.01.26)
- GPS受信モジュールu-blox6/NEO6M-ANT-4Pと温度補償型水晶発振器VM39S5Gの周波数(位相)を比較してみた(2016.01.15)
- GPS受信モジュールNEO6M-ANT-4Pはまじおすすめ、現在在庫数 76(2016.01.13)
- (非公式)JJY(標準電波/電波時計)の呼び出し符号(コールサイン)送出方法(2016.01.13)
この記事へのコメントは終了しました。
« JJY受信機を作る - 続・アンテナとプリアンプ | トップページ | オペアンプを使った整流回路(ミリバル・交流電圧計)の周波数特性が悪いことの理論的根拠(のはず) »
コメント