1kHz~30MHzオシレータ LTC1799で作る簡単FMトランスミッタ
先日ほよほよ さんの「お風呂でWEBラジオを聴くには 」 の記事を拝見して、ついいきおいで
FMトランスミッタならLT1799で簡単に作れるんじゃないでしょうか。
とコメントしてしまいました。ほんとに作れるかどうか心配になってきたので実際に作ってみました(ステレオ版は「FMステレオトランスミッタをLTC1799とNE555と74HC4066で作る」 にあります)
タイトルにあるようにLT1799の最高発振周波数は30MHzです。FM放送の周波数帯ではないのですが、LT1799の波形は矩形波なので奇数倍の高調波は豊富に含まれているはずです。25MHzをちょっと超えるあたりからの周波数を使えばFMラジオで問題なく受信できるはずです(FMは変調したあと逓倍しても問題ありません)
じっさいには「秋月電子通商 - 1kHz~30MHzオシレータ LTC1799モジュール 」を使うのですが、まずふつうに単体のLTC1799を使うケースを考えます。

(うっかりVsetと書いてしまったのですが “SET”ピンというのが正しいです)
たったこれだけです。“簡単”なのは間違いないと思います(後記しますがほんとはプリエンファシスは必要だと思います)
LT1799はSETとV+の間に入れる抵抗の値で発振周波数をコントロールできますが、実際の動きはSETに流れ込む電流で周波数が決まると理解した方がわかりやすいと思います。
だから抵抗でなく電流源でも電圧源(+抵抗)でも自由に周波数をコントロールできます。
FMトランスミッタならLT1799で簡単に作れるんじゃないでしょうか。
とコメントしてしまいました。ほんとに作れるかどうか心配になってきたので実際に作ってみました(ステレオ版は「FMステレオトランスミッタをLTC1799とNE555と74HC4066で作る」 にあります)
タイトルにあるようにLT1799の最高発振周波数は30MHzです。FM放送の周波数帯ではないのですが、LT1799の波形は矩形波なので奇数倍の高調波は豊富に含まれているはずです。25MHzをちょっと超えるあたりからの周波数を使えばFMラジオで問題なく受信できるはずです(FMは変調したあと逓倍しても問題ありません)
じっさいには「秋月電子通商 - 1kHz~30MHzオシレータ LTC1799モジュール 」を使うのですが、まずふつうに単体のLTC1799を使うケースを考えます。

(うっかりVsetと書いてしまったのですが “SET”ピンというのが正しいです)
たったこれだけです。“簡単”なのは間違いないと思います(後記しますがほんとはプリエンファシスは必要だと思います)
LT1799はSETとV+の間に入れる抵抗の値で発振周波数をコントロールできますが、実際の動きはSETに流れ込む電流で周波数が決まると理解した方がわかりやすいと思います。
だから抵抗でなく電流源でも電圧源(+抵抗)でも自由に周波数をコントロールできます。
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まずR2は3倍したらFM放送の周波数帯になるように決めます3.3kΩから4kΩ弱ということになります。
R1の決め方は
「Linear Technology Corporation - 1kHz to 33MHz Resistor Set SOT-23 Oscillator 」
にありますのでちゃんとしたい方はこれをご覧いただければと思います。結果だけ書くとだいたいR2の1,000倍くらいの値にすればいいです。入力電圧が小さければR2を小さくします。1,000倍というのは数Vの入力電圧がある場合です。
C1は(R1の抵抗値が大きいので)たいていの場合なくてもだいじょうぶだと思いますが、安全のため適当に入れておきます。R1が大きな抵抗値になるのでC1は数μFもあれば十分なはずです。
LT1799の出力端子にリード線でもくっつけておけばあとはFMラジオで受信するだけです。
なおFM放送の場合送信時にプリエンファシスが行われています。音楽とか送信するんだったら必要でしょう。プリエンファシスと聞くとなんだか難しそうですがただのCR回路です。
「三重大学 ナノエレクトロニクス研究室 - プリエンファシス回路 」
にある通り作ればいいと思います。
放送全般については
「電子情報通信学会 知識の森
- 5群(通信・放送) 8編(放送・CATV) 2章 変調方式と伝送 」
が参考になると思います。
------
実際に作ったときは秋月さんの扱っているものを使ったのですが、これはちょっと問題があります。電流制限用の抵抗が入っているのです。
そこでこんな回路にしました。

R3がすでに基板上に配置されている抵抗で3.3kΩもあります。対策としてはR3をはずす(ショートしてしまう)、R3のLT1799側から線を引き出すの二つが考えられますが面倒なのでそのまま使ってみることにしました。
信号源にCMOS汎用ロジック出力を使ったときR2=500Ω、R1=500kΩで特に問題なく受信できました。R1はもっと小さくした方がよかったかもしれません。C1は省略しました。
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送信波形と受信波形
(バイナリカウンタの出力波形)
5kHz(下が送信波形、上が受信波形、以下同様)

10kHz
受信波形の振幅が小さくなっていますが、プリエンファシスなしでディエンファシスだけ機能しているからだと思います。

20kHz
これは本来はFM放送の帯域外の周波数です。LT1799もここまではサポートしていなかったような....
防災用の昔風の仕組みと思われるラジオで受信した結果です。最近のPLLとかDSPとかそういうものを使ったラジオだとFMステレオのパイロット信号(19kHz)より高いのでこういう結果にはならないような気がします。

40kHz
ついでにやってみました。かすかに受信できているようにも思えますが録音時のクロストークかもしれません。周波数から考えてラジオはステレオ放送と誤認してしまうかもしれません。<== ステレオ放送か否かはパイロット信号(19kHz)で判断しているようです。

次の記事 「FMステレオトランスミッタをLTC1799とNE555と74HC4066で作る」
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関連
「1kHz~30MHzオシレータ LTC1799で作る簡単FMトランスミッタ」 (この記事)
「FMステレオトランスミッタをLTC1799とNE555と74HC4066で作る」
「FMステレオトランスミッタ自作のチェックポイント - パイロット信号とか平衡変調とか」
「コルピッツ発振回路と可変容量ダイオードで作る周波数変調回路」
「続・LT1799で作るFMステレオトランスミッタ - 副搬送波による変調のテスト」
「コルピッツ+バラクタをFMステレオトランスミッタの周波数変調に使ういちばん簡単そうな方法」
「FMステレオトランスミッタの製作 - マトリックス回路は半分だけ作る」
参考
「電子情報通信学会 知識の森
- 5群(通信・放送) 8編(放送・CATV) 2章 変調方式と伝送 」
「三重大学 ナノエレクトロニクス研究室 - プリエンファシス回路 」
「CQ出版社 - RFワールド - 藤平 雄二 - ラジオで学ぶ電子回路 - 第4章 発振回路 」
「Linear Technology Corporation - 1kHz to 33MHz Resistor Set SOT-23 Oscillator 」
「記事一覧(測定): セッピーナの趣味の天文計算」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算): セッピーナの趣味の天文計算」
まずR2は3倍したらFM放送の周波数帯になるように決めます3.3kΩから4kΩ弱ということになります。
R1の決め方は
「Linear Technology Corporation - 1kHz to 33MHz Resistor Set SOT-23 Oscillator 」
にありますのでちゃんとしたい方はこれをご覧いただければと思います。結果だけ書くとだいたいR2の1,000倍くらいの値にすればいいです。入力電圧が小さければR2を小さくします。1,000倍というのは数Vの入力電圧がある場合です。
C1は(R1の抵抗値が大きいので)たいていの場合なくてもだいじょうぶだと思いますが、安全のため適当に入れておきます。R1が大きな抵抗値になるのでC1は数μFもあれば十分なはずです。
LT1799の出力端子にリード線でもくっつけておけばあとはFMラジオで受信するだけです。
なおFM放送の場合送信時にプリエンファシスが行われています。音楽とか送信するんだったら必要でしょう。プリエンファシスと聞くとなんだか難しそうですがただのCR回路です。
「三重大学 ナノエレクトロニクス研究室 - プリエンファシス回路 」
にある通り作ればいいと思います。
放送全般については
「電子情報通信学会 知識の森
- 5群(通信・放送) 8編(放送・CATV) 2章 変調方式と伝送 」
が参考になると思います。
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実際に作ったときは秋月さんの扱っているものを使ったのですが、これはちょっと問題があります。電流制限用の抵抗が入っているのです。
そこでこんな回路にしました。

R3がすでに基板上に配置されている抵抗で3.3kΩもあります。対策としてはR3をはずす(ショートしてしまう)、R3のLT1799側から線を引き出すの二つが考えられますが面倒なのでそのまま使ってみることにしました。
信号源にCMOS汎用ロジック出力を使ったときR2=500Ω、R1=500kΩで特に問題なく受信できました。R1はもっと小さくした方がよかったかもしれません。C1は省略しました。
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送信波形と受信波形
(バイナリカウンタの出力波形)
5kHz(下が送信波形、上が受信波形、以下同様)

10kHz
受信波形の振幅が小さくなっていますが、プリエンファシスなしでディエンファシスだけ機能しているからだと思います。

20kHz
これは本来はFM放送の帯域外の周波数です。LT1799もここまではサポートしていなかったような....
防災用の昔風の仕組みと思われるラジオで受信した結果です。最近のPLLとかDSPとかそういうものを使ったラジオだとFMステレオのパイロット信号(19kHz)より高いのでこういう結果にはならないような気がします。

40kHz
ついでにやってみました。かすかに受信できているようにも思えますが録音時のクロストークかもしれません。

次の記事 「FMステレオトランスミッタをLTC1799とNE555と74HC4066で作る」
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関連
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「コルピッツ発振回路と可変容量ダイオードで作る周波数変調回路」
「続・LT1799で作るFMステレオトランスミッタ - 副搬送波による変調のテスト」
「コルピッツ+バラクタをFMステレオトランスミッタの周波数変調に使ういちばん簡単そうな方法」
「FMステレオトランスミッタの製作 - マトリックス回路は半分だけ作る」
参考
「電子情報通信学会 知識の森
- 5群(通信・放送) 8編(放送・CATV) 2章 変調方式と伝送 」
「三重大学 ナノエレクトロニクス研究室 - プリエンファシス回路 」
「CQ出版社 - RFワールド - 藤平 雄二 - ラジオで学ぶ電子回路 - 第4章 発振回路 」
「Linear Technology Corporation - 1kHz to 33MHz Resistor Set SOT-23 Oscillator 」
「記事一覧(測定): セッピーナの趣味の天文計算」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算): セッピーナの趣味の天文計算」
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Vsetに5kHz程度の音をかけて(変調)、25MHzの高調波をラジオで聞く、ということですね!
すぐにできてしまうところがすごいです。私には回路自体が思いつかないのでマネするしかありません^^;
投稿: ほよほよ | 2016年1月20日 (水) 20時47分
はい、今回は面倒でバイナリカウンタの出力で済ませましたが、音楽でも音声でも問題ないと思います。
SET端子に流れこむ電流で周波数が決まると覚えておけば応用がきくと思います。
すでに1か月近く経ってしまいましたから“すぐに”ではないのですが、このままダメ元でステレオトランスミッタを作ってみようかと思い始めました (^^)
投稿: セッピーナ | 2016年1月20日 (水) 21時24分