FMステレオトランスミッタの製作 - マトリックス回路は半分だけ作る
「1kHz~30MHzオシレータ LTC1799で作る簡単FMトランスミッタ」 から始めたFMトランスミッタですが、いつの間にかコルピッツ発振回路を使ったFMステレオトランスミッタになってきました。
現在こんな状況です。
ブレッドボード上で動かすと動作がけっこう微妙(敏感?)なところもあり、そろそろ基板にちゃんとはんだ付けした方がいいと思うのですが、回路的にヘンなんじゃないかと気になるところもまた多くそのままになっています。
じつはこれまで38kHz/19kHzはGPS受信モジュール(NEO-6M)の出力を使っていました。面倒くさくなって今回からLMC555を使った発振器の出力を使うことにしました。
受信機側では検波出力に含まれる19kHzのパイロット信号を基準にして復調を行うので少しくらい(数十Hz~百数十Hz?、どこまでだいじょうぶかは受信機によると思います)違っていてもかまわないのですが、限度というものはあるわけで、さすがにLMC555ではつらいです。こうなってくるとどっちが面倒くさいのかよくわかりません。
おそらくコンデンサの温度特性が悪いのが原因だと思います。そういえばPETとPPSを組み合わせて温度係数をゼロにする構想がありました (^^;;
「フイルムコンデンサ・静電容量の温度特性 - PPS(ポリフェニレンスルフィド)とPET(ポリエステル)」
「メタライズドポリエステルフィルムコンデンサの温度係数を測ってみた」
実用になるとは思えないのですがFMステレオトランスミッタで残すところはプリエンファシス回路とマトリックス回路になります。
FMステレオトランスミッタでマトリックス回路というのは搬送波を変調するL+R信号と副搬送波を変調するL-R信号を作るところをいいます。4回路入りのオペアンプがあれ済む話ですが、L+Rは作るのをやめて変調回路をちょっと手直ししました。
L+R、パイロット信号、副搬送波を重ね合わせて変調しようとしていますから、L、R、パイロット信号、副搬送波の四つを重ね合わせていいはずです。
ちょっと話が飛びますが、この回路はコルピッツ発振回路の二つのコンデンサのうち一つをそのまま可変容量ダイオードで置き換えています。これはちょっとまずいような気がしてきました。本来のコンデンサはちゃんと入れて可変容量ダイオードはそれより小さいものを並列に入れるか大きいものを直列に入れる方法の方がいいような気がします。
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今回はプリエンファシス回路がないだけで、仕組み的には全部そろっています。ほんとうにステレオトランスミッタになっているかどうか確かめてみました。
入力波形
Lチャンネルに2.38kHzの矩形波、Rチャンネルにそれを1/4分周した0.59kHzを入力します。
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ここでL+RとL-Rの波形を示さなければならないのですが、それがありません。
L+Rは上に書いたように作っていないからです。L-Rはあるのですが、こういう波形でした。
アナログスイッチの入り口で信号を記録したためスイッチング変調されたような波形になってしまいました。でも2.38kHzの矩形波と0.59kHzの矩形波が重なっているようすはなんとなくわかっていただけると思います。
実験結果を記事に書くということであればちゃんとL+Rを作った方がよかったです。
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ラジオで受信した波形
ノイズがのっていますし、歪もあるようですが左右の分離はきちんとできているようです。
プリエンファシスなしでディエンファシスを行っているのでその影響も大きいと思います。ディエンファシスのみだとこういう波形はなまって見えるはずです。
Lチャンネル(緑の線)の0.6kHzあたりにはピークらしきものはありません。つまりRチャンネルはほとんど入ってきていないようです。同じくRチャンネル(赤の線)の2.4kHzあたりにもピークはありません(ここは4倍高調波が出るところですが、信号は矩形波なので奇数次の高調波しかなく、ここのピークがあればLチャンネルの混入の可能性を考える必要があります。)
L、RからいったんL+R、L-Rを作り、そのあと(L+R)+(L-R)でLを求め、(L+R)-(L-R)でRを求めるという複雑なことをしているわけですが、それでもL、Rはちゃんと分離しています。
つまり、原理的にはFMステレオ放送と同じ送信波が作れたと言っていいと思います。
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上の波形からわかるように現時点では音質はあんまりよくありません。いわゆるオーディオには興味がない私が音質を甘く採点してもL+Rの方の音を聞くと10点満点の6点、L-Rの方(の音をイヤホンで左右別々に聞くと)は3点か4点というところでしょうか。またモードをステレオにしたときノイズが目立ちます。
1. 素子の動作点の設定が適切でないために発生した歪や雑音
2. インピーダンスの高いところを引っ張りまわしたため拾ってしまった雑音
などがすぐに思い当たる点です。音質の改善についてはもう少し頑張れそうです。
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関連
「1kHz~30MHzオシレータ LTC1799で作る簡単FMトランスミッタ」
「FMステレオトランスミッタをLTC1799とNE555と74HC4066で作る」
「FMステレオトランスミッタ自作のチェックポイント - パイロット信号とか平衡変調とか」 (この記事)
「コルピッツ発振回路と可変容量ダイオードで作る周波数変調回路」
「続・LT1799で作るFMステレオトランスミッタ - 副搬送波による変調のテスト」
「コルピッツ+バラクタをFMステレオトランスミッタの周波数変調に使ういちばん簡単そうな方法」
「FMステレオトランスミッタの製作 - マトリックス回路は半分だけ作る」
参考
「電子情報通信学会 知識の森
- 5群(通信・放送) 8編(放送・CATV) 2章 変調方式と伝送 」
「三重大学 ナノエレクトロニクス研究室 - プリエンファシス回路 」
「CQ出版社 - RFワールド - 藤平 雄二 - ラジオで学ぶ電子回路 - 第4章 発振回路 」
「LT1799 - Linear Technology Corporation - 1kHz to 33MHz Resistor Set SOT-23 Oscillator 」
「記事一覧(測定): セッピーナの趣味の天文計算」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算): セッピーナの趣味の天文計算」
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