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2016年1月21日 (木)

FMステレオトランスミッタをLTC1799とNE555と74HC4066で作る

昨日記事にした1kHz~30MHzオシレータ LTC1799で作る簡単FMトランスミッタ なんですが、試しに音声・音楽を入力してみたらちゃんと聞ける音で電波が飛んでいました。歪はほとんど感じられず、(ちょっと誇張がありますが)あれ間違って放送局のFM放送を受信してしまったのかな、と思うほどでした(ただ若干ホワイトノイズがのっていました。これの原因はまだ調べていません)

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さてほよほよ さんのお風呂でWEBラジオを聴くにはを拝見して始めたFMトランスミッタ作りですが、現状では“勝てない”“負けている”ところがあります。ほよほよ さんのはステレオですが私のはモノラルなのです。

そこで今度はステレオ版を作ろうと思います。今回もできるだけ簡単にという方針です。部品点数を減らし、使う部品もどこにでも売っているものにします。主要部品はタイトルにあるように1kHz~30MHzオシレータ LTC1799、タイマーIC・NE555、アナログスイッチ 74HC4066で他に(タイトルには抜けていますが)1/2分周器、オペアンプ・コンパレータと言ったところです。

FMステレオ放送の(送信機の)原理は例えば

  電子情報通信学会 知識の森
    -
5群(通信・放送) 8編(放送・CATV) 2章 変調方式と伝送

を参考にしていただければと思います。要点は

0. 左右チャンネルの信号をプリエンファシスする。
1. 左右チャンネルの信号の和を作る。
2. 左右チャンネルの信号の差を作り、それで38kHzの副搬送波を平衡変調する。
3. 38kHzの副搬送波を分周して19kHzを作る。
4. 搬送波(76MHz~90MHz)を1.と2.と3.の和で周波数変調する。

となります(今回は25.33MHz~30MHzの搬送波を変調し、その高調波をラジオで聞きます)

左右のチャンネルの信号をそのまま使わず和と差にして使うのは、ステレオ受信ができないラジオで聞いたとき違和感がないようにしてあげようという心遣いです。差は信号レベルが小さくなりそうに思えますので、もしそうなら実利もありそうです。

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まともに動作するかどうかわからないものを最初からきっちり作るとうまくいかなかったときのショックがおおきいので少しずつ試しながら作っていくことにします。

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上のFMステレオの作り方から考えると受信機はおそらく19kHzの信号(パイロット信号)の有無でステレオか否かを判断しているものと思われます。

そこでまずステレオとして認識してもらえるかどうかを次の回路で確かめてみました。
Cm6019k
ここでS1をオン・オフします。S1をオンにしたときラジオのステレオインジケータが表示され、オフにしたとき表示されないはずです。実際にやってみたらそのとおりの動きを示しました。

実際は19kHzは38kHzをバイナリカウンター(Dフリップフロップ)で分周したもので矩形波なのでRとCからなる簡単なLPFを通して信号源として使いました。矩形波には偶数次の高調波は含まれないのでこれだけでもかなり正弦波に近くなるはずです。

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次にできるだけ簡単な方法でステレオになっているかどうかを確かめます。

1. 正弦波で38kHzの副搬送波を平衡変調する。
2. 38kHzの副搬送波を分周して19kHzを作る
3. 搬送波(25.33MHz~30MHz)を1.と2.の和で周波数変調する。

こうすると左右チャンネルの和=0、左右チャンネルの差=正弦波ということになります。

復調した結果は

  左=左右チャンネルの和+左右チャンネルの差 = もとの正弦波
  右=左右チャンネルの和-左右チャンネルの差 = 逆位相の正弦波

となるはずです。

160118_0186_stereoprot_2

1/2分周はバイナリーカウンタ(74HC393あるいは74HC4040)を一段だけ使います。

最後の“和で周波数変調する”ところは簡略化してありますが、前記事に書いたようにR1>>R2、R3>>R2なので問題ないはずです。秋月のモジュールの3.3kΩがなんか余計でこれがなければもっとやりやすいです。LTC1799のSETピンの入力抵抗は2kΩくらいあるようですし“安全面”を考えても必要ないようです。可変抵抗だけで済むようにとの配慮でしょうが...

平衡変調器(U2 MULT)のところは平衡変調器で直流をボイスレコーダーに記録する - JJY・GPSの秒信号にあるものを使います。出力側はほんとはBPFにする必要があります。
もしアナログ乗算器(四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 1)を使うのであれば38kHzの入力側にLPFあるいはBPFを入れて正弦波にします(この場合出力側のフィルタは理屈の上では不要)

試しにやってみた(ものそラジオで聞いてみた)結果

160118_0186_stereoprot

テスト的な雑な作りなので動きがちょっとあやしいですが、確かに左右が逆の位相になっておりひとまずステレオでの変調に相当する動きであることが確認できました。

波形が三角波っぽいのは変調波の動きに周波数がついていけていないのだと思います。LT1799で“実用品”を作るのは難しそうです。
この記事やこれから書く記事は、FMステレオトランスミッタはこういう仕組みで作れるはずだ、というという趣旨で書いたものと受け取ってください。


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関連

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  「
FMステレオトランスミッタをLTC1799とNE555と74HC4066で作る
  「
FMステレオトランスミッタ自作のチェックポイント - パイロット信号とか平衡変調とか
  コルピッツ発振回路と可変容量ダイオードで作る周波数変調回路
  続・LT1799で作るFMステレオトランスミッタ - 副搬送波による変調のテスト

参考

  電子情報通信学会 知識の森
    -
5群(通信・放送) 8編(放送・CATV) 2章 変調方式と伝送
  三重大学 ナノエレクトロニクス研究室  - プリエンファシス回路
  CQ出版社 - RFワールド - 藤平 雄二 - ラジオで学ぶ電子回路  - 第4章 発振回路
  「Linear Technology Corporation  - 1kHz to 33MHz  Resistor Set SOT-23 Oscillator


  「記事一覧(測定): セッピーナの趣味の天文計算
  「
過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算): セッピーナの趣味の天文計算

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コメント

もう一瞬でステレオ化できるなんて!すごすぎます!
リンク先の内容説明だけでも私には難解です^^;
バーアンテナを買って初歩のラジオからやり始めようかと思っています^^。

これどうしようもなくはまっています。やはりLTC1799を使うというのはムリがなのかもしれません。
ぜんぜん動かないならすぐにあきらめるのですが、なんとなく動いているように見えることもあるので未練が....
明日半日くらいやってダメだったらきれいさっぱりあきらめるつもりです。
ただFMステレオトランスミッタも手の届かないものではないとわかったのが収穫でしょうか (^^;;
じつは私も先日ラジオデパートでAM用のバーアンテナを買って来ました (^^)

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