GPS受信モジュールu-blox6/NEO6M-ANT-4Pと温度補償型水晶発振器VM39S5Gの周波数(位相)を比較してみた
このテーマの最終的な目標はVM39S5Gの周波数やその変動を測ることではなくGPS受信モジュールのTIMEPULSE出力周波数の時間変動を検出することです。今回は測定方法に問題がないか調べ改善点を明らかにするための実験です。
この記事に書いた方法は間違っているわけではないのですが、実際に作るには難しいところがあります。こちらの方をお勧めします。納得できる結果が得られています。
「GPS受信モジュールNEO-6MとVCTCXO・VM39S5Gの周波数比較・改良版」
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これまで“超高精度VCTCXO”VM39S5Gの周波数をGPS受信モジュールの1PPSを利用して測るというのは何度も記事に書きました。
これはタイムゲートの時間を長くすると分解能が上がるだけではなく測定の確度(不確かさ)も向上していくというとてもありがたい方法なのですが、タイムゲートを長くしていくと短期的な周期変動がわからなくなるという欠点があります。つまり1秒周期で±0.1ppmの規則的な変動があったとしても見かけ上±0.001ppmの不確かさというような結果が出てしまいます。
そこで今回は位相差を調べるという方法をとります。これは短時間でのわずかな周波数変動をとらえることができます。
使用した回路は次のようなものです。GPS受信モジュールの出力を基準にしてベクトル電圧計でVM39S5Gの出力電圧を測るという方法になります。
これは本来JJYの電界強度の測定を目的としたもので、今回の目的だったらXORを使う方法の方が簡単で正確だったのではないかと反省しています。そういえば上の図で片側にだけインバータが入っているのが気になる場合は両方にXORを入れればいいと思います。
GPS受信モジュールNEO-6M(使っているのは「GPS受信モジュールNEO6M-ANT-4Pはまじおすすめ、でももう在庫切れ (^^;;」に書いたものです)に80kHzを出力させこれから90度位相の違った40kHzを作ります。これでVM39S5Gの出力を分周した40kHzの位相の変化を測ります。位相の変化からVM39S5GのNEO-6Mに対する周波数の偏差を求めることができます。
この記事に書いた方法は間違っているわけではないのですが、実際に作るには難しいところがあります。こちらの方をお勧めします。納得できる結果が得られています。
「GPS受信モジュールNEO-6MとVCTCXO・VM39S5Gの周波数比較・改良版」
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これまで“超高精度VCTCXO”VM39S5Gの周波数をGPS受信モジュールの1PPSを利用して測るというのは何度も記事に書きました。
これはタイムゲートの時間を長くすると分解能が上がるだけではなく測定の確度(不確かさ)も向上していくというとてもありがたい方法なのですが、タイムゲートを長くしていくと短期的な周期変動がわからなくなるという欠点があります。つまり1秒周期で±0.1ppmの規則的な変動があったとしても見かけ上±0.001ppmの不確かさというような結果が出てしまいます。
そこで今回は位相差を調べるという方法をとります。これは短時間でのわずかな周波数変動をとらえることができます。
使用した回路は次のようなものです。GPS受信モジュールの出力を基準にしてベクトル電圧計でVM39S5Gの出力電圧を測るという方法になります。
これは本来JJYの電界強度の測定を目的としたもので、今回の目的だったらXORを使う方法の方が簡単で正確だったのではないかと反省しています。そういえば上の図で片側にだけインバータが入っているのが気になる場合は両方にXORを入れればいいと思います。
GPS受信モジュールNEO-6M(使っているのは「GPS受信モジュールNEO6M-ANT-4Pはまじおすすめ、でももう在庫切れ (^^;;」に書いたものです)に80kHzを出力させこれから90度位相の違った40kHzを作ります。これでVM39S5Gの出力を分周した40kHzの位相の変化を測ります。位相の変化からVM39S5GのNEO-6Mに対する周波数の偏差を求めることができます。
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電圧の測定結果
出力電圧が300秒から500秒の周期で変動していますので、NEO-6M(から作った40kHz)とVM39S5G(から作った40kHz)は0.003Hz~0.002Hzの差があることがわかります。
これからatan2(V,V+π/2)で位相差、√(V^2+(V+π/2)^2)で電圧の絶対値を求めます。
ほんとは電圧の絶対値は一定のはずですが細かく変動していてその変動が位相差に連動していることがわかります。この件は後回しにしてここでは位相差の方に注目します。
周波数の差があるので位相差もそれに伴って変化します。つまり周波数が同じであれば位相差は一定値になります(位相差がゼロになるわけではないです)
位相差の変化率(位相差を時間で微分したものを2πで割ったもの)からNEO-6MとVM39S5Gの出力周波数の差を求めてみました。
(NEO-6Mの出力周波数が比較的長い時間で見れば一定しているという前提で)VM39S5Gの周波数が室温に連動して変動していることがわかります。
室温とVM39S5Gの周波数の関係は線形であると仮定しその係数を求めて周波数変化を補正してみました。
細かな周波数変動があるように見えますが、これは最初に書いた電圧絶対値の時間変動と関係しているようです。
周波数の変動が電圧の変動と正反対の動きをしているのがわかります。これはおそらく測定方法の問題だと思われます。現時点でこれより小さい動きはわかりませんのでこの結果から今言えることは
VM39S5G、NEO-6Mのいずれか(あるいは両方)に1秒~100秒程度の周期の周波数変動があるとしてもその大きさは0.0001Hzのオーダー(0.0004Hzとして0.01ppm)より小さいと思われる
ということだけでしょうか。
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電圧絶対値の変動を起こすような測定方法の問題点を考えてみます。
1. アナログ乗算器の非直線性がある。
2. アナログ乗算器のオフセットがある。
3. 入力電圧の位相差が正確に90度になっていない。
4. 高調波が影響した。
このいずれかが原因なのか、それともこれ以外に原因があるのか検証中ですが、今考えると入力側のLPFはCRで作った簡単なものでかえって入れない方がよかったのではないかという気がしてきました。そうすると位相差に比例した出力が得られるはずです。だったら上に書いたようにXORでよかったんじゃないかということになるわけです (^^;;
なおVM39S5Gから作った出力の周波数の温度係数は0.003Hz/℃でした。これはVM39S5Gの出力12.8MHzに対しては≒1Hz/℃ということになります。以前測った結果(0.44Hz/℃)と違っていますがこれはおそらく室温が違うためではないかと思います。ふつうに考えると温度が25℃くらいで温度係数が最小になるように作ってあるはずです。今回は室温が若干低めなので温度係数が高くなっているのではないでしょうか。
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「PLL(CD4046BE)とGPS受信モジュール(GE-612T)で作る高精度発振器 - PLLのテスト」
「PLLとGPS受信モジュールで作る高精度発振器 - PLLのテスト(2)」
「PLL(フェイズロックループ)の特性 - ジッターを測定してみた」
「PLL(CD4046BE)の使い方(2) - ジッターの低減」
「GPS受信モジュールGE-612Tからの1kHz出力 - u-blox/u-centerを使う」
「高精度10MHzの出力ができそうなGPS受信モジュール」
「2MHzが(10MHzも!)出力できたGPS受信モジュールGE-612T(u-blox6/LEA-6)」
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「意外と不安定かも?GPS受信モジュールのTIMEPULSE出力周波数」
「超高精度・温度補償型水晶発振器VM39S5GをPLLのVCOとして使う」
「超高精度VCTCXO・VM39S5GをPLLでGPSに同期させてみた」
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「GPS受信モジュールあれこれ」
「記事一覧(測定): セッピーナの趣味の天文計算」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算): セッピーナの趣味の天文計算」
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ほんとは電圧の絶対値は一定のはずですが細かく変動していてその変動が位相差に連動していることがわかります。この件は後回しにしてここでは位相差の方に注目します。
周波数の差があるので位相差もそれに伴って変化します。つまり周波数が同じであれば位相差は一定値になります(位相差がゼロになるわけではないです)
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室温とVM39S5Gの周波数の関係は線形であると仮定しその係数を求めて周波数変化を補正してみました。
細かな周波数変動があるように見えますが、これは最初に書いた電圧絶対値の時間変動と関係しているようです。
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1. アナログ乗算器の非直線性がある。
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なおVM39S5Gから作った出力の周波数の温度係数は0.003Hz/℃でした。これはVM39S5Gの出力12.8MHzに対しては≒1Hz/℃ということになります。以前測った結果(0.44Hz/℃)と違っていますがこれはおそらく室温が違うためではないかと思います。ふつうに考えると温度が25℃くらいで温度係数が最小になるように作ってあるはずです。今回は室温が若干低めなので温度係数が高くなっているのではないでしょうか。
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