PLLにはまる - VCTCXO・VM39S5GをGPS受信モジュールNEO6M-ANT-4Pにロックする
PLLというのは正確な基準周波数源にVCO(LC発振器とかVCXO)を同期させるためのものだと思うのですが、今基準周波数源に使おうと思っているGPS受信モジュールのタイムパルス出力が厳密には正確とは言い難いという問題があります(「意外と不安定かも?GPS受信モジュールのTIMEPULSE出力周波数」)
基準周波数源としてはもう一つJJY(標準電波=電波時計)があるのですが、これも(周波数が正確だとしても)別の問題があります。
ひとまずループフィルターの時定数を大きくするという対応をとってみることにしました。
(0.1μFは1μFのつもりで間違って入れていたものです)
GPS受信モジュールu-blox6/NEO-6M(NEO6M-ANT-4P) の80kHz出力を8分周したものを基準にVCTCXO・VM39S5Gの12.8MHzを1280分周したものを同期させます。周波数の測定は12.8MHz/320と80kHz/2の40kHzを「GPS受信モジュールNEO-6MとVCTCXO・VM39S5Gの周波数比較・改良版」に書いた方法で比較しています(実際に測定しているのは位相の差です)
(周波数はカウンタでも測っているのですが、それでもゲートタイム4秒でも得られる分解能は0.0008Hzでしかないです。VCO・VM39S5Gは基板ごとポリウレタンのシートでぐるぐる巻きにしてあり、温度は室温を測っているので温度はVCOの温度を示すものではありません)
室温が少々変化していますが、少なくとも周波数の平均は安定しているようです。ドリフトらしきものは感じられません。
平均は安定しているとしてもこのグラフだけ見ると周波数の差に揺らぎがありちゃんとロックできていないようにも見えますが「意外と不安定かも?GPS受信モジュールのTIMEPULSE出力周波数」 に書いたようにもともと基準周波数源(GPS受信モジュールのTIMEPULSE出力)に揺らぎがあるので、VCTCXOの周波数は安定していてTIMEPULSE出力の揺らぎを検出できたというようにも受け取れる結果です。
VCO(VCTCXO・VM39S5G)の入力電圧を見てみます。VCOの周波数は入力電圧の1Vの変化で100Hz前後変化します。
温度が上昇することによる周波数の変化をVCOの入力電圧の低下で補正していることがわかりますが、VCOの入力電圧自体かなり変動しています。このグラフはVCOの入力電圧の変化による周波数の変動が左側の目盛りとだいたいあうように作ってあります。VCOの出力周波数もかんり変動しているようにも見受けられます。
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ループフィルターの時定数をもっと大きくしてみました。
最初の例より大きな温度の変化がありますが、その影響はほとんどないように見えますが、やっぱり基準周波数源とVCOの出力の周波数の差が変動しています。
VCOの入力電圧を見てみます。
温度によるドリフトに対する部分を除いて考えるとVCOの入力電圧は最初の例ほどには変化していません。ここにある周波数差の変動はほとんどGPS受信モジュールのTIMEPULSE出力の変動を示しているのかもしれません。A
ところでVCOの入力電圧をよく見ると周期的にヒゲみたいなのが発生しています。1分強くらいの周期のようです。ひょっとしたらPLLが発振しているのかも.... ?
もっともPLLが(どういう条件で不安定になるか理屈ではわかっていても)不安定になったときどのような挙動を示すのかよくわかっていません。まずR2を大きくし、C2 を小さくする方向で再度動作を確かめてみたいと思います。PFDは1V/2πrad.、VCOを100Hz/Vとしているのですが、どちらか間違っているのかもしれません。
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「高精度発振器をGPS受信モジュールとPLLで作る - はじめに」
参考
小宮浩 「高周波PLL回路のしくみと設計法」 CQ出版社
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「GPS受信モジュールu-blox6/NEO-6Mと温度補償型水晶発振器VM39S5Gの周波数(位相)を比較してみた」
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