« 東方最大離角の日、久しぶりに見えた水星 | トップページ | 難航するJJY電界強度時間変化の測定 »

2016年1月 4日 (月)

デジカメのこんにゃく現象の写し方・起こし方

いわゆ“こんにゃく現象”というものがあります(ローリングシャッター現象ともいいます)

Imgp11642500

バスの窓からPENTAX Q7で撮ったものです。支柱やポールが大きく左に傾いてしまっています。車は斬新なデザインに変形してしまっています。タイヤ、ホイールは楕円形になってしまっておりこれでちゃんと走れるか心配になります。

バスの窓からPENTAX Q7で写真を撮ると必ずこうなるかというとそうでもありません。
Imgp11741600

-------

1枚目の写真と2枚目の写真で何が違うかというとシャッタースピードが違います。1枚目は1/2500秒、2枚目は1/1600秒です。

動いているものを(あるいは動いているところから)撮ろうとすると手ぶれが起きないようにシャッタースピードを上げたくなるのですが、そうするとPENTAX Q7の場合は鉛直に立っているものが傾き、タイヤがこんにゃくみたいに変形してしまいます。

1/2500秒と1/1600秒で何が違うかというのは仕様あるいは取扱説明書に書いてあります。PENTAX Q7の場合(純正レンズを使うと)1/2000秒まではレンズシャッター(機械式シャッター)が使われるのですが、それを越えると電子シャッターが使われるようになるのです。レンズシャッター(やフォーカルプレーンシャッター)が使われるとシャッターの開いている時間に露光した光がいったんセンサー上の電荷に変換されそれを後から読み取るのですが、電子シャッターの場合光によってセンサー上に発生した電荷を順次読み取っていくので画像の上と下では撮影された時刻が違ってしまうわけです。

最初の写真では時間的に新しいものほど右側に写っていますのでセンサーの走査が下から上に(画像上で見ると上から下へ)行われていることがわかります。

------

こんにゃく現象を起こすためには電子シャッターを使うことが必須の条件ということになります。

スマホのカメラや電子シャッターしかないカメラであれば何も考えなくてもいいのですが、上のように電子シャッターと機械式のシャッターを切り替えているものは電子シャッターを使う(電子シャッターが使われるような)設定にしておくことが必要です。例えばPENTAX Q7であれは露出モードをシャッター優先にし1/2000を超えるシャッタースピードにします。

(そういうのがあるのかどうかわかりませんが)機械式シャッターしかないカメラの場合はどうするかというと動画にします。動画だったら無条件に電子シャッターになるはずです。

動画でこんにゃく現象を写すときは注意しなければならないことがあります。それは高速のシャッタースピードを使うことです。ふつうの1/30秒の露出でもこんにゃく現象は起きるのですが、手ぶれ写真と同じになるので鮮明なこんにゃく現象が写せなくなります。

---------

こんにゃく現象を写すためには電子シャッターを使う必要があるのですが、電子シャッターを使えば無条件にこんにゃく現象が起きるわけでもありません
Imgp11585000

カメラを縦に構えるとセンサーの走査の方向が画像の移動方向と同じになり上の写真のようにポールが傾いたような写真は撮ることができなくなります。ただ今度は左と右で撮影する時間が違ってくるわけですから、(この写真にはありませんが)タイヤなどは楕円形になるはずです。つまり移動方向と走査方向が同じでも変形しないわけではないです。

ただ回転運動をしている場合カメラをどの向きにしても移動方向と走査方向が違ってくるところがあるはずなのでそれとわかるこんにゃく現象が起きるでしょう

-------

こんにゃく現象はセンサーの走査に時間がかかることが原因ですからもし高速で走査を行うカメラであればそんなに目立たなくなるはずです。ですからこんにゃく現象を起こしやすいカメラというものがあります。センサーの走査速度は製品仕様あるいは取扱説明書にはないようなのでこんにゃく現象が起きやすいカメラを選ぶためには走査速度を実測する必要があります。ちなみに上で使っているPENTAX Q7は(撮影条件にもよると思いますが)27msec程度でした。センサーの走査速度の測り方はいろいろあるのですが、

  デジカメのセンサー走査時間を測る方法

に書いた蛍光灯などを使う方法が手軽なのではないかと思います。これはこんにゃく現象が起こせる(写せる)カメラの選び方でもあります
この方法でカメラ屋さんの店頭などでも簡単に確かめられます。SDカードが入っていないときは店員さんにお願いしてみます。

------

ところで上の写真はセンサーの走査が下から上(画像上は上から下)に行われているのでポールは左に傾いているわけですが、もしセンサーの走査が上から下(画像上は下から上)に行われればポールは右に傾くことになります。実際そういうカメラはあるようです。そういうカメラの例が

  星は空の彼方、月よりも遠く - いつかは星食観測(その3) シャッターの特性、記録時刻等

にあります。なおこの記事にあるカメラはセンサーの走査が私のPENTAX Q7よりかなり速いです。そういえばPENTAX QもPENTAX Q7より速かったです(逆じゃないです。無印のQの方が後継機の後継機より速いです。じゃあ後継機のPENTAX Q10はどうだろうということになるのですが、おそらくQ7と同じというような気がします。

なおカメラを上下逆さまにすると(走査の方向が逆になるので)PENTAX Q7でも右に傾くポールを撮ることはできます。
Imgp11672500

-------

関連

過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算): セッピーナの趣味の天文計算

デジカメのセンサー走査時間を測る方法
動画撮影機能の仕様を実測した - PENTAX Q7の場合

« 東方最大離角の日、久しぶりに見えた水星 | トップページ | 難航するJJY電界強度時間変化の測定 »

カメラとレンズ」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: デジカメのこんにゃく現象の写し方・起こし方:

« 東方最大離角の日、久しぶりに見えた水星 | トップページ | 難航するJJY電界強度時間変化の測定 »

フォト

サイト内検索

  • 記事を探されるんでしたらこれがいちばん早くて確実です。私も使ってます (^^;; 検索窓が表示されるのにちょっと時間がかかるのはどうにかしてほしいです。

新着記事

リンク元別アクセス数

  • (アクセス元≒リンク元、原則PCのみ・ドメイン別、サイト内等除く)

人気記事ランキング

  • (原則PCのみ、直近2週間)
無料ブログはココログ