電気二重層コンデンサができている? - 水の電気抵抗とリアクタンス
「水の電気伝導度(電気抵抗)を測る - 水の純度の推定」 のときは発振器とDMMだけで水の電気抵抗を測っているのですが、今回は「セル定数に依存しない水の電気伝導率(導電率、抵抗率)の測定方法 - ジョーンズセルをヒントに」 に書いた回路で測ってみました。
ベクトル電圧計になっているので今回はリアクタンス分の測定もできます。ちょっと間があいてしまったのは回路に問題があったためです。ジョーンズセル(風)のときは抵抗値が100kΩ近くとかなり大きかったのですが、今回は数kΩとなるため電圧設定・バッファとして入れてあるオペアンプから十分出力電流がとれず負荷を接続すると出力電圧が下がってしまうという現象が発生しました。
LCRメーターの自動平衡ブリッジでは高出力のオペアンプを使ったのですが、今回そこまでしたくないのでエミッタフォロワーを入れるだけにしました。
単電源で作ったので余計なことを考えなくてすみます。
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測定結果
測定条件
水温 12.9℃、印可電圧 0.675V、1.000kHz
電極は「水の電気伝導度(電気抵抗)を測る - 水の純度の推定」 参照
左右に1kΩ、1kΩ+0.1μF、2.7kΩというのはキャリブレーションのため抵抗(+コンデンサ)を測定したものです。
結果は2.1kΩ+0.27μFとなっています。2.1kΩの方についてはジョンソンセル(風)の測定結果と突き合わせてセル定数の決定に使うわけですが、今回注目するのはリアクタンス分(キャパシタンス分)の方です。
参考までに書いておくと2月15日の時点で求まっているこの電極のセル定数から計算するとこのときの水道水の電気伝導率は32mS/m(320μS/cm)です。「水道水の電気伝導率(抵抗率)を測る - これまでのまとめ」
電極の対向面積は0.084cm^2でしかなく、電極間距離は1.2㎜です。空気中だと0.1pFもないはずです。水の比誘電率はけっこう大きく80くらいあるのですが、それでも数pFというところでしょう。それなのに測定結果は0.27μFもあります。
おそらく電気二重層ができておりそのためキャパシタンスが5桁くらい増えているのだと思います。これから実質的な電極間距離を計算すると数十nmということになります。調べてみるとイオン半径がこのくらいのオーダーです。
<== 何も考えず水の比誘電率を使って計算してしまったのですが、こういう場合は真空の比誘電率を使うべきなのでしょうか。よくわかりません。
このあと電気伝導度のできるだけ精密な測定する方向でいたのですが、周波数特性やこのコンデンサの充放電特性を測ってみたくなっています。
この静電容量と電極間距離の関係については
「水道水の電気伝導度(電気抵抗)と静電容量(キャパシタンス) - 電気二重層について」
にあります。
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「水の電気伝導度(電気抵抗)を測る - 水の純度の推定」
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「東京都水道局水質検査結果から水道水の電気伝導率(電気抵抗率)を予想する」
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「水の電気抵抗(電気伝導度)を測るときの周波数、電圧、波形、温度、電極」
「氷点 - 摂氏0度の作り方」
「水の三重点セルの作り方を考えてみた」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
参考
JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門)
JIS K 0130 電気伝導率測定方法通則
JIS K 0102 工場排水試験方法
JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水
「第十六改正 日本薬局方 」 (2.51 導電率測定法、常水、精製水、注射用水、等)
「日本分析機器工業会 - 分析の原理
- 電気化学測定の原理と応用 - 電気伝導率計の原理と応用 」
「産業技術総合研究所 - (技術資料)電気伝導率標準液に関する調査研究 」
<== 他の資料には書いてないようなことが書いてあり参考になります。
「【化学補助教材】 放送大学:濱田研究室 - 第14章 エネルギー変換の化学 - 3.電気分解」
「HORIBA - LAQUA - やさしいpH・水質の話 」
「栗田工業 - 水処理教室 」
「日本冷凍空調学会 - 用語集 - 超純水」
「八光電機 - 熱の実験室 」 <== おもしろいです! 氷の電気伝導度とかあります。
「雑学 H2O - 水質の化学」 <== 興味深い記事があります。
「東所沢 2-31-12 - 溶液の電気特性 <== 実測値があります。
- 1章:溶液の電気特性測定用電極の製作
- 2章:A、B、C電極の水道水テストとD、E電極の試作
- 3章:食塩水の電気特性 」
「厚生労働省 - 水質基準項目と基準値(51項目) 」
「東京都水道局 - 水質検査結果」
「川崎市上下水道局 - 水質検査結果 」 (工業用水の電気伝導率の測定結果があります)
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