塩化カリウム標準溶液(導電率標準液)の作り方 - 電気抵抗率計・電気伝導率計の校正
「続・セル定数に依存しない水の電気伝導率(導電率、抵抗率)の測定方法」に書いたようなことをなぜやっているかというと導電率計の校正に使う“塩化カリウム標準溶液”みたいなものはとても作れない(調製できない)と思ったからです。
でも調べてみるとそういうもの(それに相当するもの?)はネットショッピングで購入可能なようです。
“導電率標準液”、“導電率計標準液”、“電気伝導度標準液”、“EC標準液”あたりでググるといっぱいヒットしました。
どれか買ってみようかとただいま物色中です。
それから標準液とは別に塩化カリウム(水溶液)がほしい場合は、pH計の基準電極(銀-塩化銀電極)に使うかなり濃いやつ__3.3mol/Lとか4mol/L__が試薬の塩化カリウムよりずっと容易に入手できるようです。まだ買ったことはありませんが“比較電極補充液”とか“比較電極内部液“みたいな名前でamazonなんかでも売っています。ご参考まで。
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参考までに“塩化カリウム標準溶液”をどうやって作るかをいくつかの資料をもとにまとめてみました。これを読むと市販の標準液のお値段がとってもリーズナブルと思えてくると思います。
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材料
水
JIS K 0557 に規定する水 A2,A3又はA4。
試薬の調製には,電気伝導率 0.2 mS/m (25℃)以下のものを用いる(JIS K 0130)
JIS K 0557 に規定する A2 又は A3 の水。ただし,電気伝導率0.2mS/m(2μS/cm)(25℃)以下のもの。調製時に20±2℃に調節して用いる。(JIS K 0102)
補足
A2、A3、A4は水の純度を示す規格です。電気伝導率については三つとも同じで0.1mS/m(1μS/cm)以下とされています。
どちらもわざわざ電気伝導率 0.2 mS/m (25℃)以下のもの と書いてありますが、大気中の二酸化炭素を吸収して電気伝導率が変化していないことを確かめろというような意味ではないかと思います。
新たに煮沸して冷却した蒸留水又は導電率2マイクロ・cm-1以下の水(「第十六改正 日本薬局方」)
塩化カリウム
JIS K 8121 に規定する塩化カリウム(電気伝導率測定用)を,めのう乳鉢で粉末にし,500℃で4時間加熱し,デシケーター中で放冷したもの(JIS K 0130)
導電率測定用塩化カリウムを粉末とし、500~600℃で4時間乾燥する。(「第十六改正 日本薬局方 」)
(電気伝導率測定用の)塩化カリウムの品質規格値の純度は、特級の試薬と異なる。特級は99.5%(質量分率)以上であるのに対し、電気伝導率測定用は500℃で乾燥後、99.%(質量分率)以上としている。(「産業技術総合研究所 - (技術資料)電気伝導率標準液に関する調査研究 」)
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調製
塩化カリウム標準液の調製は,次による。なお,塩化カリウムの質量の測定は,空気の浮力補正を行う。
a) 1mol/kg
塩化カリウム標準液 JIS K 8121 に規定する塩化カリウム(電気伝導率測定用)74.552gを正確にはかりとり,水1000.00 gに溶かす。
b) 0.1mol/kg
塩化カリウム標準液 JIS K 8121 に規定する塩化カリウム(電気伝導率測定用)7.4552gを正確にはかりとり,水1000.00gに溶かす。
c) 0.01mol/kg
塩化カリウム標準液 JIS K 8121 に規定する塩化カリウム(電気伝導率測定用)0.74552gを正確にはかりとり,水1000.00gに溶かす。(JIS K 0130)
3) 塩化カリウム標準液(A) 2)の塩化カリウム74.246gをはかりとり,少量の水に溶かして全量フラスコ1000mLに移し入れ,水を標線まで加える。
4) 塩化カリウム標準液(B) 2)の塩化カリウム7.437gをはかりとり,少量の水に溶かして全量フラスコ1000mLに移し入れ,水を標線まで加える。
5) 塩化カリウム標準液(C) 2)の塩化カリウム0.744 gをはかりとり,少量の水に溶かして全量フラスコ1000mLに移し入れ,水を標線まで加える。
6) 塩化カリウム標準液(D) 塩化カリウム標準液(C)100mLを全量フラスコ1000mLにとり,水を標線まで加える。(JIS K 0102)
「第十六改正 日本薬局方 」による調製方法は省略します。20℃における電気伝導率を示している点がJISと異なります。
補足
規格によって使用する塩化カリウムの量が違っていますが、これは水との混ぜ方が違うからでしょう。
0.01mol/kg溶液の25℃での電気伝導率は
140.823±0.042mS/m(拡張不確かさ) (JIS K 0130)
140.9mS/m (JIS K 0102)
とされています。市販の導電率標準液もこれに相当するものが多いです。水道水より一桁くらい電気伝導率が大きく、このあたりのものが扱いやすそうです。
保存
1 mol/kg∼0.01 mol/kgの塩化カリウム標準液は,ポリエチレン瓶又はほうけい酸ガラス瓶に密栓をして保存する。(JIS K 0130)
電気伝導率の測定方法
今回は省略します。気が向いたら追記しておきます。
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参考
JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門)
JIS K 0130 電気伝導率測定方法通則
JIS K 0102 工場排水試験方法
JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水
「第十六改正 日本薬局方 」 (2.51 導電率測定法、常水、精製水、注射用水、等)
「日本分析機器工業会 - 分析の原理
- 電気化学測定の原理と応用 - 電気伝導率計の原理と応用 」
「産業技術総合研究所 - (技術資料)電気伝導率標準液に関する調査研究 」
<== 他の資料には書いてないようなことが書いてあり参考になります。
「【化学補助教材】 放送大学:濱田研究室 - 第14章 エネルギー変換の化学 - 3.電気分解」
「HORIBA - LAQUA - やさしいpH・水質の話 」
「栗田工業 - 水処理教室 」
「日本冷凍空調学会 - 用語集 - 超純水」
「八光電機 - 熱の実験室 」 <== おもしろいです! 氷の電気伝導度とかあります。
「雑学 H2O - 水質の化学」 <== 興味深い記事があります。
「東所沢 2-31-12 - 溶液の電気特性 <== 実測値があります。
- 1章:溶液の電気特性測定用電極の製作
- 2章:A、B、C電極の水道水テストとD、E電極の試作
- 3章:食塩水の電気特性 」
「厚生労働省 - 水質基準項目と基準値(51項目) 」
「東京都水道局 - 水質検査結果」
「川崎市上下水道局 - 水質検査結果 」 (工業用水の電気伝導率の測定結果があります)
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