水道水の電気伝導率（抵抗率）を測る - これまでのまとめ

手探りで始めた水の導電率の測定ですが、なんとなくわかってきたこともあるので、現時点の視点でこれまでの実験結果をまとめてみました。

実験方法は二つあります。一つは“パイプ-01”と表記したものでこれは

　　「続・セル定数に依存しない水の電気伝導率（導電率、抵抗率）の測定方法」

などに使ったものです。けっこう面倒なのですが絶対的な導電率（抵抗率）を測ることができます。実際に使ったのはこういうものです。



内径6mmのパイプの中に固定した電極と動かすことのできる電極が入っています。電極間距離Lの変化に対する電気抵抗の変化から単位長さあたりの抵抗値を求めます。これによって水の電気伝導度を直接測ることができます。実際にやってみた感じでは L > 20mmであればLと電気抵抗は線形の関係になります。

電極はピンヘッダ（一辺0.7㎜、長さ12mmくらい）3本分を使っていますが、接続してあるのは真ん中のピンだけです。水道水の場合抵抗値の変化は1cmあたり10kΩ強になっており比較的測りやすい抵抗値になります。ただパイプが細すぎて、水の出し入れが手間だとか水温が測れないとかちょっと使いにくいところがあります。

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二つ目はCell-01と表記したものです。これは単に水に入れて電極間の抵抗を測るだけのもので

　　「水の電気伝導度（電気抵抗）を測る - 水の純度の推定」

に写真があります。導電率（抵抗率）を直接測定することはできないのですが、同じ測定対象（水）をパイプの方と同時に測ってセル定数を求めることにより電気伝導度（抵抗値）を導電率（抵抗率）に換算することができるようになります。こちらは水道水の場合2kΩ前後の抵抗値を示します。

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A. 「セル定数を求める - 水道水の電気伝導率（抵抗率）を測る」

わかりやすいように表にしてみました。



電気伝導率が32mS/mで、これをもとに計算したセル定数が50/mでした。

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B. 上の測定対象（水）をそのままとっておき翌朝測定した結果です。



電気伝導率が33mS/mとほんのちょっと大きくなっています。一方Cell-01の方の電気抵抗はまったく変わっていません。（測定誤差を考えると真剣に考えてもあんまり意味がなさそうですが）昨日のはパイプの方の水温の推定値が高すぎたような気もします（Cell-01の水温は測温抵抗体による実測値です）
じつは水温を推定するのが難しいので水温が室温と同じになるように放っておいたのです。水を放置すれば空気中の二酸化炭素が溶け込んで電気伝導率が上がるということになりますが、水道水はすでにたっぷり溶け込んでいるはずなのであんまり関係ないような....

ひとまずこの実験結果を信じて以下セル定数は52/mとして考えます。

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C 　「電気二重層コンデンサができている？ - 水の電気抵抗とリアクタンス」



電気伝導率は 32mS/m とだいたい同じ結果が出ています。この32mS/m前後の値というのは水道水の電気伝導率としてはちょっと高いような気もするのですが、東京の水道水はこんなものかもしれません（これは東京の水道水が汚れているということではなくミネラルが豊富に含まれていると考えたいと思います）

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D 　「続・セル定数に依存しない水の電気伝導率（導電率、抵抗率）の測定方法」



電気伝導率は29mS/mとちょっと低めですが、これまでと整合性がないというほどではないです。気になるのは水道水の電気伝導率の時間変化、日変化はどの程度のものかということです。このときはCell-01による測定を行っておらず残念です。

E 　「セル定数に依存しない水の電気伝導率（導電率、抵抗率）の測定方法 - ジョーンズセルをヒントに」



これは電気伝導率が154mS/mと異常に高くなっています。これは測定対象に流れた電流を測るために使っているオペアンプの帰還抵抗が高すぎて飽和してしまったためのようです。印可電圧自体も高すぎる__電気分解が起きて電流が流れる__のかもしれません。

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F 　「水道水の電気伝導度（電気抵抗）の温度特性を測ってみたけれど．．．．」



電気伝導率が 26mS/m、28mS/m と（水道水の電気伝導率のされるものよりは高めですが）最近の実験結果より低めに出ています。ただ一割くらいの違いなわけで、この頃実験条件のコントロールが十分にできていなかったことを考えるとまあまともな結果と言えると思います。ひょっとしたらこの日は実際に水道水の電気伝導率が下がっていたなんてことも考えられますし、まだ現在の実験結果がぜったい正しいと言えるわけでもありません。


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　　「水道水に同種の金属を入れても電池ができる不思議な話」
　　「水の電気抵抗（電気伝導度）を測るときの周波数、電圧、波形、温度、電極」

　　「氷点 - 摂氏0度の作り方」
　　「水の三重点セルの作り方を考えてみた」

　　「過去記事の一覧（測定、電子工作、天文計算）」

参考

　　JIS K 0213　分析化学用語（電気化学部門）
　　JIS K 0130　電気伝導率測定方法通則
　　JIS K 0102　工場排水試験方法
　　JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水

　　「第十六改正　日本薬局方 」　（2.51 導電率測定法、常水、精製水、注射用水、等）

　　「日本分析機器工業会 - 分析の原理
　　　　- 電気化学測定の原理と応用 - 電気伝導率計の原理と応用 」

　　「産業技術総合研究所 - (技術資料)電気伝導率標準液に関する調査研究 」
　　　　　　<==　他の資料には書いてないようなことが書いてあり参考になります。

 「【化学補助教材】　放送大学：濱田研究室 - 第１４章　エネルギー変換の化学 - 3．電気分解」

　　「HORIBA - LAQUA - やさしいpH・水質の話 」
　　「栗田工業 - 水処理教室 」

　　「日本冷凍空調学会 - 用語集 - 超純水」

　　「八光電機 - 熱の実験室 」　　<== おもしろいです！ 氷の電気伝導度とかあります。

　　「雑学 H2O - 水質の化学」　　<== 興味深い記事があります。

　　「東所沢 2-31-12 - 溶液の電気特性　　<==　実測値があります。
　　　　　- 1章：溶液の電気特性測定用電極の製作
　　　　　- ２章：A、B、C電極の水道水テストとD、E電極の試作
　　　　  - ３章：食塩水の電気特性 」


　　「厚生労働省  - 水質基準項目と基準値（51項目） 」
　　「東京都水道局  - 水質検査結果」
　　「川崎市上下水道局 - 水質検査結果 」　（工業用水の電気伝導率の測定結果があります）