セル定数を求める - 水道水の電気伝導率(抵抗率)を測る
ふつうの(?)の電極を使った(水道)水の電気抵抗(電気伝導度)の測定、ジョーンズセル(もどき)による電気抵抗率(導電率)の測定ができるようになりましたので今回は電極のセル定数を求めてみました。
今回の実験はすべて印可電圧0.675Vrms(1.000kHz正弦波)によるものです(電圧はもう少しだけ下げた方がいいかもしれません)
これをコップにためた水道水に入れて電気抵抗を測ります。
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グラフの左右はキャリブレーションのための抵抗(+コンデンサ)のインピーダンスの測定です。水道水の抵抗は2.01kΩから1.97Ωへ徐々に下がっています。
2回目
こちらは1.86kΩから1.85kΩに下がっています。
どうして電気抵抗が下がっていくのかというと水温が上がっているためでしょう。
水温は1回目は14.6℃から14.8℃くらい、2回目は16.6℃から16.8℃くらいへ上昇しています。
両方を見比べ 1.86kΩ @16.7℃ つまり 0.54mS @16.7℃ として話を進めます。
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次にジョーンズセルもどきの結果です。
実験に使ったセルのイメージ
(実際はLはもっと内側で測っています。「水道水の電気伝導率(抵抗率)を測る - これまでのまとめ」に写真とLの測り方があります。)
実験結果
電極間距離を変えながら測るのは2回繰り返しています。前後および途中でキャリブレーションのため抵抗(+コンデンサー)のインピーダンスを測っています。
ただキャパシタンスが正確に測れていません。理由やどう対応するかは煩雑になるので省略します。興味がある(気になる)方は
「キャパシタンスメータの原理と作り方 - 実戦的ベクトル電圧計の数学」
「キャパシタンスメータの原理と作り方 - 続・実戦的ベクトル電圧計の数学」
をご覧いただければと思います。補正すればいいのですが補正に必要なデータを取得していません。じっくり検討すれば今回のデータだけからでも補正は可能と思われますがそれをやるより再度実験した方が簡単なような気がします。
キャパシタンスは測れていないのですが純抵抗分は問題なく測定できています。
電極間距離と抵抗の関係
これも1回目と2回目で結果がちょっと違います。水温が違うためだと思いますがこれについては水温を測っていません(パイプが細く水の量も少ないので測温抵抗体が使えないのです)
ここでは20℃と考えます。根拠はパイプが細く熱容量が小さいので室温に近くなっているだろうというだけです。
こちらは電気伝導率・電気抵抗率を求めることができます。容器の半径が3mmであることから
ρ = 1.22 * 10 * ( 0.3*0.3*3.14) = 3.45kΩ/cm @20℃
κ = 1 / ρ = 29.0mS/m
ひとまず29mS/m @20℃ として進めます。
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電気伝導率はふつう25℃でのものですので換算する必要があります。実際に温度係数を測ってみるのがいちばんいいのですが、ここでは0.01mol/kgの塩化カリウム溶液の温度係数を利用します。
このグラフから測定の対象とした水道水の25℃での導電率は32ms/mとなります。
ふつう水道水の電気伝導率10~20mS/mとされているのでちょっと大きいように思えます。
「東京都水道局水質検査結果から水道水の電気伝導率(電気抵抗率)を予想する」
に書いたように我が家に給水されている水道水の導電率は20mS/mを下回ることはないと思われるので10~20mS/mにこだわる必要はないと思いますがそれでも大き目に見えます。
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一方に電極で測定した方の値は同様に 0.64mS @25℃ となります。
これらから今回使った電極のセル定数は 32 / 0.64 = 50/m ということになります。
この電極で市販されている141mS/mの導電率標準液を測定すると2.8mSつまり0.35kΩとなるはずです。
なおJISではセル定数と電極の材質から測定できる電気伝導率の範囲を示しているのですが、セル定数が52/mであれば141mS/mの標準液や水道水の電気伝導度を測るのは問題なさそうです。どちらかというと今の回路でこの抵抗値0.35kΩが測れるかどうかの方が問題になりそうです。
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「水の電気伝導度(電気抵抗)を測る - 水の純度の推定」
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関連
「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
温度、気圧をはじめいろんな物理量の測定方法について
「水の電気伝導度(電気抵抗)を測る - 水の純度の推定」
「水道水の電気伝導度(電気抵抗)の温度特性を測ってみたけれど....」
「セル定数に依存しない水の電気伝導率(導電率、抵抗率)の測定方法 - ジョーンズセルをヒントに」
「続・セル定数に依存しない水の電気伝導率(導電率、抵抗率)の測定方法」
「東京都水道局水質検査結果から水道水の電気伝導率(電気抵抗率)を予想する」
「塩化カリウム標準溶液(導電率標準液)の作り方 - 電気抵抗率計・電気伝導率計の校正」
「電気二重層コンデンサができている? - 水の電気抵抗とリアクタンス」
「セル定数を求める - 水道水の電気伝導率(抵抗率)を測る」
「水道水の電気伝導率(抵抗率)を測る - これまでのまとめ」
「氷点 - 摂氏0度の作り方」
「水の三重点セルの作り方を考えてみた」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
参考
JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門)
JIS K 0130 電気伝導率測定方法通則
JIS K 0102 工場排水試験方法
「第十六改正 日本薬局方 」 (2.51 導電率測定法、常水、精製水、注射用水、等)
「日本分析機器工業会 - 分析の原理
- 電気化学測定の原理と応用 - 電気伝導率計の原理と応用 」
「産業技術総合研究所 - (技術資料)電気伝導率標準液に関する調査研究 」
<== 他の資料には書いてないようなことが書いてあり参考になります。
「HORIBA - LAQUA - やさしいpH・水質の話 」
「栗田工業 - 水処理教室 」
「日本冷凍空調学会 - 用語集 - 超純水」
「八光電機 - 熱の実験室 」 <== おもしろいです!
「雑学 H2O - 水質の化学」 <== 興味深い記事があります。
「東所沢 2-31-12 - 溶液の電気特性 <== 実測値があります。
- 1章:溶液の電気特性測定用電極の製作
- 2章:A、B、C電極の水道水テストとD、E電極の試作
- 3章:食塩水の電気特性 」
「厚生労働省 - 水質基準項目と基準値(51項目) 」
「東京都水道局 - 水質検査結果」
「川崎市上下水道局 - 水質検査結果 」 (工業用水の電気伝導率の測定結果があります)
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