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2016年2月 6日 (土)

水道水の電気伝導度(電気抵抗)を測る - 水の純度の推定

まず背景(?)から書きます。

以前氷点の作り方を氷点 - 摂氏0度の作り方 に書きました。注意すべきことがいろいろあるのですが、慣れてくると一定の温度にぴたりと納まってきます。もちろんそれが氷点=0℃であるとして、温度計の校正をやったりするわけですが、それがほんとうに0℃なのかと考えると疑問がわいてきます。

水の凝固点は沸点と違って気圧の影響をあまり受けないので氷点ができあがれば0.00℃くらいは達成できたと考えてもいいのでしょうが、問題は氷点を作るのに“水”ではなく水道水を使っていることです。そこで蒸留水(精製水)を使って氷点を作って水道水とどの程度違うのか調べてみようと思っています。
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水道水がなぜダメかというと不純物が入っているから凝固点降下が起きるからということなんでしょう。蒸留水を使っても実験の途中で不純物が入ってしまったら意味はないわけで純度が保たれているが実験中に確かめたいのですが、水道水も蒸留水も見た目は変わらないですし、成分分析みたいなことをやる気にもなれません。

凝固点降下は不揮発性物質が水に溶け込んだときに起きるようです。

  厚生労働省  - 水質基準項目と基準値(51項目)

で水道水にたくさん含まれていそうな凝固点降下の原因となりそうな物質を探してみると次のようなものがあります。
  
ナトリウム及びその化合物 ナトリウムの量に関して、200mg/L以下
塩化物イオン 200mg/L以下
カルシウム、マグネシウム等(硬度) 300mg/L以下

水質基準項目は他にもたくさんあって名前を聞くだけで怖くなるような物質も多いのですが、そういうのは基準値が小さいのでモル数で決まる凝固点降下の原因にはなりえないと思われます。

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上の表にある物質はいずれも水の中にあればイオン化して水の電気伝導度を大きくする方向に働くはずです。となると氷点を作るために使う“水”の“品質管理”は電気伝導度を測ることでできそうです。

そこで電極を作ってみました。
Img_20160205_2208101000

右側のを加工して作りました。名前を忘れました。秋月で以前2.54㎜ピッチのピンヘッダの近くに売っていたものを買いました。

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電極(?)の太さは0.7㎜くらいで長さは12mmくらい、これが1.8mm離れて対向しています。

水処理装置のメーカの資料を見ると水道水の電気伝導度を 100ms/cm 程度としたものが多いので、これをもとに上の電極で測ったときの電気抵抗を計算してみます。

   1 / ( 100 * 0.07 * 1.2 / 0.18 )  ≒  0.02

ということで0.02MΩくらいになりそうです。

もっともこれは電極がぴったりおさまる容器を使ったときの値ですから、この電極を水の入った容器に入れて電気抵抗を測ればもっと小さい電気抵抗を示すはずです。

ということで水道水をコップに入れて測ってみました。
Photo_2

電圧計の読みは0.282Vでした。

  0.282/((0.934-0.282)/5.04) =2.2

となり、2.2kΩ(0.46mS)でした。上の計算結果と1桁違いますが、今回のような作り方では電極周囲の水を通しても電気は流れているわけでこういうものなんでしょう。

なおコップのどこに電極をおいても電気抵抗の変化はほとんどありませんでした。

その後この電極のセル定数を求めた上でこのときの電気伝導度を計算したら 28mS/m(280μS/cm)となりました(水道水の電気伝導率(抵抗率)を測る - これまでのまとめ

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いろいろググったり本を読んだりして情報を仕入れました。

この記事の最後にあるリンク先を参考にしたのが多いのですが、この中では特に産業技術総合研究所 - (技術資料)電気伝導率標準液に関する調査研究 」 に考えさせられるところが多いです。同じようなことを考えている方は要必読です。

・電極

白金黒でコーティングした白金電極、とか書いてありました。
化学(電気化学)の実験って面白そうですがお金がかかりそうで二の足を踏みます。
白金黒電極の作り方

ステンレスとかチタン、ニッケル、黒鉛とかも使われようです。要は水に溶けるようなものはダメなわけですが、超純水あたりになるとステンレスもやばいらしいです。

今回のは秋月のところにある資料を見ると金メッキしたニッケルみたいなんですがどうなんでしょう?

・校正

所定の濃度で作った塩化カリウムの溶液を使うそうです。どういう濃度でやるかはJISとか電気化学の教科書にあります。

この塩化カリウムというのが問題で試薬特級でも不十分(純度が足りない)ようです。


・セル定数

上の実験だと水道水の電気伝導度が100μs/cmとすると、それに対し460μsが得られているわけですから、測定結果に0.2/cmをかければ測定対象の電気伝導度が求められることになります。この0.2/cmのことをセル定数といいます。測定装置(セル)に特有な値になります。
実際にセル定数を決めるときは上に書いた塩化カリウム標準溶液を使います。

塩化カリウム標準溶液を使わずにセル定数を決める方法を模索中です。

・温度の影響

水の電気伝導度は温度の影響が大きく、しかもその大きさも溶質に左右されるのでやっかいそうです。2%/℃あたりが目安のようです。これは実際に測ってみたいと思います。
ふつう電気伝導度と言ったら25℃の値を基準にするようです。

・測定電圧/周波数

これはJISでも日本薬局方でも規定していないようです。
意外と周波数、電圧の影響を受けないのかもしれません。
私は1kHz近辺、1Vrms程度でやってみるつもりですが、依存性は確認してみたいと思います。

<== インピーダンスの純抵抗分というような方向で考えればいいような。

・純水の電気抵抗

オーセンテック他いろんなサイトには0.055μS/cmなどと書いてあります。けっこう低い電気伝導度、というかもう絶縁体に近いですが、逆に考えるとこれより低い電気伝導度の測定はできなくていいわけです。

・今回の測定方法

こんな回路を考えています。
Opamp_2

分解能を追究するようなものじゃないし、これで十分なんじゃないでしょうか。

心配なのは 海水(10,000μs/cmくらい)の方です。これだとオペアンプが持ちそうにありません。
入力電圧を下げるか、あるいは定電流源+四線式とか。
サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源(バイラテラル回路) だったら交流の定電流源にも使えそうです。

次の記事 水道水の電気伝導度(電気抵抗)の温度特性を測ってみたけれど....

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  「
過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)

参考

  JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門)

  JIS K 0130 電気伝導率測定方法通則
  JIS K 0102 工場排水試験方法
  
JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水

  「第十六改正 日本薬局方 」 (2.51 導電率測定法、常水、精製水、注射用水、等)

  「
日本分析機器工業会 - 分析の原理
    -
電気化学測定の原理と応用 - 電気伝導率計の原理と応用

  「
産業技術総合研究所 - (技術資料)電気伝導率標準液に関する調査研究
      <== 他の資料には書いてないようなことが書いてあり参考になります。

  「【化学補助教材】 放送大学:濱田研究室 - 第14章 エネルギー変換の化学 - 3.電気分解

  「HORIBA - LAQUA - やさしいpH・水質の話
  「栗田工業 - 水処理教室

  「日本冷凍空調学会 - 用語集 - 超純水

  「
八光電機 - 熱の実験室 」  <== おもしろいです! 氷の電気伝導度とかあります。

  「雑学 H2O - 水質の化学」  <== 興味深い記事があります。

  「松尾勉・室松昭彦・井ロ薫 - 電導度計の製作と実験

  「
東所沢 2-31-12 - 溶液の電気特性  <== 実測値があります。
     -
1章:溶液の電気特性測定用電極の製作
     -
2章:A、B、C電極の水道水テストとD、E電極の試作
      -
3章:食塩水の電気特性
      
印加電圧が高すぎるような....

  「
厚生労働省  - 水質基準項目と基準値(51項目)
  「
東京都水道局  - 水質検査結果
  「川崎市上下水道局 - 水質検査結果 」 (工業用水の電気伝導率の測定結果があります)

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コメント

スーパーで給水サービスをやってるところが近くにあれば、そこの水を使って凍らせればいいんじゃないでしょうか?そういう機会はたいてい逆浸透膜を使っているはずなのでかなり純度が高いと思います。

情報ありがとうございます m(._.)m
そういうのが利用できればありがたいですね。
そういう水が手に入ったとしてどの程度の純度なのかどうやって確かめるかというのがこの記事の趣旨になります。

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