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2016年2月23日 (火)

GPS受信モジュール1PPS出力タイミング変動の高精度測定の方法を考えてみた

GPS受信モジュールについては

 1PPSの時間間隔(の平均値)の不確かさは測定時間(積分時間)が長くなるほど小さくなる。

ということはわかっています。これはいくら調べても実験しても疑う材料は見当たりません。

問題は

 A. 1PPSはほんとうに毎正秒に出力されているのか?
 B. 1PPSの揺らぎはどれほどのものなのか?

の2点です。A.ははっきり言ってお手上げです。検証する手段が考えつきません。たくさんGPS受信モジュールを集めてその出力タイミングが一致したらたぶんそれが正しい秒なんだろうと信じる、くらいのあんまり科学的でない方法(態度?)しか思いつきません。ただGPSは高精度の位置測定に使われるものですから、双曲線航法の原理と電波が1μ秒で300m進むことを考えるとそうとうに高精度であることは予想できます。

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今二つのGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングの差を測定しています。これから得られることも多いのですが、できれば一つのGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングの揺らぎを直接測定したいものです。

上に書いた話から測定の分解能は最低でも0.1μ秒、できれば0.01μ秒が必要でしょう。揺らぎを測る基準となる信号(1PPS)にもその程度の不確かさが要求されることになります。

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そこでこんなブロックダイアグラムのものを作ってみました。

Bd4

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TCXO(VM39S5G)をJJY(標準電波)にPLLでロックさせます。JJYはちゃんとやれば100秒程度の積分時間でも10^-9程度の不確かさが実現できるようなので急激な温度変化に気をつければTCXOでも今回の測定に使える程度の精度のものは作れるはずです。

TCXOの出力を分周して1PPSを作りこれをGPS/1PPSの変動を測定するときの基準とします。ただ1PPSと言ってもこれは正確に毎秒1回出力されるというだけの意味で毎正秒に出力されるわけではありません。

GPS/1PPSでRS-FFをセットし、JJY/TCXO/1PPSでリセットします。RS-FFから出力されるパルスの幅を測定すればGPS/1PPSが基準となるJJY/TCXO/1PPSに対してどのくらい先行しているかがわかります。

パルス幅の測定に使う信号はTCXOの出力を使ってもいいのですが、これだと分解能が0.08μ秒にしかなりません。そこで別に48MHzの水晶発振器を用意しこれを使います。これで分解能は0.02μ秒近くになります。

ただの水晶発振器ですから確度や安定度は期待できません。そこで測定開始時にGPS/1PPSを使ってJJY/TCXO/1PPS用の分周器のリセット(クリア)を行います。これによってセットとリセットの時間差を(測定に支障がない範囲で)できるだけ小さくします。現在だいたい200μ秒くらいになっています。これだと水晶発振器の確度は100ppmもあれば十分なのでふつうの水晶発振器が問題なく使えるようになります。

なお、この基準信号にJJYの秒信号を使うということはできません。JJYの秒信号を基準信号に使ってしまうとその確度は(よほど送信所に近いとかいうことがない限り)今要求されているものより4、5桁劣るものになってしまいます。

またグラフにあるVCO制御電圧(と見えていませんが室温)はPLLの動作に問題がなかった確かめるためのものです。電圧が一定であるか緩やかに変化しており、大きな変化や突発的な変化がなければOKです。室温が変化するとその影響を補正するために制御電圧も変化するのでロックしたら一定になるというわけではありません。
また室温が大きく変化したところがある場合は追随できなかった可能性があるので要注意です(TCXOはできるだけ断熱して使います)

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上のブロックダイアグラムの赤い点線で囲った部分がPLLです。複雑なことになっていますが、これは(私の作った)JJY受信機から出力される40kHzの信号の品質に問題があるからです。JJYの秒信号で断続する(正確に言えば“断”は原則ないのですが)電波から位相が一定している40kHzを作るのが(私には)難しかったのです。毎秒位相が安定したところを狙って位相検波出力を測定し、さらに位相ノイズの影響をできるだけ排除した上でVCOの制御電圧を作り出すというようなことをやっています。

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実際に測定を行った結果です。
Neo6mant4p_ge612tgm5157aba

基準信号をもとにNEO6M-ANT-4P、GE-612T、GM-5157Aの三つのGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングを調べたものです。数値が小さいもの(つまり下にあるもの)ほど早く1PPSが出力されています。数値は相対値であってその数値自体には意味はありません。

このところおおたかどや山送信所は停波が多く、早めに調べてしまおうということでPLLが完全にロックして定常状態になる前に調べ始めています。グラフが右肩上がりになっているのはそのためです。TCXOの発振周波数は左側で12,800,000.05Hz、右側で12,800,000.02Hzくらいと思われます(これはGPSの1PPS出力間隔は長時間平均化すると不確かさが小さくなるというのを前提に計算して求めたものです)

前回GPS受信モジュール1PPS出力・巴戦 - NEO6M-ANT-4P * GE-612T * GM-5157Aで1PPSの出力タイミングは三者三様と書いたのですが、今回は放っていたらGE-612TとGM-5157Aの出力タイミングがほぼ一致しました。でもNEO6M-ANT-4Pはやっぱり0.8μ秒程度これらから先行して1PPSを出力しています。

<===== NEO6M-ANT-4Pについてはコンフィグレーションが誤っている(不適切である?)可能性があり調査中です。

<===== 実際コンフィグレーションの設定が不適切でした。

      “ガセ”だったGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングの違い

それから前回はGE-612Tの出力タイミングが荒れていたのですが、今回はそれはありませんでした。1PPSが途切れることもなかったです。

こうやって見ると今回は衛星の巡り合わせがよかったのかもしれません。

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コメント

NEO6Mだけ気になる違いを残しているわけですか。
他の2つは一緒でOKって感じですね。実験と原因追求にかける情熱に頭が下がりますm(_ _)m

ひとまずNEO6M-ANT-4Pのコンフィグレーションを変更し(デフォルトに戻し)、測定回路も二つをまとめて測定できるにして8時間くらい動かしてみました。
どういう結果が出ているか興味津々です。

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