“ガセ”だったGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングの違い
三つのGPSモジュール NEO6M-ANT-4P、GE-612T、GM-5157Aの1PPS出力タイミングが三つとも異なるということを大発見みたいに書いてしまったのです、実験(設定)に致命的なミスが見つかりました。結果として
(少なくとも私の手元にあるものに関しては)0.02μ秒くらいの分解能で見る限りほぼ同一のタイミングで出力されている
ことがわかりました。ただし
常に1PPSが同一のタイミングで出力されているわけではない
ことには留意していただきたいと思います。
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u-bloxの場合、コンフィグレーションで受信機内部・外部の遅延を補正する設定ができます(コンフィグレーションの設定はふつうu-centerで設定を行います)
設定を変更したつもりはないのですが、念のために NEO6M-ANT-4P、GE-612Tのコンフィグレーションを調べてみました。
まずGE-612Tです。
適正なのかそうでないのかよくわかりませんが、Cable Delayが50nsとなっています。
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では次にNEO6M-ANT-4Pです。
RF Group Delayというのが -12,851nsになっています。これが何を意味するのかよくわかりませんがちょっとヘンな値です。またCable Delayが820nsになっておりGE-612Tとまったく違います。
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そこでNEO6M-ANT-4Pでデフォルト値の設定を行ってみました。
GE-612Tと同じ値になってしまいました (^^;;
何度も書きますが何もやった覚えはないのですが。
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この状態で再度NEO6M-ANT-4PとGE-612Tの1PPS出力タイミングの比較をやってみます。これまで一方のテストをして次のもう一方のテストをするという方法でやっていました。
基準信号(JJYにPLLで同期したVM39S5G)が絶対的に信用できるならそれでもいいのですが、どうやらそうでもないということがわかってきました。
そこで回路をちょっといじりました。
二つのGPS受信モジュールの1PPS出力を交互に測定します。これによって基準周波数のドリフトをあんまり気にせずに1PPSのタイミングを比較できるようになります。
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NEO6M-ANT-4PとGE-612Tの比較の結果はこうなりました。
大まかに見ると二つのGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングがよく一致していることがわかります。
部分的には出力タイミングが少しずれているところもありますが、このグラフの範囲内に限って言えば二つのGPS受信モジュールの1PPS出力の差は0.2μ秒の範囲に収まっています。このグラフから即断できませんが、どちらかというとGE-612Tがちょっとあやしいです。これは受信モジュールが室内においてあり、GE-612Tが電波のつかみが弱いことが影響しているように思います。開けた場所で測定すれば結果はまた違ってくるかもしれません。
重要なこととして1PPS信号の出力タイミングの変化がなめらかなことです。二つの1PPS信号の間隔はほとんどの場合1,000,000.00±0.02μ秒に収まっているようです。これは確度の高い周波数測定ができることを意味しています。ただし1秒のゲートタイムで100MHzをHzの桁まで確定できるほどではないです。
補足
縦軸は相対値です。変化を示しているのであって数値自体に意味はありません。0.5マクロ秒とあっても何かから0.5μ秒というような意味ではないです。
なおグラフは(基準周波数による1PPS出力からGPS/1PPSまでの時間ではなく)GPS/1PPS出力から基準周波数による1PPS出力までの時間をもとにしたものです。つまり実際はGPS/1PPSを基準にした基準周波数の位相変動を示しています。このことは次の記事で重要になります。
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ところでこれを数分単位で見ると1PP出力が大きく変動しているように見えます。長い時間で見るほど安定しているのがGPS受信モジュールの1PPSですから、これはヘンです。おそらく基準周波数として使っているJJYに同期したVM39S5Gの発振周波数がドリフトしているのでしょう。
上のグラフから読み取れるドリフトの状況はこのようになります。
12,800,000.003Hz 60分~64分あたり
12,800,000.000Hz 66分~68分
12,799,999.998Hz 71分~75分
12,800,000.000Hz 75分以後
JJYに同期しているのになぜドリフトするのか?というのが次のテーマになります。
前の記事 「GPS受信モジュール1PPS出力タイミング変動の高精度測定の方法を考えてみた」
次の記事 「GPS/1PPSで標準電波/JJYの位相変動(到達時間差)を調べてみた」
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関連
「(改訂版)GPS受信モジュールあれこれ」
「高精度発振器をGPS受信モジュールとPLLで作る - はじめに」
「JJY受信機で作る高精度発振器と時刻標準 - はじめに」
(NICTなどJJY/標準電波受信で参考にしたサイトへのリンクはこちらにあります)
「GPS受信モジュール1PPS出力タイミング変動の高精度測定の方法を考えてみた」
「“ガセ”だったGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングの違い」
「GPS/1PPSで標準電波/JJYの位相変動(到達時間差)を調べてみた」
「続・GPS/1PPSで標準電波/JJYの位相変動(周波数変動)を調べてみた」
(RSフリップフロップ+XO+JJY/TCXO、分解能:1/48,000,000秒)
「GPS受信モジュール1PPS対決 - GE-612T vs GM-5157A」
「GPS受信モジュール1PPS出力・巴戦 - NEO6M-ANT-4P * GE-612T * GM-5157A」
(RSフリップフロップ+XO、分解能:1/48,000,000秒)
「続・GPS受信モジュール GM-5157A vs GE-612T 1PPS対決」
「GPS受信モジュール・GE-612T vs GM-5157A 1PPS対決(高分解能版)」
「100万分の1秒くらいずれている?GPSの1PPS出力 GE-612T vs. GM-5157A」
(XOR+バイナリカウンタ+XO、分解能:1/8,000,000秒)
「GE-612T vs GM-5157T 1PPS対決(GPS受信モジュール)」
(動画、分解能:1/100,000秒)
「セット優先RSフリップフロップとリセット優先RSフリップフロップ(RS-FF)」
「超高精度SPIバスRTC(リアルタイムクロック)DS3234Sは一ヶ月に0.2秒進む」
「測定対象別記事一覧とリンク集」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
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コメント
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なんとGPSコンフィグの問題だったとは。
でも違いの原因が実験によってわかったことは良かったですね。こういうことを知らずに使っている人のほうが(私を含め^^;)多いのではないでしょうか。
投稿: ほよほよ | 2016年2月25日 (木) 14時01分
コンフィグをいじる方もそういらっしゃらないでしょうから、ふつうは心配することもないんじゃないかと思います。以前から気になっていた受信モジュールによって1PPS出力タイミングがどのくらい違うかということについては結果らしきものが得られたので一安心でしょうか。
それと以前ICレコーダーでいろんなもののタイミング差を調べていた頃と比べるとずいぶん進歩(?)したという感慨みたいなものがあります。当面これ以上の分解能は必要なさそうです。
投稿: Seppina | 2016年2月25日 (木) 19時21分