GPS/1PPSで標準電波/JJYの位相変動(到達時間差)を調べてみた
前記事「“ガセ”だったGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングの違い」でJJYにロックしたVM39S5Gの12.8MHzを分周して作った1PPSを基準にGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングの変動を調べました。
このような結果が得られました。
このグラフを見ると数十分の間にGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングが変化しているように見えますが、これはあきらかにおかしいです。GPS受信モジュールの1PPS出力は時間軸を長くとるほど正確になるからです。本来なら横軸に平行な直線にまとわりつくようなグラフになるはずです。
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もっと長い時間の変化を調べてみます。
横軸が経過時間となっていますが、これは2016年3月23日16時00分UTCからの経過時間です。つまりグラフは16時50分UTCから20時10分UTCのものです。
基準信号とタイミング差がかなり変化しています。まず最初に思いつくこととしてはPLLが正常に動作していないということですが、深夜誰もいない部屋で室温も大きく変化することはないのでこのような変化をするとは思えません。
次に思いつくのはJJYの受信は自体位相変動しているのではないかということです。JJYの電波は(特に夜間は)地表波と空間波の干渉したものになります。空間波は電離層の状態によって到達時間が変化しますのでJJYにロックした発振器から作られる1PPSも出力タイミングが変化することになります。
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JJY受信波の位相がどのように変化するのかは、NICTが小金井本部で実測したものをほぼリアルタイムで公開しているものがあるのでこれをグラフにしてみました。
今回の受信地は小金井から数十km離れていますし、アンテナもその設置方法もまったく違うのですが、二つのグラフを比べてみるといくつか共通点もあります。
・全体的な動き
前半部から後半部にかけて位相が遅れていきます。
後半部は変動幅が小さくなります。
NICTのデータの位相変化は2μ秒、今回の測定データは3μ秒と同じオーダーです。
・細かい動き
変動の大きさ、変動の周期が同程度です。
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これを見る限りGPS/1PPSとのタイミング差(位相差)はJJYの電波伝播の状況によるもののように思えます。
これを数日間測定を続けNICTの受信データと比較すればもっとはっきりしてくると思います。
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