JJY(標準電波/電波時計)に同期したTCXO(VM39S5G)の周波数安定度
NICT(正確には通信総合研究所)の季報を見るとJJYを基準にしたとき得られる周波数精度は24時間積分値で10^-11とされており、さらに対象とする時間帯を選べば10^-12が達成できたという事例もありました。
逆に言うと短時間ではそれだけの精度は出せないことを意味しています。JJYは40kHz(あるいは60kHz)なので24時間でも3,456,000,000サイクルにしかならず波数をカウントしているだけだと3^-10にしかなりません。位相で比較することになるわけですが、JJYの標準電波の位相はけっこう変動していて、±20度くらいは動くようです。
仮に1時間で位相がー20度から20度に変化したとすればこれは0.00003Hz周波数が高くなっていることになります。12.8MHzの発振器をPLLで同期させている場合、完全にロックされていると発振器の周波数は0.01Hz上昇することになります。つまり発振器を短時間JJYにロックしても得られるのは10^-9程度と考えた方がよさそうです(上に書いたようにこれは時間帯によってかなり違います)
実際資料にあるグラフを見ると100秒積分値での周波数安定度は10^-9となっています。
--------
「JJY(標準電波/電波時計)にPLLでTCXO(VM39S5G)を同期させてみた(改良版)」とほぼ同じ方法で再度実験してみました。ループフィルターのところにあるPICのアルゴリズムをすこし改良しました。
PFDの出力電圧がなんだか前回より荒れています。ただランダムに変化しているせいかVCO制御電圧はかえって安定しているようにも思えます。
今回はGPSの1PPS出力で256秒のゲートタイムを作りVM39S5Gの発振周波数を測ってみました。
GPSの1PPS/TIMEPULSE出力も今一つ信用できないようなところもあるのですが、時間が長くなれば確度が上がるのは確実なので大き目のゲートタイムでやっています。控えめに見積もっても10^-9以上が確保できていると思います。
=========
周波数の変化です(オレンジ色は位相の変化)
開始40分後からの三つのデータは12,800,000.00Hz、12,800,000.00Hz、12,799,999.99Hzと文句なしの結果が出ています。つまり0.001ppm、1ppbが達成できています。
--------
ところで上の二つのグラフで開始70分後ころから大きな動きが見られますが、これは室温が大きく変動したためです。
窓を開けたため室温が一挙に3℃以上下がりました(VCOは軽く断熱してあるのでディレイがあります)
これだけの温度変化があるとVM39S5Gでも数Hzの周波数変化があるはずなのですがPLLが制御電圧を15mV上げることでこれをカバーしようとしています。ただ完全に追随できず周波数が一時的に0.03Hz下がっています(これは256秒積分値から求めているわけで瞬間的にもっと下がった可能性はあります)
---------
PLLのループフィルターについては(PFD出力電圧の扱い方も含めて)改善すべきところがまだまだ残ってはいるのですが、それなりの結果が得られていますしJJYにそれほどの短期周波数安定度を求められないことを考慮するとVCOの短期安定度を上げることの方が優先課題のように思えます。
つまりVM39S5Gを氷水の中に入れてしまうとか....
------
前の記事 「JJY(標準電波/電波時計)にPLLでTCXO(VM39S5G)を同期させてみた(改良版)」
次の記事 -------
最初の記事 「JJY受信機で作る高精度発振器と時刻標準 - はじめに」
--------
関連
「JJY受信機/電波時計の製作記事を集めてみた」
(ググッて集めたJJY受信機電波時計の製作記事集)
「JJY受信機で作る高精度発振器と時刻標準 - はじめに」
時刻
「時刻標準について」
「GPS受信モジュールあれこれ」
標準電波JJYの仕様
「JJYの報時信号の送出方法」
「JJYの秒信号の送出方法についてNICTに聞いてみた」
「標準電波JJY - 変調波振幅の「最大100%、最小10%」の意味」
「(非公式)JJY(標準電波/電波時計)の呼び出し符号(コールサイン)送出方法」
参考
「通信総合研究所季報Vol.49 Nos.1/2 2003 - 栗原則幸 - 5-3 長波標準電波」
旧記事
「JJYの受信法」
「JJYを受信したい(要旨)」
参考
「NICT 情報通信研究機構 - 電磁波計測研究所 - 時空標準研究室
- 日本標準時グループ 」
JJYの運用
「標準電波・長波JJYが停波するとき」
「毎日送信してほしいJJY(標準電波/電波時計)の試験電波」
参考
「NICT 情報通信研究機構 - 日本標準時グループ 標準電波運用状況」
長波JJYの性質(電界強度等)
「JJYの電界強度と受信機の必要利得(増幅率)」
「標準電波JJYの電界強度の時間変化 - 電波時計をいつ合わせたらいいか」
「標準電波JJYの電界強度の時間変化を測ってみた(1)」
「JJY搬送波の周波数をGPS/1PPSで測ってみた」
「JJYの40kHzの電波をボイスレコーダーに録音してみた」
「JJY受信機を作る - すでに40kHzのキャリア(連続波)を検出できてるっぽい」
「JJY受信機を作る - JJYの電波がつかめた!」
参考
「NICT 情報通信研究機構 - 日本標準時グループ - 標準電波に関するQ&A」
「NICT - 日本標準時グループ - 長波標準電波の電界強度予測値」
「NICT - 日本標準時グループ - 長波標準周波数(JJY)小金井本部 受信データ 」
「NICT - 日本標準時グループ - ライブラリー他 - Field Strength Pro Ver1.0」
アンテナ・プリアンプ
「JJY受信機を作る - バーアンテナとその特性」
「JJY受信機を作る - アンテナとプリアンプ」
参考
「RFワールド - ラジオで学ぶ電子回路
- 第1部 ラジオのための基礎 第1章 ラジオの電波 」
クリスタルフィルター
「クリスタルフィルターの効果を目と耳で確かめる - JJY受信機を作る」
「JJY受信機を作る - 40kHz/60kHzクリスタルフィルターの功罪」
「JJY受信機/電波時計用クリスタルフィルターの設計」
状態変数型フィルタ
「JJY受信機を作る - 状態変数型フィルタの周波数特性」
参考
「群馬大学 KobaLab@JP - 発振を利用したアナログフィルタの テスト・調整 」
PLL・周波数標準
「高精度発振器をGPS受信モジュールとPLLで作る - はじめに」
「標準電波にVCTCXO・VM39S5GをPLLで同期してみた - 長波JJY受信機の製作」
「高精度発振器の作成に向けて - VCTCXO・VM39S5GをPLLでJJYにロックする」
「JJYに同期した高精度発振器用PLLの過渡特性」
「JJY(標準電波/電波時計)にPLLでTCXO(VM39S5G)を同期させてみた(改良版)」
プロダクト検波・シンクロダイン検波
「シンクロダイン検波によるJJY秒信号の取得 - GPSとの比較」
「JJY秒信号のシンクロダイン検波による取得の試み」
「平衡変調器で直流をボイスレコーダーに記録する - JJY・GPSの秒信号」
「GoldWaveとawk(gawk)でボイスレコーダーの記録・音声をExcelのグラフにする」
「音で聴くJJY - プロダクト検波による復調」
「四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 1」 (アナログ乗算器)
参考
「JR7CWK - 長波JJY受信機の制作」
電波時計モジュール
「JJYを受信する(訂正あり)」
「電波時計モジュールを使ってみた(1)」
「電波時計モジュールを使ってみた(2)」
「電波時計モジュールが「使えない」理由」
« 水道水の電気伝導度(電気抵抗)を測る - 水の純度の推定 | トップページ | 水道水の電気伝導度(電気抵抗)の温度特性を測ってみたけれど.... »
「趣味の実験」カテゴリの記事
- 100Ω抵抗器の端子間で発生した火花放電(沿面放電)(2018.07.18)
- Amazonで買った「400000V高電圧発生モジュール」の出力極性(2018.07.15)
- 高電圧モジュールの放電開始電圧 - 針状電極間の放電(2018.07.11)
- 高電圧モジュールの放電開始電圧 - 円筒電極と針状電極(2018.07.09)
- 放電開始電圧をパッシェンの法則から知る(2018.07.07)
この記事へのコメントは終了しました。
« 水道水の電気伝導度(電気抵抗)を測る - 水の純度の推定 | トップページ | 水道水の電気伝導度(電気抵抗)の温度特性を測ってみたけれど.... »



コメント