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2016年2月18日 (木)

続・純水(蒸留水/精製水)の電気抵抗率(導電率)を測ってみた

古河薬品工業の精製水の電気伝導率を測る実験(蒸留水(精製水)の電気抵抗率(電気伝導度)を測ってみた)の続きです。なお電気伝導率は市販の導電率計ではなく自作のものを使っています。多少というかだいぶ誤差がある可能性がありますのでそのつもりでご覧下さい。これまで測った電気伝導率はこの記事にあるものの1.5分の1とすれば全体的に常識的な導電率になってくるのですが、現時点でそれが正しいと判断できるだけの材料がありません。

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結論だけ先に書いておきます。あくまで今回実験の対象にした精製水での話です。さらに導電率の低い水(純水)に適用できることではありませんので念のため。

1. “精製水”の導電率は水道水の1/100以下でした。つまり電解質の濃度もだいたいもその程度になっているものと思われます。測定値の確度にまだ自信がもてませんが電気抵抗率が0.5MΩ/cmを超えているのは間違いないです。

2. ガラス容器は水道水で洗ってすぐのもの、つまり水道水の水滴が残っているようなものは必ず一回精製水ですすいでから精製水を入れる必要があります。

3. ガラス容器を水道水で洗ったあと逆さまにして自然乾燥させたものでも一回は精製水ですすいだ方がいいですが、すすがずに精製水を注いでもそんなに導電率が上がるということではないようです。

4. 静電容量は導電率が下がれば小さくなるようです。したがって静電容量から導電率を推定することができそうです。静電容量の温度特性はまだ調べていません。

5. 精製水を溜めおきしておいても想像していたより導電率は変わらないようです。できるだけ純度の高い水が必要なときは使うべきでないでしょうが、予洗には使えるんじゃないでしょうか(予洗はよあらいと読むのが正しいと書いたものがあったんですが、ほんとうでしょうか?)

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実験は次の手順でやっています。

A. 前回の実験の容器(1)にためおきの精製水。グラス用のシリコンラバーをかけて40時間放置。

B. 上の水を別の容器(2)に移したもの。

C. カラになった容器(1)に新たに精製水を注いだもの。

D. この精製水を別の容器(3)に移したもの。

E. カラになった容器(1)に新たに精製水を注いだもの。

容器というのはふつうのガラスのグラスです。食器と同じように洗い、拭かずにふせて自然乾燥させたものです。

実験結果(1)  電気抵抗とキャパシタンス
02180916_rc

 

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電気抵抗の測り方やセル定数の決め方はセル定数を求める - 水道水の電気伝導率(抵抗率)を測るにあります。今回は測定結果の妥当性をチェックするために100kΩ、200kΩ、510kΩ、1MΩの抵抗とそれに0.001μF、0.01μFのコンデンサを直列にしたものの値も測っています。

抵抗値は100kΩ~1MΩの範囲で比較的正確に測れているようですが、キャパシタンスの値は大きくなると(0.01μFくらいになると)あやしいです。

実験結果(2) 電気抵抗と温度
02180916_rt

実験に使う水は室内においていたのでだいたい同じ温度になっていると思っていたのですが、そうでもないようです。床に置いていたものと机の上に置いていたものではずいぶん違います。温度補正はやってはいるのですが、やっぱり同じ条件で実験したいものです。

A. 前回の実験の容器(1)にためおきの精製水。グラス用のシリコンラバーをかけて40時間放置。
02180916_a

0.26ms/mですから前回測定値(蒸留水(精製水)の電気抵抗率(電気伝導度)を測ってみた)より1.5倍くらい高くなっています。空気中の二酸化炭素が溶け込んだ、くらいしか思いつかないのですが、水道水の1/100以下であるのは同じですから40時間放置しても1.5倍にしかならなかったと肯定的に見ることもできます。

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B. 上の水を別の容器(2)に移したもの。
02180916_b

これはグラスがどの程度汚れているのか確認するための実験です。わずかに伝導率が大きくなっていますが、(溜めおきの精製水であれば)それほど気にすることもない程度です。

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C. カラになった容器(1)に新たに精製水を注いだもの。
02180916_c

前回の最終的な結果とあんまりかわりません。

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D. この精製水を別の容器(3)に移したもの。
02180916_d

これも洗って自然乾燥したグラスの汚染度(?)のチェックです。わずかに電気伝導度が大きくなっています。つまりあんまり変わりません。

E. カラになった容器(3)に新たに精製水を注いだもの。
02180916_e

だいたいC.と同じ結果になっています。つまりすすいでも導電率は変わらなかったということです。

前回の結果と以上の結果をまとめると最初に書いたような結論になります。

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参考

  JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門)

  JIS K 0130 電気伝導率測定方法通則
  JIS K 0102 工場排水試験方法

  「
第十六改正 日本薬局方 」 (2.51 導電率測定法、常水、精製水、注射用水、等)

  「
日本分析機器工業会 - 分析の原理
    -
電気化学測定の原理と応用 - 電気伝導率計の原理と応用

  「
産業技術総合研究所 - (技術資料)電気伝導率標準液に関する調査研究
      <== 他の資料には書いてないようなことが書いてあり参考になります。

  「HORIBA - LAQUA - やさしいpH・水質の話
  「栗田工業 - 水処理教室

  「日本冷凍空調学会 - 用語集 - 超純水

  「
八光電機 - 熱の実験室 」  <== おもしろいです!

  「雑学 H2O - 水質の化学」  <== 興味深い記事があります。

  「
東所沢 2-31-12 - 溶液の電気特性  <== 実測値があります。
     -
1章:溶液の電気特性測定用電極の製作
     -
2章:A、B、C電極の水道水テストとD、E電極の試作
      -
3章:食塩水の電気特性


  「
厚生労働省  - 水質基準項目と基準値(51項目)
  「
東京都水道局  - 水質検査結果
  「川崎市上下水道局 - 水質検査結果 」 (工業用水の電気伝導率の測定結果があります)

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