水道水の電気伝導度(電気抵抗)と静電容量(キャパシタンス) - 電気二重層について
水道水の(電気伝導度、電気抵抗ではなく)電気伝導率、電気抵抗率を測るとき次のような装置(?)を使っています。
これは電極間距離Lと電極間の電気抵抗が線形の関係にあるということを前提にしています。
じゃあ電極間の静電容量は電極間距離とどういう関係にあるかというのがこの記事のテーマです。
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電気抵抗と静電容量は正弦波/余弦波(要するに90度位相の異なる正弦波「PIC16F1705のDAコンバータを使った正弦波発振器(発生器) - 改良版」)発生器とオペアンプ(自動平衡ブリッジ「LCRメータの製作に向けて - 自動平衡ブリッジの測定精度」)、ベクトル電圧計(「ベクトル電圧計の製作と調整 - 交流電圧計(ミリバル)」)を使って行っています。これまで記事にしたLCRメーターと同じ作りです。
測定結果
印可電圧 0.42V 正弦波 1.000kHz 水温推定値 21℃
測定はまず10kΩ、51kΩ、100kΩの抵抗を測定対象にし、次にこれらの抵抗と0.01μFのコンデンサを直列にしたもので測り、最後に電極間距離を変えながら水道水を測ります(抵抗やコンデンサの抵抗・容量を測定するのはキャリブレーションのためです)
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上の測定結果から電極間距離と抵抗値の関係をグラフにしてみました。
電極間距離が小さい一つ(A)を除きデータは直線(B)上にあります。つまり
(電極間の距離がある程度大きければ)電極間距離の変化に対する抵抗値の変化は比例する。
ことが言えます。これはこの方法で電気伝導率を決定できることを意味していると考えていいと思います。
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次に静電容量でも同じグラフを作ってみました。
こちらは電極間距離が小さい一点(A)を除けばほぼ一定の値を示しています。つまり
(電極間の距離がある程度大きければ)電極間の静電容量は電極間の距離に依存しない。
ことが言えます。
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コンデンサの容量は面積に比例し、距離に反比例するはずですから、上の実験結果は不思議です。でも今回の電極の大きさや距離を考えると電極間の静電容量は1pFもないはずで0.08μFという巨大な静電容量があるのはもっと不思議です。
おそらくこれは電極の近傍にできた電気二重層の静電容量なのだと思います。これだと電極の形状(+水中での位置関係?)だけで容量が決まりますので電極間の距離は無関係になるはずです。
この静電容量は測定時に印可した正弦波の周波数1.000kHzだと2kΩくらいのリアクタンスになります。一方電気抵抗は数十kΩあります。
今回は純抵抗とリアクタンスが分離できるベクトル電圧計を使っていますが、それができないふつうの交流電圧計を使う方法でもそこそこ正しい抵抗を測定できると思われます。
ただ印可する正弦波の周波数が低くなるとちょっとまずいことになりそうです。念のために書いておくと正弦波ではなく矩形波を印可する測定法もあるようです。
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今回の測定法による水道水(と電極)の等価回路想像図
(実際はもっと複雑らしいですが、今回は単一周波数での実験なのでこれ以上のことはわかりません)
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「水の三重点セルの作り方を考えてみた」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
参考
JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門)
JIS K 0130 電気伝導率測定方法通則
JIS K 0102 工場排水試験方法
「第十六改正 日本薬局方 」 (2.51 導電率測定法、常水、精製水、注射用水、等)
「日本分析機器工業会 - 分析の原理
- 電気化学測定の原理と応用 - 電気伝導率計の原理と応用 」
「産業技術総合研究所 - (技術資料)電気伝導率標準液に関する調査研究 」
<== 他の資料には書いてないようなことが書いてあり参考になります。
「HORIBA - LAQUA - やさしいpH・水質の話 」
「栗田工業 - 水処理教室 」
「日本冷凍空調学会 - 用語集 - 超純水」
「八光電機 - 熱の実験室 」 <== おもしろいです!
「雑学 H2O - 水質の化学」 <== 興味深い記事があります。
「東所沢 2-31-12 - 溶液の電気特性 <== 実測値があります。
- 1章:溶液の電気特性測定用電極の製作
- 2章:A、B、C電極の水道水テストとD、E電極の試作
- 3章:食塩水の電気特性 」
「厚生労働省 - 水質基準項目と基準値(51項目) 」
「東京都水道局 - 水質検査結果」
「川崎市上下水道局 - 水質検査結果 」 (工業用水の電気伝導率の測定結果があります)
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