塩橋(隔壁、液絡)をティッシュで代用してみた - ボルタの電池風電池の起電力
ボルタの電池というのは (-)Zn | H2SO4 | Cu(+) の構成のものをいうわけですが、何せ希硫酸に亜鉛をひたすわけで盛大に水素が発生するようです。どうも泡がぶくぶく出ているのをみるのは落ち着きません。
この対策としてダニエル電池のような二種類の電解液を使う方向に行くわけですが、この場合二つの電解液が混じり合わずしかも電気的には接続されているという状態にする必要があります。
これには隔壁であったり塩橋であったり液絡(接液)を使うわけですが、どれもまともな実験器具を持たない人間には面倒ですぐに実験するというのもたいへんです。
そこでこんなものを考えてみました。
二種類の電解液を別の容器に入れておき縁を接触させるようにおきます。そして二つの容器の間にティッシュペーパーを細く切ったものをたらします。
毛管現象で二つの電解液は接触するようになります。二つの容器の液面の高さを合わせておけばそんなに液の行き来はないはずです。電気抵抗が問題ですが、CMOSオペアンプで開放起電力を主に測っている私にはあんまり関係ないはずです。
これでいくつかの組み合わせで起電力を測ってみました。
なおダニエル電池だと一方が亜鉛の電極に硫酸亜鉛の電解液、もう一方が銅の電極に硫酸銅の電解液ということになります。ここで本質的なのは(たぶん)亜鉛の電極と硫酸銅の電解液であって、一方で卑金属の酸化、もう一方で銅の還元を行わせその電極電位の差を電池として利用します。
一方ボルタの電池は一方が卑金属の酸化、もう一方が水素の還元ということになります。ここでは電解液の一方を塩化アルミニウム水溶液、もう一方を塩酸としてボルタの電池的構成でやっています。
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まず (-)Sn60/Pb40 | AlCl aq. || HCl aq. | Cu(+) という組み合わせです。
負極が合金のときどういう結果になるかというのはよくわかりません。
「熊本県立湧心館高等学校 理科研究部 - 合金を電極に用いた電池について」
というのを見つけたのですが、結果の解釈がなかなか難解です。
ただ幸い(?)なことに錫も鉛もイオン化傾向はさほど変わらず、どちらにころんでも差はあんまり出そうにありません。
だいたい0.25V前後の電圧になっています。最後の方の段差は無負荷と負荷ありを切り替えているのですが、起電力にはあんまり差がありません。
標準電極電位からすると起電力がちょっと高めですが、正極の電解液は2.5mol/lの塩酸に相当するサンポールで水素イオン濃度は高め、負極の電解液には錫も鉛も含まれていないとなると(ちゃんと計算していませんが)このくらいの起電力になってもおかしくないように思います。はじめてそれらしい起電力が得られた実験でしょうか。
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次が (-)Sn60/Pb40 | AlCl aq. || HCl aq. | C(+) の構成です。
1.3V~1.2Vの起電力が得られています。炭素の場合水素の還元とは別の酸素がらみの反応が起きているのかもしれませんが銅電極と比べて1Vも高いとなると何なんでしょう?
しかも「ボルタの電池風電池の起電力 - 銅/炭素+酢酸+アルミニウム」のときと違って負荷があってもあんまり電圧が低下しません。不思議です。
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最後 (-)Al | AlCl aq. || HCl aq. | Cu(+) の構成です。
これはティッシュを使った効果が現れ負極での水素の発生があんまりありません(ということは完全なAlCl3ではないということですが)
他のと比べて電圧がとても不安定です。同化すると電圧が0V近辺に落ちたり、さらにはマイナスになったりしています。これほんとうにアルミなんだろうかと思ってしまいます(そう考える理由もあります)起電力0.5Vははんだに比べれば高いのですがイオン化傾向(標準電極電位)からするとかなり低いです。そういうことがあってアルミの電極はしばらく使うのはやめようかとおもっています。
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アルミの電極があやしい理由の一つ
サンポールを塩酸1mol/l程度に薄めた液で一晩電圧を測って翌朝みたらアルミの電極のまわりに茶色のヘンなのがまとわりついていました。前の晩、なんとなくアルミが茶色く見えていたのですが...
電極はもっとちゃんとした方がよさそうです。
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