ボルタの電池風電池の起電力 - 銅/炭素+酢酸+アルミニウム
「ボルタの電池の初期電圧はなぜ1.1Vなのか?」 に書いたことは実験すればわかりそうですが、こういう実験はぜんぜんやったことがないのであんまり考えずにいろんなケースをやってみました(希硫酸とか亜鉛の電極が手元にないということもあります)
タイトルにはそれらしいものを書いてありますが、実際はこんなものを使っています。
アルミニウム
百均で買ってきたアルミの針金を適当な長さで切ったもの。
炭素
シャープペンシルの芯。B、0.9mm
銅
0.65mmφのスズメッキ銅線のスズメッキ(?)を落としたものです。
CuO/酸化銅というのはこれを黒くなるまでライターであぶったものです。
酢酸
純米酢。酸度5%と書いてあったので酢酸5%の水溶液相当ということだと思います。
成分にナトリウムとあったので塩も入っているのでしょう。
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電解液を純米酢、負極をアルミとした上で正極を炭素、銅、酸化銅と変えて起電力を測ります。それぞれの電極について20kΩ負荷、2MΩ負荷、無負荷(入力抵抗なしCMOSオペアンプのみ、バイアス電流は0.5pA程度で流れ込む方向=電池から流れ出す方向=です)で測定しています。負荷が高めですが、電極が小さなものなのでこれでもけっこう過負荷(?)です。
塩酸(サンポールを塩酸1mol/l程度に水道水で薄めたもの)でやったら上とまったく異なる結果が出ています。だから以下に書いた“結果の解釈”はあやしいです。
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上の結果を表にしてみました。
電極 | 無負荷 | 2MΩ負荷 | 20kΩ負荷 |
シャープペンシルの芯 | 0.95Vくらい 酸素(と水)から水酸化物イオンができる反応が起きている? <=== ここがかなりあやしいです。 |
0.5V以下 水素イオンが還元される反応に変化? |
0.1V以下 炭素電極の水素過電圧が高い? |
銅線 | 0.45Vくらい 水素イオンの還元? |
0.45Vくらい 同左 |
0.2Vくらい |
表面が酸化した銅線 | 0.55Vくらい CuOの還元? |
0.55Vくらい 同左 |
0.45V |
炭素電極の場合無負荷では水素イオンの還元ではなく酸素(と水)から水酸化物イオンができる反応が起きているため起電力が大きくなっているのではないかと思います。
この酸素は空気中のものが酢に溶け込んだものでしょうからあんまり量はなく電流をちょっとだけでも取り出すとなくなってしまい水素イオンの還元の反応に移行し電圧が下がるのではないかと思います。 <=== ???
炭素、銅の場合20kΩ負荷では極端に電圧が下がりますがこれは水素過電圧によるものではないかと思われます。銅の水素過電圧が高いのは確かです。これを見ると炭素は銅以上に高そうですがこれは確かめて(調べて)いません。
表面が酸化した銅の場合水素イオンの還元ではなく銅イオンの還元が起きるようなので若干電圧が高くなりますし、負荷が大きくなっても電圧を維持できるのだと思います。
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以下長時間測定を続けた例です。
最初は純米酢にアルミの針金とシャープペンシルの芯を入れたものです。
全体的には1.1V程度です。4000秒あたりから次第に電圧が下がっていきますが、これはなんとなく納得できる動きです。問題はその前で最初高い電圧から一気に下がりそこから電圧が上昇しているところでしょうか。これは原因がよくわかりません。
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これも同じですが、アルミをサンドペーパーで磨いたあとやってみました。
こちらも最初早いペースで電圧が上がっていきます。上の例と違うのはそこからほとんど電圧が変化していないことです。後半はかえって電圧が上昇しています。
上の例は室温が徐々に低下しており、こちらはだんだん上昇しているという違いが電圧に表れているようにも見えますがこれだけでは何言えません。
実験は基本的に負荷なしの開放電圧を測っています。5000秒経過したあたりで20kΩ、2MΩ負荷__電流で言うと25μA、0.3μA__でもやってみました。電圧がかなり下がりますが、これは最初に書いたように起電力が発生するメカニズム(反応)が違ってしまうためではないでしょうか。無負荷に戻したところで一気に電圧が上がってすぐに下降していますが、これは何が起きているのか想像が付きません。
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今度は銅の電極です。
これは最初のところだけは銅の電極の起電力の測定ですが、そのあとは電極を熱して酸化被膜を作ったものの起電力の測定です。
A,Bのところで比較すると起電力が0.1Vくらい違います。もっと差があってもよさそうなものですが...
C点のあたりでは負荷を与えており電圧が低下しています。そのあとしばらくは一定の電圧を保ったあとD点から電圧が下降し始めます。ここで酸化銅の還元が終わって水素イオンの還元に移行したからとも思うのですが、よくわかりません。これについは追試中です。
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なお今回の測定は負極にアルミを使っていますからボルタの電池より起電力が高くなりそうですが、実際にはそうなっていません。電解液の水素イオン濃度が低いせいではないかと思うのですが、これは後日調べて(計算して)みたいと思っています。
前の記事 「ボルタの電池の初期電圧はなぜ1.1Vなのか?」
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関連
「ボルタ電池の起電力とその変化(1.1V,0.8V,0.4V) - みんな自信満々、でも...」
「ボルタの電池の初期電圧はなぜ1.1Vなのか?」
「ボルタの電池風電池の起電力 - 銅/炭素+酢酸+アルミニウム」
「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
温度、気圧をはじめいろんな物理量の測定方法について
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「水の電気伝導度(電気抵抗)を測る - 水の純度の推定」
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