150MHz(~200MHz?)周波数カウンター用プリスケーラー(1/4分周器)
インバーターSN74HC04N で作ったリングオッシレーターは1段だと100MHz近い周波数の出力になります。さらにディレイの小さいインバーターで試してみようと思うのですが、そうなると周波数が測れません。PIC18F26K22 で作った周波数カウンターも測定対象が100MHzあたりになるとなんとなくあやしくなるからです。
そこでより高い周波数が測れるようにプリスケーラーを作ってみました。ほんとうは300MHzくらいまで測れるようにできたらいいのですが、ひとまず手近にある材料で作ってみることにします。プリスケーラーですから1/10分周あたりが使いやすいと思いますが、今回はDフリップフロップを2個使った1/;4分周器です。PICなんかで周波数カウンターを作っている場合カウント数を左に2ビットシフトするだけですから別に問題はないと思います。
とうぜん74HC74 あたりだとあんまり期待できないと思うので今回はTC74LCX74F(Dフリップフロップ:2個入り)を使います。
3.3Vで動作(動作条件は1.7V~3.6Vくらいです)
最高動作可能周波数の最小値は(所定の条件で)150MHz。
(あくまで“最小”が150MHzです)
3.3V動作でも入力信号は5VまでOK、VCC=0Vで信号を与えてもOK。
(これはデータシートに動作条件として示されているものです)
千石電商で一個 84円
(マルツは一個 60円ですが、在庫なさそうです)
と使いやすくて性能のいいDフリップフロップです。動作可能周波数は最小だけ記載されており標準、最大は示されていません。最小が150MHzとすると常識的(?)に考えて170MHz~180MHzくらいは問題なく動きそうですし、データシートの測定条件はたいていちょっと厳しめな印象なので注意して使えば200MHzくらい行くんじゃなかろうかという期待もあります(タイトルの“~200MHz?”というのはそういう意味です)
それから型番が似ているものに TC74LCX74FT というのがありますが,、これは上級者向けです。
回路はいたって簡単でこれだけです。
他に /CLRと/PRがありますが、これらはVCCに接続します。
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今回は回路図だけでは実装の様子がよくわからないと思うので写真も用意しました。
INは1個目のCLK、OUTは2個目のQです。
パスコンも含め動作に必要な配線はすべて変換基板の上で行ってしまいます。この基板はパターンのない部分を残してあるのでコーティング(レジスト)をはがしそこをGNDに使っています。
裏面は1個目のQを2個目のCLKに接続するところ(白い線)以外は/CLRと/PRなのでVCCに接続されてさえいれば問題ありません(プルアップにすれば外部に引き出して使えるわけですが、そこまでやるメリットは感じなかったので)
ピンは電源と入出力だけにしました。
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今度は74AC04PC(Fairchild) でリングオッシレーターを作り発振周波数を測ってみました。
測定しているとき一段のケースで周波数表示がふらついていたのでもしやと思い帰還のところを200Ω 20Ωの抵抗にして周波数を下げたものも測っておきました(「リングオッシレーターの発振周波数を調整する」)
今回はちゃんと測定できるかどうかの目安として測定値の標準偏差も求めてみました。標準偏差が小さければ発振も安定しているし、測定もちゃんとできているわけですが、そうでないときは発振が不安定か正しく測定できてないかのどちらかということになります。
N=1のケースは最初の周波数が大きく変動しているところは除いて計算しているのですがそれでも他の測定値に比較して標準偏差がかなり大きく、ちゃんと測れているのか心配になります。
N=1のケースとN=1で200Ω 20Ωの抵抗を使ったケースのところだけ拡大してみます。
周波数がちゃんと測れていないときはふつうカウント数が飛んだりするものですが、これを見るとそれはなく単に発振周波数がドリフトしているだけのようにも思えます。下のまとめにあるように遅延時間もまともな値になっていますが、この180MHzがほんとに測れているかどうかは今後の課題にしたいと思います。
その後いろいろやってみたのですが、測れる、測れないは200MHzあたりが分岐点になるようです。測れると言ってもそれらしい周波数を示しているというだけで最後の一桁まであっているという意味ではありません。PLLを使って200MHzあたりの発振器を用意した上で厳密にチェックしてみたいと思いますが、さすがにリングオッシレーターをVCOに使うというわけにはいかなそうです。200MHzでそこそこ安定した発振器というと何があるのか....
水晶発振器の50MHz出力をアナログ乗算器二つで4逓倍という手はありそうで、これはこれでおもしろそうです。
<== 今は分周器の検証をしようとしているわけですから、PLLを使うのは本末転倒でした (^^;;
==> 「PICで作った100MHz周波数カウンターの動作検証で困った問題」
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測定値のまとめ
ケース | 発振周波数(MHz) | 標準偏差(MHz) | 遅延時間(ns) |
N=5 | 37.318 | 0.002 | 2.7 |
N=3 | 60.52 | 0.022 | 2.8 |
N=1 | 182.1 | 0.124 | 2.7 |
N=1 |
170.75 | 0.041 | 2.9 |
標準偏差は発振の安定性、測定の確実性をチェックするためのものです。
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関連
「GPS/RTC(DS3234)の1PPS出力を利用した超高精度周波数カウンター」
「PIC18F26K22のカウンター(タイマー)の測定できる周波数の上限を調べてみた」
「PICのタイマー(T1CKI)の使用可能最大周波数 - あるいはリングオッシレーターの発振周波数」
「リングオッシレーターの発振周波数を調整する」
「150MHz(~200MHz?)周波数カウンター用プリスケーラー(1/4分周器)」
「PICで作った100MHz周波数カウンターの動作検証で困った問題」
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方形波出力で、あまりジッタにこだわらなくていいのなら、この IC を使われてはいかがでしょうか?
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-10141/
設定は面倒くさそうですが水晶振動子を一つ取り付けて MCU で制御すれば 200MHz までフラクショナル PLL とフラクショナルデバイダで制御できるそうです。3ch 出力なのでシステムクロックと測定用高周波を正確な周波数比率で作れます。
“本当にカウントできているか、取りこぼしているか”の判断もしやすいと思います。
投稿: | 2016年3月 6日 (日) 19時59分
ずいぶん便利なものがあるんですね。お値段もリーズナブルですし。
以前からやろうと思ってそのままになっている40kHzクリスタルフィルターの周波数特性の測定に使えないか気になってきました。
秋月の製品リストは一度ぜんぶ目を通した方がよさそうですね (^^)
ありがとうございました m(._.)m
投稿: セッピーナ | 2016年3月 6日 (日) 22時47分
180MHzも行くのですね!
私も実験してみたくなりました。
それと上の方が書いたICは150円と安くてよさそうですね。I2Cで設定するみたいだし興味が出てきました。
投稿: ほよほよ | 2016年3月 7日 (月) 11時34分
Si5351A-B、おもしろうそうですね。I2Cは旬のテーマじゃありませんか (^^)
Si5351A-Bはもう買うことに決めたのですが、逓倍でのチェックをちょっとやってみたい気がします。
周波数が正しく測定できるか調べるためには入力信号の周波数を正確に知っておく必要がある、という表向き(?)の理由もあるのですが、今は逓倍の手法の方に興味が移っています (^^;;
それからリングオッシレーター自体ももいろいろと遊べるところがあっておもしろいですよ。なぜ同じ回路で測るたびに発振周波数が10MHzとか違ったりするんだろうと思っていたのですが、だんだん状況が見えてきました。発振周波数の安定化もある程度はできるのかも。
投稿: セッピーナ | 2016年3月 7日 (月) 12時01分