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2016年3月12日 (土)

pn接合の飽和電流と理想係数を測定する - ダイオード・1SS355

これまでこの手の実験は1S4148を使っていたのですが、今回から1SS355にしました。なぜかというと1S4148はパッケージが透明なため光起電力の影響が気になるからです。SMDなので今後温度計として使うとき扱いやすいということもあります。

飽和電流と理想係数を求めるため、まず順方向電流・電圧の関係を調べます。
Cm_pn2

回路は前記事でバイアス電流の測定に使ったものを流用します。まず上の状態で入力電流を調べます。DAコンバータはMCP4726は最初2V程度の出力になっており、それから一回測定するたびに電圧がだいたい1/2になっていくようにしてあります。0.01V程まで行ったらまた2Vから同じ動作を繰り返します。

それが終わったS2をダイオード側に切り替えて、電流がダイオード側に流れるようにします。これでオペアンプにはダイオードの順方向電圧(の符号を変えたもの)が出力されます。今回は出力がマイナスになることははっきりしているのでMCP3553は使わずMCP3551の方で電圧を測ります。

  

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電圧と電流の関係
1ss355_pn1

片対数のグラフにするとほぼ直線になっています。順方向電圧が電流の対数と線形の関係になっていますが、これは流す電流が飽和電流より2桁から3桁くらい以上大きいと成り立つようです。

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ここで

  pn接合(VBE)の理想係数と飽和電流の簡単な求め方

に書いた方法で理想係数と飽和電流を求めてみます。

  I1= 1.71μA
  V1= 0.310V
  I2= 89.2μA
  V2= 0.492V
  T=20.4℃

  理想係数 = 11600 / ( 20.4 + 273.15 ) * (0.492 - 0.310 ) /  ln(89.2/1.71) = 1.82
  飽和電流 = 89.2 / exp ( 0.492 / 1.82 *11600 / (20.4 + 273.15 ) ) = 0.0020

理想係数が1.82、飽和電流が2.0nAということになります。

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理想係数を上のExcelの近似曲線の傾き  0.0467 から求めてみます。

  11600 / ( 20.4 + 273.15 ) * 0.0467 = 1.85

となり、これから飽和電流を求めると 2.3nAとなります。

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以前やっていた全部の測定点からExcelのSolverを使って求める方法だと理想係数 1.85、飽和電流 2.3nAととうぜん同じくらいの値になります。

理想係数の1.85というのはちょっと大きいようにも感じるのですが、1S4148もこんなものでした。

実測結果と理想係数・飽和電流から求めた計算値を比較してみました。
1ss355_pn2

A、Bが上で理想係数を求める計算に使った点です。

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前回の記事微小電流の測定 - J-FET入力オペアンプのバイアス電流(NJM072D)でNMJ072Dのバイアス電流を測っています。そのときS4をオープンにしてバイアス電流58pAがダイオードに流れるようにして(ただしバイアス電流の方向からダイオードは逆向きにします)順方向電圧を測っています。
1ss355_pn4

グラフの両側はオフセット電圧を測っているところです(オフセット補正済みなのでグラフでは0mVになっています)
中央の0.2~0.3mVくらいになっているところがダイオードの電圧降下を測っているところです。

ダイオードの電流・電圧のグラフをもっと微小な電流のところまで表示してこの結果をプロットしてみました。
1ss355_pn3

残念ながら右側の方の測定結果から求めた電流・電圧曲線とはかない離れています。
(両方を満足させられるような理想係数・飽和電流は存在しません)

バイアス電流の測り方か、バイアス電流を流したときのダイオードの電圧降下の測り方のどちらかに問題があるようです。バイアス電流の考え方や理想係数の取り扱いについて勘違いがあるという可能性もありますが。

理想係数を測るときダイオードに流す電流は今は0.5μAくらいが最小の値です。これをもう2桁、できれば3桁くらい小さくしてやってみれば状況がもう少しはっきりしてくると思います。

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