-75℃でのサーミスタ抵抗値を測ったら1.8MΩだった
たまたまドライアイスがあったので(白金)測温抵抗体とサーミスタで温度・抵抗値を測定し結果の比較をしてみました。
(横軸は経過時間で単位は秒です)
氷点下75度でサーミスタの抵抗値は1.8MΩくらいになるようです。
このサーミスタの25℃での抵抗値は10kΩですから180倍くらいの抵抗値になっていることになります。
※ NTCサーミスタが使用できる温度範囲は-40℃~125℃なので、このあたりの抵抗値についてはメーカー資料もありません。
それからこの後の実験結果については
「氷点下のサーミスタの特性と測温抵抗体(白金薄膜抵抗)による温度測定」
にあります。
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測定に使用した測温抵抗体とサーミスタは次のものです。
測温抵抗体
R0K1.232.6W.B.008 (Pt100 Class B)
PTFA101B000 (Pt100 Class B)
362-9856 (Pt100 1/3 DIN)
NTCサーミスタ
NCP18XH103F03RB 10kΩ@25℃(±1%)、B=3380K(25℃~55℃、±1%)
いずれも外径5mmのアルミ管に封入してあり、これを四個並べてアルミホイルでぐるぐるまきにします。それを発泡スチロールの容器の底におきその上にドライアイスの棒を載せています。まわりに発泡スチロールをできるだけ隙間ができないように並べ最後に蓋をします。
ドライアイスの昇華する温度が-79℃、というのはドライアイスと1気圧の二酸化炭素の境界面の温度が-79℃であるということだと思います。
となるとセンサーの上にドライアイスの棒を載せるというのは温度計の確度のチェックという意味ではあんまりいいやり方ではないように思えます。今回は他の選択肢がなかったのでこうしましたが、今後どういう方法がいいか検討していきたいと思います。
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測温抵抗体の抵抗値を測り(「サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源」を使っているのですが、今は基準になる抵抗=金属箔抵抗器=も四線式で測定するようて手直してしてあります)、それを「測温抵抗体(Pt100、白金薄膜温度センサー)の抵抗値を温度に変換する(平方根を使わない)計算式」に書いた方法で温度に変換しています。
Pt100の示す温度が後半になるほどばらけていきますが、これはセンセーの誤差ではなく、ドライアイスが小さくなってしまったため温度ムラが発生しているのではないかと思います。-80℃くらいではClass Bといえども誤差は最大±0.7℃程度のはずですから。
温度の中でいちばん信用できるのは青い点(線)で示した1/3 DINのものです。これは校正していなくても-80℃で±0.24℃程度です(実際には氷点での校正は行っており±0.2℃が確保できていると思います)
もっとも上に書いたように温度ムラが発生しているとすればいくら正確でもあんまり意味がなくなります。
サーミスタも上と同じ回路の定電流源(バイラテラル回路)を使ってPt100と同じ方法で抵抗値を連続的に測ろうと思ったのですが、あまりにも抵抗値が高いためオーバーフローして測れず急遽DMMで測定しました。測定点が極端に少ないのはそのためです。
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ドライアイスの昇華する温度は-79℃くらいらしいですが、そんなに簡単にはそこまで下がらないと思っていました。でも実際にやってみるとそれに近い温度まで行っているようです。この測定の前にセッティングの調整をしており、そのときはさらに2℃以上低い温度を示していました。
ドライアイスは潜熱が大きいので冷却効率がいいですし、また液体ではないので測定の方法は工夫の余地が大きいです。
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ほんとうはドライアイスを細かく砕いて、その中にセンサーを埋めるというのをやりたかったのですが、これはできませんでした。
最初発泡スチロールと同じように電流を通したニクロム線で切ろうとしたのですが、歯がたちませんでした。発泡スチロールとドライアイスでは熱伝導率も熱容量もぜんぜん違うから当たり前なんですが。ただ発泡スチロールと違ってドライアイスは熱を加えれば二酸化炭素になって熱伝導率は極端に小さくなりますからニクロム線で切れないことはないと思います。じつはこれは動画が撮ってあるのですが、恥さらしみたいな気がしてまだアップロードしていません。
塩ビ用の鋸では意外と簡単に切れました。ただこれではあんまり細かくできません。
このあたりは今後の課題です。ペレット状のドライアイスを買ってくるという手もありますが、お金がかかります。
なお“寒剤”としてエチルアルコール+ドライアイスという組み合わせがあり-72℃とされていますので、温度が安定しているならこういうのもいいかもしれません。温度ムラも小さくなるはずです。
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参考
「村田製作所 - NTCサーミスタ」
関連
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「正確な温度を求めて (1)」
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「熱放散定数と自己加熱」
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「B定数の近似式の作り方」
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放射温度計
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「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
に参考になるさいとへのリンクがあります。
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「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
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