水の電解に必要な電圧が1.23Vであることを検証する (1)
前回の記事「水の電気分解 - セスキ炭酸ソーダ/炭素電極 低電圧編」 に書いたように
もし水に電解な必要な最低の電圧が存在するのであれば電圧を徐々に下げて行けばある電圧で電流が流れなくなるはず
ということで実験したのですが、かなりヘンな結果になりました。実験手順に問題があるのか確認するためにもう一度ほぼ同じ条件で再度実験してみました。
(電解液はテトラトリタ炭酸ナトリウム水溶液で前回のものをそのまま使っています。電極は両方とも炭素(シャープペンシルの芯)でこれも同じものです)
青い線が電圧で約1.6Vからほぼ0Vまで5時間ほどかけて下げて行きます。赤い線は電流ですが、やっぱり途中で枝分かれしてしまいます。
今回は動きがよくわかるように電圧・電流のグラフは点ではなく線でプロットしてみました。
1.04Vあたりで電流がはげしく変動し始めます。ただランダムに変化するのではなく特定の二つの電圧の間をいったり来たりしています。上側の線と下側の線を比べると上側の方が濃いので1.04Vになると突然電流が増え、たまに低電流になる状態が続くと見たほうがいいようです。
1.04Vになると電圧・電流の関係に変化が起きるわけですから、この電圧でなんらかの現象が起きているのは確かでしょう。例えば電気分解が止まるとか...
もっともこの電圧は前回の結果1.3Vとは違っています。
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これではなんだかよくわからないので実験方法を変えてみます。
これまではこんな測定方法です。
Rxのところに“電気分解装置”を接続します。Vの電圧を変化させRxに流れる電流を測定しています。
これを次のように変えます。
Vの電圧を変化させることにより電気分解装置に流れる電流が変化させます。そしてその電圧降下を測定します。
電流を20μAから0μAまで9時間かけて変化させて電圧の変化を見たもの。この電流範囲は水の電解電圧とされる1.23V近辺を細かく見るためです。
電流が固定して測っているので電圧を固定したときのような変動は発生しません。
電流がゼロ(正確には14nA)になっても電圧が残っていて次第に低くなっていますが、これは電池(濃淡電池?)ができあがってしまったためでしょう。
これを電圧電流のグラフにします。本来は電流vs電圧のグラフにすべきですが、それではわかりにくいので電圧vs電流のグラフにします。
特に(電解電圧に相当しそうな)特異点らしきものは見当たりません。
ちょっと拡大してみます。
これも特に目立つ点はないのですが、しいて言えば1.25Vあたりまでは電圧の変動が見られるのですが、1.25V以下ではそれがほとんどなくなることでしょうか。
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できるだけ定常状態を維持するように徐々に電圧・電流を変化させているのですが、もう少し早く(と言っても100倍くらい早く)電流を変化させてみました。これは酸素過電圧+水素過電圧の測定も兼ねています。
こちらは電流がほぼゼロになったときの電圧は1V強です。これも電圧・電流のグラフを作ってみます。
電流がほぼゼロになったとき1.2V弱のようです。水の電解に必要とされる電圧に近いのですが、電流の変化率によって到達する電圧が違うだけかも。
上のほうで電圧の変動の有無を書いたのですが、このグラフではその境は2.4Vくらいになっています。
結局よくわからないのは同じですが、この電流変化率をいろいろ変えて電流ゼロになったときの電圧は測ってみたいです。
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参考
渡辺正・金村聖志・増田秀樹・渡辺正義 「基礎化学コース 電気化学」 丸善、2001
「【ナレッジ】酸素化電圧について教えてください」
「鈴木智恵子・居林尚子 - 水の電気分解における電極と電解質の関係についての再検討」
「谷川直也・森勇樹 - 水の電気分解の実験条件に関する再提案」
「田中貴金属 産業用製品 - 様々な場面で使用される不溶性電極」
日本化学会編 「教育現場からの化学Q&A」 丸善、2002
「化学のはてな? - 221 純水の電気分解」
「加熱による水の電気分解装置の工夫」
「CiNii - 純水の電気分解実験(私の工夫)」
「哲猫 - 電気分解に於ける電極の溶出 (マイクロスケールケミストリー)」
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