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2016年4月 7日 (木)

電気分解に使う電極の選び方

受験勉強用だったら、こういうのはきちんとわかりやすくまとめられている方がいらっしゃいます。いろいろあるのですが、例えば

  Chembase - 電気分解

があります(もうひとつわかりやすいものがあったような気がするのですが見つけられなくて...)

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この記事は“趣味の化学実験用”です。理屈じゃ(教科書じゃ)上のリンク先みたいなことらしいですが、教科書の知識だけで実際にやってみるとあんまりうまく行かないことがあり、ある程度“実用性“を考えています。

教科書に書いてあるようにはうまくいかない例としては次のようなのがあるようです。

  1. 水を電気分解したけれど酸素と水素の体積比が1対2にならない。

  2. 食塩水を電気分解したら陽極から出る気体に酸素が混じっている。
   (これは実験がうまくいかないというより、酸素が混じってあたりまえみたいです)


最近思うのですが、(電気)化学の記事というのは天文や電子工作のような趣味の目的ではなく学習用途(?)みたいです。だからそれが正しいか(実際に起きる現象か)ということより教科書と合っているかということの方が重視されるみたいです。

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以下(内容に実験などによる裏付けがあると思われる)ネット情報や書籍から引用したものですが、なかには上の1.や2.のようなものが混じっているかもしれません。だから鵜呑みにはしないでください。

なお1.は水素は出てくるが酸素が思うように発生しないというのが多いようですが、私は純水の電解で酸素は出てくるのに水素がぜんぜん発生していないように見えるというのを経験したことがあります。

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テトラトリタ炭酸ナトリウム水溶液の電解
(問題なさそうな例、過電圧も低めです)

よく見ると酸素の“出”が少ないような気がしないでもありません。捕集して容積を測ってみないとなんとも言えませんが...

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【陽極

白金類、炭素以外だと多かれ少なかれ溶出が起きるような気がしますし、下の方にある写真のように実際それらしい現象を何度か見ました。陽極の溶出については実際に実験して溶出していることを確認した例が

  「哲猫 - 電気分解における電極の溶出

にいくつかあります。
下記に“使える”とあるのは実用的には__つまり酸素と水素がだいたい1対2で出てくるというような意味では__問題ないと受け取ってください。

白金

基本的にはこれがあれば何も要らないように思えますがなかなかに高価です。塩素イオンの含まれた電解液だと酸化してしまうようなので注意が必要です。
それと酸素過電圧がとても高いです。“水電解の場合、白金はすぐれた陰極材料でも、陽極材料としては最悪の部類に入る”と書いたものもありました(※1)
ナリカ - 理科.com の扱っているものを見ていたら(白金電極はムリですが)白金線が買えない値段でもなかったので秋葉原に行ったついでに買って来ようと思ったのですが取り寄せになるということでまだお預けになっています。

白金めっきしたチタン

これは白金と同じように思えるのですがちょっと違うようです。ナリカ - 理科.com (個人向けは「科学のお店:サイボックス」)にある「電解装置用電極KN型 白金めっきチタン電極」には何も説明がないのですが、これを使っていると思われる「簡易版電解装置(ゴム栓式) S-PG」 の商品説明を見ると電解の対象となる電解液が「水酸化ナトリウム水溶液、塩酸、塩化ナトリウム水溶液」 となっていました。単なる白金とは性質が違ってくるのかもしれません。これがほんとうならこれでたいていのものは済みそうです。お値段も白金電極ほどではありません。おそらく二つ一組だと思うので(床に落としたら見つけられなさそうな)細くて短い白金線二本より安いです。

なおターナープロセスのオンラインショップにはナリカ - 理科.com (個人向けは「科学のお店:サイボックス」)よりもう少し安いものがあります。同じもののようにも見えるのですが、こちらは「酸・アルカリ、いずれの電解液中で使用しても劣化しにくくなっています」 とあります。注意書きとして「長時間の連続使用はおやめください。性能が劣化する場合があります。」 というのがあります。熱に弱いということなんでしょうか。問い合わせてみればいいことですが。

  買ってみました。
   白金チタン電極 - 入手法とか価格とか

IrO2、RuO2(でチタンをコーティングしたもの)

これはちょっと趣味で使えるようなものではないと思われますが陽極としては最強らしいので書いておきます。酸素過電圧が小さく、塩素イオンも平気らしいです(※2)

またこういうのや上の白金めっきチタンは工業的によく使われていると書いたものもありました(※4)

炭素

鉛筆の芯とかまあ身近にあるものですし、昔は工業的にもよく使われたようなので使いたくなります。塩素(食塩水)もだいじょうぶみたいですが、水の電解用だとあんまりよくないようです。壊れるとか酸素の発生量が少なくなるとかいろいろあるみたいです。
O2で炭素が酸化して二酸化炭素が発生するから、と書いてあるものもあるのですが、そんな単純な話でもないようです。

ただ炭酸水素ナトリウム水溶液を使った水の電解だと特に問題はないようです(※3)
弱アルカリだといいということだとテトラトリタ炭酸ナトリウム(セスキ炭酸ソーダ)水溶液でも使えるかもしれません。これは近いうちに実際にやってみる予定です。
塩化銅水溶液の電解実験に使われるので塩の水溶液の電解ならいいのかとも思うのですが硫酸ナトリウムではうまく行かないようです(※3)

鉄・ステンレス

アルカリ性水溶液を使った水の電解であれば問題なく使えるようです。酸だったらとうぜん溶けてしまうでしょう(水の電気分解のポイント - 電極・電解液の入手法付き
純水の電解を鉄でやったら(陽極が)溶出しているように見えますし、また(陰極で)水素がほとんど発生していないように見えるのでこういう場合はあんまりいい材料じゃなさそうです。
電解液中に溶出させるのが目的だったらもちろん問題ないですが...



電気めっきの実験以外ではみかけませんが、どうなんでしょう?
たいした手間ではないのでこれは実際にやってみたいと思います。

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【陰極】

白金

陰極であれば何に使っても問題ないようです。
酸素過電圧が大きい白金ですが、水素過電圧はとても小さいです。

白金コーティングしたチタン

これも上に書いたように「水酸化ナトリウム水溶液、塩酸、塩化ナトリウム水溶液」に使えるとありました。
電解(の仕組み)自体に興味があるということではなく、水素や酸素の生成(の観察)が目的ということであれば白金よりこちらの方がいいのかも...

IrO2、RuO2(でチタンをコーティングしたもの)

これは陰極に使うと還元されてただのIr、Ruになってしまうようです(※2)
つまり陰極に使ってはいけない電極です。

炭素

陰極だと特に問題なさそうです。
水酸化ナトリウム水溶液、希硫酸、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウムで使えています(※3)

鉄・ステンレス

少なくともアルカリ電解液では問題なさそうです。

純水の場合は上に書いたように水素の発生量が少なかったです(これは陽極にも鉄を使ったことと関係しているかも)
Imgp16141000
陽極からは酸素が出ているようですが、上のテトラトリタ炭酸ナトリウムを電解したときとは気泡の出方が違っているのも不思議です。



これは問題なさそうに思えますが、使ったという例を見つけられませんでした。
これも手間はかからないのでやってみたいと思います。

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参考

  ※1 渡辺正・金村聖志・増田秀樹・渡辺正義 「基礎化学コース 電気化学」 丸善、2001

  ※2 「【ナレッジ】酸素化電圧について教えてください

  ※3 「
鈴木智恵子・居林尚子 - 水の電気分解における電極と電解質の関係についての再検討
     谷川直也・森勇樹 - 水の電気分解の実験条件に関する再提案

  ※4 「田中貴金属 産業用製品 - 様々な場面で使用される不溶性電極

  日本化学会編 「教育現場からの化学Q&A」 丸善、2002
  「
化学のはてな? - 221 純水の電気分解
  「
加熱による水の電気分解装置の工夫
  「
CiNii - 純水の電気分解実験(私の工夫)
  「
哲猫 - 電気分解に於ける電極の溶出 (マイクロスケールケミストリー)


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