フラウンホーファー線の画像が画期的に改善! - 太陽光のスペクトル
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なぜ突然こんなに色解像度が上がったかというと....
前記事「半導体レーザー(レーザーポインター)のスペクトル」にTT@北海道(@edy555)さんからこんなコメントをいただきました。
いつも興味深く実験を拝見しています。輝線が重複するのは、DVDの厚さによる多重反射ではないでしょうか。格子がポリカーボネートの裏側にあることが原因かと想像しています。もし勘違いがあればごめんなさい。
保護用のプラスチックがどう影響しているかはよくわかりませんが確かに今使っている回折格子にはあやしいところがあります。撮影するときピントをはずすとヘンなシマシマが見えたりします。
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そこでいろいろやってみました。
DVDの置き方を逆にする(外周を下にするか上にするか)
保護用のプラスチックをはがす
多少見え方(撮影結果)が変化はするのですが、大きく改善したというほどではありませんでした。
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ところで今までDVD-ROMを切って作っていました。皆さんの製作記事を拝見するとDVD-Rを使うケースが多いようです。そこで私もDVD-Rを使ってみることにしました。
DVD-RはDVD-ROMと比較するとなんというか頼りない感じです。切っているうちに変形したりニュートンリングみたいなのが見えたりします。こんなんでだいじょうぶかと思ったのですがとにかく切り取って太陽光(実際は雲)のスペクトルを撮ってみたら上の画像のような見事な結果が得られました。
DVD-ROMじゃなくてDVD-Rを使うというのは常識なんでしょうか?
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いつものようにRGB値の分光分布と画像を比較し、さらにWikipediaのフラウンホーファー線の波長のデータと比較してみました。今回はさらに「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~」にある16 Cyg Bのスペクトル写真とも比較しました。16 Cyg Bのスペクトル型はG3Vで太陽のG2Vと似ているだろうと思ったからです。
主要な暗線はもちろん写っています。ただc線とa線ははっきりしません。
「フラウンホーファー線 - DVD簡易分光器による太陽光のスペクトル」でF線とb線の間に暗線があるがWikipediaのデータとは違うところにあると書いたのですが、今回もそれは同じです。ただF線とc線の間にある暗線が何かはわかりました。16 Cyg B の分光写真を見て気づいたのですが492.4nmのFeⅡの吸収線のようです。
16 Cyg B の写真を見てもc線は確かに強い吸収線なのですがシャープなので色解像度があまり高くない私の画像ではわからないのかもしれません。一方492.4nmの吸収線はブロードなようでそのため色解像度の高くなくてもはっきり見えるのかもしれません。
それから(気のせいレベルですが)大気中の水蒸気による吸収も見えているようです。
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画像の処理(数値化)をもう少しうまくやれればもっとフラウンホーファー線の状態を正確につかめそうです。
===> 「太陽光のスペクトルと主要なフラウンホーファー線」
c線もa線もちゃんと見つかりました。
以前、画像の数値化はIRAFでやれるのではないか、と書いたのですが、そのときはIRAFの目的から考えてそのくらいのことはできるはずだと思っただけなのですが「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~」を見ると実際IRAFを使って数値化しているようです。
そろそろLinuxのVMを作ろうかと考えている今日このごろです。
===> けっきょくマカリを使わせていただきました。
「スペクトル画像(分光写真)を数値化(グラフ化)する方法」
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いつも興味深く拝見させていただいております。簡易分光器と言われておりますが、観測結果の精度を考えると、むしろ本格的な分光器と言っても良いのではないでしょうか。
本当の簡易型はいろいろなところで紹介されていますが、次の段階を求める皆様に広く知らしめることができればとても有用ではないかと思います。
今後とも更なるご投稿をよろしくお願い致します。
投稿: 星々想々 | 2016年5月25日 (水) 20時40分
レンズを使っている時点でこれは簡易分光器じゃないんじゃなかろうか、という自覚はあります (^^;;
分光器、分光写真は前から興味はあったのですが、写真を撮るだけじゃおもしろくないわけであんまり優先度は高くありませんでした。
でも星々想々さんの「光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)」 を拝見してがぜんやる気が起きてしまいました。
理屈じゃあと一桁色解像度をあげられるはずなのでとことんやってみたいと思っています。
投稿: セッピーナ | 2016年5月25日 (水) 21時46分