デジカメの分光感度特性補正の試み - スペクトル画像のグラフ化
残念ながらこの記事に書いたような単純な方法で感度特性を補正するというのはムリみたいです。
「デジカメ分光感度特性の謎」
==> こういう方法がいいようです。
「デジカメの分光感度特性はRAWデータを調べればわかる?」
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この補正の話の前にスペクトル画像(分光写真)をどうやってグラフ化(数値化)するかという問題があるのですが、まだ書けていません。
===> 「スペクトル画像(分光写真)を数値化(グラフ化)する方法」
いちばんお手軽なのはImageJでしょうか。画像上に適当に線をひいてAnalyze=>Plot Profileでグラフ(+数値)を得ることができます。
IRAFみたいな天体の画像分析アプリでもできると思うのですが今IRAFを動かせる環境を作ってないのでどうだかわかりません。
==> その後調べたら
「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~」
はIRAFを使って画像から分光分布を作っているそうです。
プログラムが書ける方はJPEGなりBMPを読んで必要なデータを取り出せばいいのですが、プログラムを書けなくても方法はあります。私はGIMPで必要な領域を取り出してBMPにし、これをテキストファイルに変換したあと、Excelで読み込めるように秀丸で加工するという方法をとっています。いちいちやるとけっこう手間ですが、バッチやマクロでかなり“合理化”できます。以下ご参考まで。
「うめっきぃ - Bitmapファイルフォーマト」
「Eiji James Yoshidaの記録
- Windowsでファイルを16進数テキストに変換したり、16進数テキストをファイルに変換したりする方法」
「IT忘備録・メモ書きと日記 - 秀丸 決められた文字数で改行する。」
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白熱灯のスペクトルを撮った画像を数値化したら次のようなグラフになりました。
これでどういう波長の光が出ているかはわかるのですが、どの波長が強いのかと言ったことはこのままでは正確にはわかりません。カメラの分光感度特性がわからないからです。
白熱灯の場合はある程度波長に対する光の強さがわかるのでそれをもとにデジカメの分光感度特性を調べられ、それから補正ができるのではないかということを「デジカメの分光感度特性と白熱電球のスペクトル」に書きました。
今回はそれを実際にやってみました。ただ仮定に仮定を重ねた上でのものです。だから”試み”というタイトルになっています。同じことをやっても条件が違えば異なった結果が得られます。そういうのをどうまとめていくかが今後の課題です。
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次の仮定をします。
1. 白熱灯のスペクトルは2500Kの黒体輻射に相当する。
2. デジカメのRGB値は光の強さの対数に比例する。
3. RGB値はEV値が1上がると36増加する。
1.はだいたいそうなりそうです。あくまで“だいたい”です。
2.と3.は特定の条件でそうなることは確かめています。常にこれが成り立つわけはないのですが、以下そうだとしたらという話です。いろいろ言い出すとそもそも上のグラフからしてちょっと怪しいところ(光源が離れているためのムラ)もあります。
上のグラフに黒体輻射のスペクトルを追加します。
それぞれのセンサーのRGB値と黒体輻射の値の差を求めます。各色(センサー)の値が交差するあたりで分割します。
任意の光源のスペクトル画像からこのグラフにある値を引けばその光源の分光特性がわかるはずです。それにはこえを簡単かつ正確に近似する必要があります。
近似式を作るために試行錯誤中のところ
青、緑は二次関数でもまあまあの近似になるのですが、赤は手強くてけっきょく5分割してしまいました。
近似式の継ぎ目では値はだいたい一致するようにしてあるのですが、微係数までは一致していません。こういうのはスプラインの方がいいかもしれません。
近似式ができたので最初のスペクトルに適用してみました。
575nmあたりが乱れています。この理由は上の“差”のグラフをみればわかります。緑が二次関数では完全に近似できないのです。
さらに領域を分割するのは面倒なのでここだけ特別に手当し、結果はこうなりました。
まあまあの結果です。これが正しい結果というわけではありませんが、デジカメの分光特性をもっと詳しく調べればある程度意味の結果が得られるような気はしています。
ちなみに現状の補正式
=IF(G185>T$3,IF(G185<U$3,(U$4*G185+U$5)*G185+U$6+H185,IF(G185<V$3,(V$4*G185+V$5)*G185+V$6+I185,IF(G185<W$3,(W$4*G185+W$5)*G185+W$6+J185,IF(G185<X$3,(X$4*G185+X$5)*G185+X$6+J185,IF(G185<Y$3,(Y$4*G185+Y$5)*G185+Y$6+J185,IF(G185<Z$3,(Z$4*G185+Z$5)*G185+Z$6+J185,IF(G185<AA$3,(AA$4*G185+AA$5)*G185+AA$6+J185))))))))-IF(AND(G185>W$10,G185<Y$10),IF(G185<X$10,(G185-W$10)/X$11*X$12,(G185-Y$10)/Y$11*Y$12))
G185が波長、H185~J185がRGB値、それ以外はしきい値や二次関数の係数です。
いちばん簡単な補正式のはずなんですが...
前の記事 「デジカメの分光感度特性と白熱電球のスペクトル」
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まとめ記事 「光源別スペクトル(分光分布)一覧表 - DVD簡易分光器による」
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参考
「国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件」
「Welcome to my homepage. - DVD分光器」
「星は空の彼方、月よりも遠く
- 光害除去フィルター(3)透過特性の観察(2016/03/05)
- 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)」
「廊下のむし探検 - 手作り分光器」 (記事一覧)
「ブログ「廊下のむし探検」付録 - 手作り分光器の作り方」
「Web Page of T.Nomoto - スペクトル色々」 (「ネオンランプと水銀ランプ」)
「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~」
「原子スペクトルの観察と波長の測定 - リュードベリ定数の測定及び原子のエネルギー準位」
「資源エネルギー庁 - 太陽エネルギーの基礎知識」
「岩崎電気 - ランプ光源情報」
「ライトエッジ - 放電ランプ - メタルハライドランプ」
国立天文台編 「理科年表 第88冊」 丸善出版、2014
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